
ビットコイン(BTC)が現実の商品と初めて交換され、決済手段としての可能性を示した「Bitcoin Pizza Day」が、5月22日に15周年を迎えた。この記念日は2010年、米フロリダ州のプログラマー、ラズロ・ハニエツ(Laszlo Hanyecz)氏が1万BTCでピザ2枚を購入したことに由来する。
当時のピザ2枚の価格は約41ドル(約6000円、1ドル=143円換算)だったという。それが15年後の現在(5月23日)、1万BTCは11億ドルを超え、およそ2700万倍もの価格上昇を記録したことになる。改めて、BTCの成長ぶりを実感させられる。Bitcoin Pizza Dayが価値交換の可能性を示したことで、後のDeFi(分散型金融)やNFT、スマートコントラクトなどブロックチェーン技術のその後の発展を拓いたとも言われており、今では歴史的なターニングポイントとして知られている。
この日は都内でもさまざまなイベントが開かれたが、BTCのサイドチェーン「Rootstock」を基盤にDeFiの普及に取り組むRootstock Japanは渋谷で、「Pizza Day – BTCfi Summit」を開催。折しも当日はBTCが過去最高値を更新したこともあり、保有者など約70人が集まった会場は熱気に包まれていた。
この日は、TradFi(伝統的金融)やDeFi領域でのBTC活用をテーマにしたパネルディスカッションも行われ、Rootstock Japanリーダーの森木氏、暗号資産取引所を運営するビットポイントジャパン経営企画部副部長の海老澤侑昌氏、Web3コンサルティング事業を展開するDeFimans取締役COO・CFOの坂上謙太氏が登壇。昨今のトレンドである企業によるBTC購入の是非やユースケースの拡張についても議論が交わされた。

企業によるビットコイン購入の是非
近年、マイクロストラテジーやメタプラネットといった企業によるBTC購入が世界的に注目を集めている。国内でもリミックスポイントやゲーム企業gumiなどが購入を進めており、企業の保有が拡大している。
海老澤氏は、BTCを保有することで株価が上がることが現実に起きており「数年前には考えられなかった」と指摘。企業のトップにとっては株価をどう上げるかが至上命題のため、BTC購入を検討する企業は今後も増えていくだろうと見通した。

一方で坂上氏は、企業の形態によってスタンスは異なると指摘。上場企業は規制やガバナンスの観点から大規模なBTC取得には慎重にならざるを得ず、大規模の拡大が短期的に起きるとは考えにくいと述べた。
また事業会社などは本来、本業へ投資すべきであり、株主もそれを望んでいると主張。ただ、余剰資金を持つ企業が暗号資産投資を行うのは合理的な戦略であり、例えばソニーのような大企業が有価証券の一部をBTCに替えるだけでも大きな影響を与えると説明。保有を公表することで、ニュース性やブランディングの面で企業にとってプラスに働く場合もあると述べた。
鍵を握るガチホ勢へのアプローチ
議論はさらに、BTCのユースケースが依然として限定的である現状とDeFiを通じた拡張の可能性にも及んだ。
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森木氏は、現在の保有者の多くが取引所に預けたままにするか、コールドウォレットなどで厳重に保管するという運用にとどまっており、日常的な活用には至っていないと指摘。こうした状況を打開し流動性を高めることで、保有されるだけの資産から脱却し、新たな価値を引き出す余地があると述べた。
海老澤氏も、ステーキングの組み合わせに大きな可能性を感じていると述べた。現状、一般的なステーキングサービスではBTCが対応していないが、バビロン(Babylon)のようなプロジェクトとの連携により、取引所として一般投資家にもBTCのステーキング機会を提供することを目指しているという。
さらに自身の体験として、2017年ごろに暗号資産に初めて触れた当時、「気絶投資法」と呼ばれるような価格変動を気にせず長期保有するスタイルがすでに広がっていたと回想。そのうえで、「ガチホ勢(ガチでホールドする)」に対し、ステーキングという新しい機会をどう提示できるかが課題であり、取引所としてもソリューションを提供していきたい考えを示した。
|文・写真:橋本祐樹