
- 米シティとスイスのSDXは、機関投資家と適格投資家に、IPO前の未公開株式をトークン化して提供する。
- 2025年第3四半期にスタート予定で、シティはSDXのカストディアンとしての機能も担う。
米銀大手シティと、スイス証券取引所のデジタル資産部門SIX Digital Exchange(SDX)は未公開株式のトークン化に向けて提携。まだPDFや紙の書類が使われている750億ドル(約10兆8800億円、1ドル145円換算)規模の市場を効率化していくと5月6日に発表した。
シティは、SDXのブロックチェーンベースのCentral Securities Depository (CSD:中央証券保管機関)上で、レイトステージ/IPO(新規株式公開)前の未公開株式トークン化におけるカストディアンおよび発行者として機能するという。
未公開株式トークン化は、2025年第3四半期に稼働予定、米国投資家は対象外となるが、スイス、シンガポール、アジアを当面の重点地域としてグローバルに展開していく。
高成長で、VCが支援する未公開株式は、数兆ドル規模のオルタナティブ資産の中でも、大きな魅力を持っている。
企業評価額が10億ドルを超える、いわゆるユニコーン企業の多くは、市場環境に影響でIPOの延期を余儀なくされている。そのため、投資家や従業員に流動性を得る手段として、こうした企業ではセカンダリー市場への関心が高まっている。しかし、こうした市場はアクセスが難しく、取引自体も手作業ベースで煩雑になっている。
「未公開市場の最も顕著な特徴は、インフラが整っていないこと、少なくとも、スケーラブルなインフラは存在しない」とCiti Venturesのデジタル・アセット・エマージング・ソリューション責任者、ニシャ・スレンドラン(Nisha Surendran)氏は述べた。
投資家は膨大なPDFや紙の書類を処理する必要があり、取引の決済には5〜8週間を要する。さらにポジションを売却する際にも同様のプロセスが必要になるという。
「また、上場株式とは違って、投資家の資産報告書に反映されない点でも問題がある。PDFや紙の書類、あるいはプラットフォームに閉じ込められたままになっている」とスレンドラン氏は述べた。
近年、多くの伝統的金融機関がRWA(現実資産)のトークン化に注目するなか、初期段階では、ブロックチェーンを活用した未公開市場の可能性に高い関心が寄せられたが、実用化されたものはかなり限定的だった。
ブロックチェーンを古いプロセスを効率化し、未公開市場へのアクセスや流通を向上させる手段と考えた多くのWeb3プロジェクトは、規制上のハードルに直面したとSDXのCEO、デビッド・ニューンス(David Newns)氏は述べた。
「スイスでは2021年からこの分野に取り組んでおり、デジタル証券の規制環境は非常に成熟している。他国ではそうではない。技術的にはあらゆる課題を解決できそうに思えたかもしれないが、ディストリビューション、保管、そして法的な裏付けなどの問題が実際には解決されなかった」
SDXのブロックチェーンベースの証券保管機関は、R3の分散型台帳技術「Corda」をベースに構築されており、スイスの法的枠組みを通じて、投資家はブローカーやカストディアン経由でアクセスできるという。
「つまり、通常の証券と同じように、銀行口座で扱うことができる。特別な手続きは不要だ」
今回の取り組みでは、シティはSDXのカストディアンにもなっている。これは同行がトークン化未公開株式をはじめとする新たなデジタル資産市場へのアクセスをグローバルに提供していく戦略を反映していると、シティのデジタル資産・投資家サービス・発行者サービス部門グローバル責任者、ナディーン・テイシェンヌ(Nadine Teychenne)氏は述べた。
「これは、シティの複数の事業部門が連携するプロジェクトの一部」とテイシェンヌ氏は述べた。
リリースによると、ヨーロッパの顧客にはデジタル資産銀行グループのSygnum(シグナム)が、アジアの顧客にはシンガポールを拠点とするSBI Digital Marketsが取り扱いを行うという。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:CoinDesk archives
|原文:Citi, Switzerland’s SDX Join Forces to Tokenize $75B Pre-IPO Shares Market