
- ステーブルコイン「USDG」を手がけるコンソーシアム「Global Dollar」は、メンバー数に上限のない分散型組織を謳っている。
- メンバーはUSDG普及に貢献することで、準備金から生じる利回りの一部を受け取る。
- 米暗号資産取引所クラーケンは、グローバルな資金移動にUSDGを活用し、顧客に年4.1%の利回りを提供している。
ステーブルコイン「USDG」は2024年11月に誕生したばかりだが、その普及を担うコンソーシアム「Global Dollar」には約1000社が参加可能であり、準備金が生み出す利回りを受け取ることができると、同コンソーシアムの創設企業のひとつである米暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)のコンシューマー部門責任者マーク・グリーンバーグ(Mark Greenberg)氏は語った。
コンソーシアムには、取引プラットフォームのロビンフッド(Robinhood)、ステーブルコイン発行を手がけるパクソス(Paxos)、暗号資産投資会社ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)、アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)などが名を連ね、最近では、暗号資産ネイティブ企業を中心に19社が新たに参加。銀行や伝統的金融機関も参加しているという。
「現在、パートナー企業は25社以上だが、1カ月後にはさらに25社、また25社と増え、いずれ1000社となることを期待している。伝統的金融と暗号資産の双方からビッグネームが加わる予定で、非常に楽しみにしている。多くの銀行と話し合いを進めており、まもなく、いくつかが実現する見通した」
パクソスが発行を支える
現在、米ドル連動型ステーブルコイン市場は、時価総額1500億ドル(約21兆5000億円、1ドル143円換算)兆のテザー(Tether)社のUSDTが圧倒的No.1で、サークル(Circle)社のUSDCが約600億ドルでそれに続く。USDGは時価総額わずか2億7600万ドルで、CoinGeckoのステーブルコインランキングでは24位、暗号資産全体で見れば、200位以下に過ぎない。
USDGを基盤として支えているのは、ニューヨーク州認可のステーブルコイン事業者であるパクソスだ。同社はかつて、暗号資産取引所バイナンス(Binance)と提携して、USDCやUSDTに対抗するステーブルコインを発行していたが、規制上の理由から提携を解消した。
グリーンバーグ氏は、Global Dollarは「真のコンソーシアム型プロジェクト」であり、パクソスはディストリビューション・パートナーと述べた。だが、一部の特別な管理業務を担っているという。
「我々は、USDGを中心に分散型コミュニティを構築しており、利回りはすべて参加者に還元される。不動産会社に例えるなら、パクソスは管理会社にあたり、ライセンス管理、準備金の適正な管理、USDGの発行を担っている。だが、Global Dollarネットワークを成功させるために、全パートナーが等しく責任を負っている」
利回り提供でUSDT、USDCに挑戦
同コンソーシアムの成長をけん引しているのは、「利回りの提供」だ。企業の参加を促すと同時に、ステーブルコインを既存の広範な金融システムの一部として再定義する動きにもつながっている。USDGはこの戦略で、USDTとUSDCに挑む。
「私は、中央集権よりも分散型を信じている。価値をユーザーに還元すべきだと考えており、USDGはそれを実現している。テザーやサークルでは不可能だ。テザーとサークルは莫大な収益を上げている。銀行もユーザーの預金を運用しているが、見返りはわずかだ。ステーブルコインはそれではいけない」
クラーケンは、資金を世界中に移動させることに当然、USDGを活用しており、ビジネス・イノベーション的に言えば、自社製品を自社で活用している。
「我々はUSDGを世界中で使っている。従来の銀行送金では、4、5日かかり、途中の銀行で滞ることもある。だが、急速に変わりつつある。ビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)なども関心を示しており、ステーブルコインはより大きな役割を担い始めている」
また、クラーケンの顧客は、資金をUSDGに変えることで、世界中どこでも米ドル建てで最大4.1%の利回りを得ることができるという。
「米国にいれば、他の手段もあり、それほど魅力的ではないかもしれない。だが、アルゼンチンやカナダのように、米ドル口座を持つことが難しく、4.1%の利回りなど考えられないような国では、非常に魅力的なチャンスになる」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Global Dollarの参加企業(同コンソーシアムのウェブサイトより)
|原文:Global Dollar’s USDG Eyes Hundreds of Partners Attracted by Yield, Sees ‘Big Names’ From TradFi