ブラックロック、1500億ドル規模の米国債投信のトークン化を検討──SECに申請書類を提出
  • ブラックロックは、BNYメロンを通じてブロックチェーン技術を活用し、1500億ドル規模のトレジャリー・トラスト・ファンドにデジタル株式クラスを導入する。
  • 新たな株式はブロックチェーンを利用して株式所有権の記録を反映するもので、デジタル資産のより広範な採用につながる可能性がある。
  • ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、トークン化の可能性を強調し、アメリカが債務管理に失敗した場合、金融優位性を失う可能性があると警告した。

ブラックロック(BlackRock)は、同社が運用する最大級のファンドの一つである1500億ドル(約21兆円、1ドル=140円換算)規模のトレジャリー・トラスト・マネーマーケットファンド(MMF)のバックオフィスにブロックチェーンを導入する準備を進めており、BNYメロン(BNY Mellon)を通じて同ファンドのデジタル株式クラスを発行する申請を提出した

新たな「DLTシェアーズ(DLT Shares)」(DLT:分散型台帳技術)は暗号資産(仮想通貨)を保有しないが、同ファンドの独占販売代理店であるBNYメロンは、ブロックチェーン技術を用いて株式所有権記録をミラーリングする計画だ。これはトークン化された現金や暗号資産、または伝統的な金融におけるブロックチェーンベースの決済インフラの広範な採用を可能にする段階的な一歩となる可能性がある。

過去数年間、現実世界資産(RWA)のブロックチェーンベースの表現を作成する実験を行う企業が増加し、伝統的な金融業界を急速に暗号資産と分散型金融(DeFi)の領域へと導いてきた。4月30日の早い段階で、リブレ(Libre)はテレグラムのメッセージングプラットフォームの24億ドル(約3360億円)の債務のうち5億ドル(約700億円)をトークン化し、TONブロックチェーンに上場すると発表した。

ブラックロックの「リクイディティ・トレジャリー・トラスト・ファンド」は、同社のリクイディティ・ファンド・スイートの一環であり、4月29日時点で1500億ドルを超える資産を管理している。DLT株式クラスは機関投資家向けに300万ドル(約4億2000万円)の最低投資要件を設定しており、追加購入には最低要件はない。なお、この申請は予備段階のものであり、アメリカ証券取引委員会(SEC)の承認が必要だ。

この動きはブラックロックのトークン化への初めての取り組みではない。同社はセキュリタイズ(Securitize)と提携して設立したブロックチェーンネイティブのBUIDLファンドを運営しており、現在17億ドル(約2380億円)を超える資産を管理し、最近ソラナ(Solana)ブロックチェーンにも拡大した。

ラリー・フィンク(Larry Fink)CEOは、トークン化とDeFiの長期的な可能性を繰り返し強調してきた。2025年の株主宛て年次書簡で、フィンク氏はアメリカが債務をコントロールできなければ金融優位性を失うリスクがあると警告し、その脆弱性がビットコイン(BTC)のような代替資産への投資家の関心を加速させると指摘した。

「アメリカが債務をコントロールできなければ…アメリカはビットコインのような暗号資産に準備通貨の地位を奪われるリスクがある」とフィンクは記している。

「DeFiは驚くべきイノベーションだ。市場を迅速化し、コストを削減し、透明性を高める。しかし、その同じイノベーションがアメリカの経済的優位性を損なう可能性もある」

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:BlackRock Looking to Tokenize Shares of Its $150B Treasury Trust Fund, SEC Filing Shows