
- バンク・オブ・アメリカは、関税への懸念により今年9%下落した米ドルが、今夏さらに下落する可能性があるとの見通しを示した。
- ドル安は、ゴールド(金)やビットコインなどのドル建て資産に好影響を与える可能性がある。
- 貿易政策の不透明感と高水準の債務が米ドルの重しとなり続ける可能性があり、高頻度指標は経済減速の兆候を示している。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)は、今年すでに急落している米ドルが、この夏に厳しい状況に陥る可能性があると警告している。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税政策により、アメリカの資産からの資金流出が進んだ結果、主要通貨に対する米ドルの価値を示すドル指数(DXY)は、今年に入ってから9%近く下落し、99.74まで低下している。

バンク・オブ・アメリカは、夏にかけて経済データによる打撃が引き続き続くと予想している。米ドルの弱さは、ゴールド(金)やビットコインなどのドル建て資産にとってプラスであると広く考えられている。
アタナシオス・バムバキディス(Athanasios Vamvakidis)氏率いる同行のグローバルFXリサーチチームは、5月30日の顧客向けの報告書で、アメリカは他のどの国よりも他国との貿易が多いことから、関税はアメリカ経済にとってより有害だと述べた。
報告書は、アメリカ経済の最近の回復力や、トランプ大統領の減税や極端な財政支出の削減の断念など、成長を支える動きを認めたものの、「マイナス要因が優勢」だと述べている。
「さまざまな面で政策の不確実性が残っている。企業は、状況がさらに明確になるまで、採用や投資計画を一時停止する可能性がある。ほとんどのシナリオでは、関税は当初よりもはるかに高くなり、現在の水準は最低限のものになると予想される」と報告書は述べている。
また、債務水準が過去最高に達している中、財政政策の緩和は借入コストの上昇につながり、市場がマイナスに反応していると付け加えた。一方、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ期待の高まりから、大きな措置を講じることはできない状況にある。
「移民の流れは急減している。関税導入前の駆け込み需要で第1四半期に需要が増加したが、今後減少する可能性がある」とストラテジストは指摘し、ISM(供給管理協会)のデータやダラス連邦準備銀行の週間経済指標など高頻度指標の弱さを指摘した。
TradingViewによると、ダラス連銀の週間経済指数は、4月初めの急上昇後、下落傾向を再開し、12月以来の最低水準に達した。
「このような高頻度指標はノイズが多い傾向があるが、今後数カ月間の経済減速を示唆する可能性もある」とストラテジストたちは述べた。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:U.S Dollar to Slide Further This Summer, Bank of America Warns