【ST最前線】国内最大規模の約300億円、5つ星ホテル「W OSAKA」のセキュリティ・トークンに込めた狙いとは

「W OSAKA」は、世界最大級のホテルチェーンが運営する5つ星ホテル。ホテルブランド「W」としては、日本初進出であり、その斬新で、スタイリッシュなデザインは、大阪・心斎橋の賑わいと魅力を一層高めている。

ケネディクスはこの「W OSAKA」を裏付け資産とするセキュリティ・トークンを発行。大和証券は主幹事会社として販売をリードした。

国内最大規模の約300億円という大規模案件、かつ5つ星ホテルという稀有な案件に両社はどのように取り組んでいったのか。大和証券グローバル・インベストメント・バンキング本部兼法人本部 アセット・ソリューション部長の中川博人氏と、ケネディクス デジタル・セキュリタイゼーション部長の関 敏隆氏に聞いた。

〈W OSAKA:販売資料より〉

300億円のインパクトとハードル

──「W OSAKA」は、発行総額が約300億円となり、日本のセキュリティ・トークン市場において最大級の案件となった。この規模感は、顧客やマーケットにどのようなインパクトを与えたのか。

中川氏:個人投資家、なかでも富裕層の個人投資家は、これまでも数千万円〜数億円の投資アセットにはアクセスできたが、いわゆる機関投資家が投資対象とするような数百億円、数千億円規模のアセット、例えば、大規模かつ優良な不動産にはアクセスできなかった。

「W OSAKA」は、もともと国内外の機関投資家が関心を示しており、その中で個人投資家にそうしたアセットに対する投資機会を提供できたことは極めて意義深いと思っている。実際、個人投資家からの需要の積み上がりも当社の過去の案件と比べると非常に早かった。

──機関投資家が大きな関心を示すようなアセットを今回、敢えてセキュリティ・トークン化して、個人投資家に提供したことにはどんな意図があったのか。

関氏:ケネディクスは不動産のアセットマネージャーとして、多様な投資家から資金を預かり、不動産投資を行っている。当然、「W OSAKA」は、機関投資家向けファンドにすることもできたが、ケネディクスは、不動産セキュリティ・トークンをREIT(リート)、私募ファンドに次ぐ「第3の事業の柱」に掲げており、そのひとつの目玉商品として取り組んだ。

投資家の反応は我々からは見えないところもあるが、世界最大級のホテルチェーンが運営するホテルでもあり、安心感は大きかったと思う。

──発行総額が約300億円という大型案件になることで、商品設計やリスク管理などで従来とは異なるハードルなどはあったのか。

中川氏:証券会社の立場からすると、販売総額が非常に大きいので、案件の魅力を個人投資家に広く、わかりやすく伝えることが重要だった。今回は、事前に販売体制を整えて、セールス担当の研修も時間をかけて行った。

大型案件なので、最終的に購入していただくお客様の数は大きくなり、セールスを担当するチームも大規模になった。

──案件の規模が大きくなることで、投資家1人あたりの投資額も変化したのか。

中川氏:1人当たりの投資額は基本的にはそれほど変わっていないが、魅力を感じて投資していただいた投資家数が増えた。今回、「W OSAKA」を手がけてみて、投資家は単独では投資できない大規模案件を求めていることを改めて実感した。

〈客室 エクストリームWOWペントハウススイート、販売資料より〉

関氏:「W OSAKA」は、過去に不動産セキュリティ・トークンを購入したことがない、新規の投資家が相当数購入するだろうと考えた。そこで、一定数以上を購入された方にはユーティリティ・トークンとして宿泊券や大阪にゆかりの特典なども用意した。

中川氏:実際、「初めて不動産セキュリティ・トークンを購入した」というお客様が非常に多かった。「W OSAKA」という案件自体の魅力が幅広い人たちに認知された結果と考えている。

個人投資家にとっては、従来では難しかった大型案件への投資機会が実現した。また、これまで個人投資家の運用手段は株式や債券に限られるケースがほとんどだったが、今回は「オルタナティブ投資」を行う非常に良いエントリーの機会にもなった。

個人投資家には安全資産として債券に投資される方も多いが、世の中がインフレ時代を迎え、債券だけではポートフォリオのリスク管理が難しい状況になりつつある。インフレに耐え得る投資資産のひとつとして不動産があり、機関投資家にとってはすでに投資対象として確立しているが、個人投資家にとっては難しかった。その状況の中で、大型不動産への投資機会を提供できたことは非常に意味があると考えている。

高まる「オルタナティブ投資」への関心

──個人投資家の中にも、不動産に代表されるオルタナティブ投資を行う方が出てきた。この背景には、個人投資家の成熟度が上がってきていることがあるのか、それとも証券会社からの働きかけが大きいのか。

中川氏:運用環境が低金利時代からインフレ時代に変わってきたことが、投資家が不動産投資に注目するきっかけのひとつだろう。プロ投資家はすでにオルタナティブ投資のウエイトを高めている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、生命保険や損害保険などの金融機関、最近では大学法人も、従来の債券中心の運用からオルタナティブ投資の比率を高め、リスクマネジメントを行いながら、効率的な運用でリターンを高めようとしている。

関氏:年金や投資信託といった機関投資家の後ろには、個人投資家が存在しており、不動産をはじめとするオルタナティブ投資への個人投資家のニーズは高まっていると感じている。

ケネディクスは、2021年から不動産セキュリティ・トークンに取り組み、徐々に案件の規模を大きくしていった。今回、「W OSAKA」が個人投資家に支持された背景には、個人投資家の意識の変化や投資環境の変化、リターンに対するニーズなどが反映されているだろう。

