
イーサリアム・ブロックチェーンは先日、この1年以上で最も重要なアップグレードを完了したばかりだが、その節目は苦境の末でのことだった。ネイティブ暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の価格は下落し、開発者は競合ブロックチェーンへ移行、そしてイーサリアム財団(Ethereum Foundation)は、リーダーシップとビジョンの欠如を指摘する批判にさらされている。
だが、「Consensus 2025」に登壇したEY(アーンスト・アンド・ヤング)のグローバル・ブロックチェーンリーダーで、エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス(Enterprise Ethereum Alliance)の会長を務めるポール・ブロディ(Paul Brody)氏とイーサリアム財団のジョシュ・スターク(Josh Stark)氏は、より楽観的な見通しを示した。
スターク氏は、2つのことをエコシステムは求めていると述べた。
1つ目は、リーダーシップ。
「エコシステムは強力なリーダーシップを求めている。ロードマップの策定と実行、そして大きな課題に取り組むためのエコシステムの調整における強力なリーダーシップだ」
2つ目は、優れたメッセージング。
「イーサリアムのファンダメンタルズは極めて強い。だが、そのことを声を上げて語り、構築されている素晴らしい成果を後押ししている人はほとんどいない」
ブロディ氏は、財団のリーダーシップに対する懸念は、誇張され過ぎていると述べ、2018年から先日まで財団のエグゼクティブ・ディレクターを務めていた宮口あや氏の功績を高く評価した。
「イーサリアムはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーンとして、120を超えるレイヤー2(L2)ネットワークが存在」し、ネットワークの処理能力は「1日あたり3億〜4億5000万トランザクション」に達しているとブロディ氏は紹介。さらに「L2の取引手数料は、直近3カ月で1件あたり1セント未満」と述べた。
「宮口氏の任期を結果から客観的に見れば、A+だ」
宮口氏は2025年3月、財団のプレジデントに就任し、新たにシャオウェイ・ワン(Hsiao-Wei Wang)氏とトマシュ・スタンチャク(Tomasz Stańczak)氏が共同エグゼクティブ・ディレクターとなった。これは、財団の戦略的フォーカスを強化するためのリーダーシップ再編の一環だ。
イーサリアムのロードマップには批判の声もある。L2ロールアップ(トランザクションを安価かつ高速に処理し、結果をイーサリアムのメインチェーンに引き渡す独立したブロックチェーン)に依存しすぎているというものだ。だがブロディ氏はロードマップを擁護し、「私は満足している」と述べた。
オプティミズム(Optimism)、アービトラム(Arbitrum)、米暗号資産取引所コインベース(Coinbase)のベース(Base)などのL2ネットワークは、ユーザーの手数料を引き下げてきた(手数料は、広範な普及を妨げる大きなハードルと考えられている)。だが一方で、新たなセキュリティ・リスクや分断という課題をもたらし、イーサリアムの本質的な価値提案を脅かしているとの声もある。
「イーサリアムは、イーサリアムであり続ける」とブロディ氏。
「問題を特定し、解決し、次の課題に進む。ここ数年で我々が直面していた最大の問題はスケーリングだった。1日100万トランザクションから、4億5000万件に達していることは、大きな成果だ」
スターク氏も「すべてのエコシステムは最終的に、モジュール化と専門化を備えたL2ロードマップ的なものに行き着く」と付け加えた。
「我々はその道を最も遠く進み、曲がり角や問題を見つけた。そして解決に取り組んでいる」
暗号資産イーサリアムは長らく暗号資産市場における「ブルーチップ(優良銘柄)」と見なされてきた。だがここ数カ月は、一部のライバルチェーンに比べてパフォーマンスが振るわない。トークンは、エコシステム全体の健全性を示す指標と見なされている。
スターク氏は、ビットコインが「価値の保存手段」としてのポジション確立に成功したことで、市場でイーサリアムよりも好まれていると指摘した。
「イーサリアムのストーリーは、より複雑だ」
だがスターク氏は、市場はいずれ、イーサリアムが持つ深い価値を反映するようになると確信している。
「世界はこの技術、このシステムについて学び続ける。世界は、少し複雑であっても、本物の価値提案を求めるようになる。今、まさにそれが始まりつつあると思う。だから市場はいずれ価値を正当に評価すると思う。イーサリアムは暗号資産で最も重要なプロジェクトであり、それはこれまでもずっと変わっていない」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:ポール・ブロディ氏とジョシュ・スターク氏(CoinDesk)
|原文:Ethereum Backers Respond to Critics: ‘Markets Will Catch Up’