当社は、不動産アセットマネジメント会社として、REITの上場実績もあり、不動産セキュリティ・トークンとしては過去最大級の規模になったが、個人投資家の需要は十分クリアできると考えていた。

中川氏:チャレンジングな案件だったが、利回り水準はもちろん、将来の成長への期待感、そして世界最大級のホテルチェーンが運営する国内でも数少ない5つ星ホテルでもあり、販売は順調に推移した。

──運営するホテルチェーンとの交渉で難しかったことは。

関氏:ホテルはブランドイメージを大切にしているので、まずは、セキュリティ・トークン化がブランド毀損には決してつながらないことを説明した。投資家向けの説明資料やWebサイトなども事前にチェックしてもらった。そのあたりは、かなり厳しかった。

今、特に大型ホテルは不動産所有と運営が別になっているスタイルが一般的。ホテル運営会社にとっては、保有資産が重たくならず、運営に専念でき、多店舗展開が行いやすくなる。

だが、不動産を単独あるいは少数の機関投資家が所有するのではなく、セキュリティ・トークンでは幅広い投資家に情報を公開して、公募することになる。何を、どこまで開示していくのか、そのあたりの調整も大変な作業だった。

──5つ星ホテルのセキュリティ・トークン化には、その他にも、従来のオフィスビルやマンションとは異なる難しさがあったのか。

関氏今、ホテル業界では「マネジメント・コントラクト型」(MC型:ホテルを所有するオーナーが、運営をホテル運営会社に委託する形態)が増えており、賃貸借契約とホテルの運営収益が連動している。インフレ時代になり、固定賃料のホテルだとコストは上がるが賃料は一定なので、投資家にとってはインフレ対策のための投資にならないケースもある。

その意味で「W OSAKA」は、観光立国を推進する日本、その中で大阪という土地柄、さらに建設が進むIR(統合型リゾート)で世界中からの宿泊客が期待できる。さらにウェディングや会議・イベントなどの需要もある。カフェも人気で、ありとあらゆる方が利用できるホテルになっている。投資家の視点に立つと、多様な収益源が期待できる案件になっている。

IRは、若年層が集まる傾向があり、「W OSAKA」は、若くて新しいものを取り入れようとする方々が利用するホテルなので、その意味でもマッチしていると思う。

中川氏:そこは将来の話であり、投資家にとってはリスクでもあり、リターンが期待できる話でもある。マーケティングの観点から言うと、ラグジュアリーホテルは、投資家にとっては “心が踊る” 案件で、オフィスとか住宅とは違う魅力が凝縮されており、ホテル特有のリスクも理解していただきながら、多数の方に販売することができた。

次の展開はアセットの多様化

──大和証券にとっては「W OSAKA」で累計の引受額が600億円を超えた。今後、さらなる成長、例えば1000億超を目指すためには、どのような戦略を考えているのか。

中川氏:実は「W OSAKA」の直後に、東京の「汐留シティセンター」という大規模オフィスビルも手がけ、すでに当社の引受額は869億円となっている。1000億円はひとつのベンチマークだが、早期に達成を目指していきたい。

当社としては「W OSAKA」「汐留シティセンター」のようなシンボリックな案件、従来であれば機関投資家に限られ、個人投資家が投資機会を持てなかったようなアセットを引き続き、提供していきたい。

また不動産セキュリティ・トークンは市場が拡大しているとはいえ、個人投資家の金融資産の規模と比べるとまだまだ小さく、成長のポテンシャルは大きいと考えている。優れた商品を提供していきながら、セキュリティ・トークンの市場規模を拡大していきたい。

関氏:当社ももちろん、さまざまな案件を準備している。日本の不動産セキュリティ・トークンのパイオニアの1社として、常に我々が一番大きな案件を提供し続けるというわけではないが、それなりの規模のものを提供していきたい。

また、インフレ対応やキャッシュフローの伸びを考えると、米国など海外の不動産も外すことはできないと考えている。従来、外貨建ての投資商品は利回りが一定で、値上がりを狙うタイプではない商品が中心。一方、米国株は値上がり益が期待できるが、ボラティリティが大きい。その中間で、インフレに応じて、利回りが少しずつ上昇していくタイプの外貨建て商品にはニーズがあるのではないかと考えている。

そうした商品を提供することで、個人投資家がより幅広く海外資産にアクセスできるようになれば、ケネディクスにとってもプラスになる。大和証券さんと連携しながら考えていきたいと思っている。

──この先、それぞれどのような展開を考えているのか。

中川氏:不動産セキュリティ・トークンを拡大する一方で、その延長線上として、裏付けとなるアセットの多様化を目指していく。例えば、日本の経済成長ストーリーを踏まえたデータセンターなどだ。

基本的には機関投資家が今、投資対象と考えているものを個人投資家に新たな投資機会として提供していきたい。航空機、未上場株、コンテンツなども投資対象になり得ると考えている。

関氏:ケネディクスは不動産投資に特化した運用会社なので、不動産の中での多様性が非常に重要だと考えている。また直近では、グループ会社から公式モバイルアプリ「KDX STアプリ」をリリースした。「W OSAKA」では、特典はこのアプリを使って受け取っていただくことになっている。今後、投資家への情報提供や、当社とのコミュニケーションの場として活用していきたいと考えている。

〈KDX ST アプリ、リリースより〉

|文:CoinDesk JAPAN 広告制作チーム
|撮影:竹田靖弘

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