【本日発行】国内初の円ステーブルコインJPYC、今日からどう使う? 入手方法から活用法まで岡部代表が語った「最速スタートガイド」

本日10月27日、国内初の日本円建てステーブルコイン「JPYC」が発行される。

多くの人が注目する一方、「具体的にどうやって手に入れるのか」「何に使えるのか」といった疑問も聞かれる。

CoinDesk JAPANが9月に行った、JPYC社・岡部典孝代表取締役を招いたXスペースでの公開インタビューでは、まさにその答えが語られていた。

音声で聞きたいという方は、アーカイブをご活用ください。

https://x.com/i/spaces/1MYxNlaygDOGw

この記事では、発行日当日に読者が行動できるよう、代表の言葉をもとに「JPYCの入手方法」と「具体的な活用法」を再構成する。さらに、この1カ月でアップデートされた最新情報や、ユーザーが知っておくべき基礎知識を加え、お届けする。

JPYCの入手方法

JPYCを入手するための手順は、公式サイトで公開されている。

まず、発行・償還を担う専用プラットフォーム「JPYC EX」にアクセスし、基本情報を入力してアカウントを開設する。

[JPYC公式サイトから]

その後の本人確認(KYC)は、最短1分で完了する。この手続きでは書類の写真撮影は行われず、マイナンバーカードと署名用電子証明書のパスワードを用いて、スマートフォンでICチップを読み取ることで完了する。

次に、メタマスク(MetaMask)に代表される、自身で秘密鍵を管理するタイプの暗号資産(仮想通貨)ウォレットのアドレスを登録する。

JPYC EX上で発行予約を行い、購入したい金額とJPYCを受け取りたいブロックチェーンを指定。

最後に、案内される銀行口座へ日本円を振り込むと、入金が自動で確認され、JPYCが発行される。発行されたJPYCは、即時に自身のウォレットで利用可能となる。

この「自身のウォレットに直接届く」という仕組みは、JPYCの設計思想を反映したものだ。

岡部代表は、その意図を次のように語る。「JPYCは購入後、取引所に預けられるのではなく、お客様自身のウォレットに直接届く。私たちがお客様の資産を預かることはない。購入が完了したその瞬間から、自由にお使いいただける」。

こうした一連のプロセスは、Web3の知識をある程度要するため、JPYC社は当面、経験のあるユーザーを主な対象と見据えている。

岡部代表は、「当面は、Web3の仕組みを理解している、いわば“プロ向けのサービス”と考えている。現在の環境で『ウォレットとは何か』といったご質問に的確にお答えするには、サポート体制が追いつかないのが正直なところ」とその理由を明かす。

続けて、この初期戦略が単なるリソースの問題だけでなく、「期待値の調整」という意図を含むと語る。

「我々の現状は、例えるなら初代iPhoneが発売されるような状況。Web3に詳しい方にとっては『乗るしかないビッグウェーブ』だが、初めてスマホに触れる方からすれば、アプリが何もない状態で『これでは電話しかできない』と感じてしまうでしょう。便利なアプリが揃ってから一般の方が参加しないと、何に使えばいいか分からない、という事態になりかねない」

この初期戦略は、ユーザーの混乱を避けるだけでなく、スタートアップであるJPYC社自身のオペレーションを守る意味合いも持つ。岡部代表は、いきなりマス層へ展開することのリスクを、具体的な事例を挙げて次のように説明する。

「もちろん、最初からマス向けにできればいいが、我々のリソースでは耐えきれない。『パズドラ』が流行したとき、ガンホーの社員はみんな疲弊したと思う。うちの会社にはゲーム業界出身の者もいるので、そうなるとどうなるか、結構見えてしまう」

このように、JPYCはまずWeb3に明るいユーザーが利用することを前提としている。

そのため、実際の購入プロセスにおいても、ユーザー自身による技術的な選択が求められる。その中でも特に重要なのが、どのブロックチェーン上でJPYCを利用するかという点だ。

購入時に選択する3つのブロックチェーンには、それぞれ特徴と、取引手数料(ガス代)の支払いに必要なネイティブトークンがある。

  • イーサリアム(Ethereum):最も広く利用されるブロックチェーン。ガス代として「ETH」が必要。
  • ポリゴン(Polygon):イーサリアムと互換性を持ち、低コストな取引を特徴とする。ガス代として「MATIC」が必要。
  • アバランチ(Avalanche):高速処理と低い手数料を特徴とする。ガス代として「AVAX」が必要。

ユーザーは自身の用途に合わせて選択することになるが、岡部代表はインタビュー内で、初心者向けにポリゴンやアバランチのガス代をJPYC社が負担するキャンペーンを検討していることにも言及しており、今後の公式発表が待たれる。


JPYCの具体的な活用法

では、JPYCは、個人の生活やビジネスのレベルでどのような変化をもたらすのか。この点について、岡部代表は熱狂的なトーンとは一線を画し、冷静な見方も示す。

「はっきり言って、メリットを感じる人と感じない人がいるだろうな、とは思っている。例えば、JPYCをクレジットカードの返済に充てることはできるが、考えれば銀行預金でもできる。それだけだったら、あまり感動はしないでしょう」

同氏は、JPYCが既存の決済手段であるPayPayなどの直接的な代替品ではないと強調する。

特にサービス開始当初は利用できる店舗も限られるため、「PayPayの代わりになる何かだと考えている人は、『最初全然使えないじゃないか』という状況になると思う」と語る。

自分のウォレットに日本円建てのステーブルコインが初めて入ったことに感動できるユーザーは、まだ少数派だろうというのが、同氏の見立てだ。

その上で、JPYCの真価は、既存の金融システムでは手間やコストがかかっていた「特定の課題」を解決する点にあると説明する。

種明かしをすると―、と前置きした上で、岡部代表は次のように語る。

「Web3で普段からDeFiなどを使っている人は『なんて便利なんだ』と感じ、そうでない人には価値が分かりにくい。今は、その両極端な意見がある状況でしょう」

DeFi市場を動かす「円」の潜在力

岡部代表が「便利だ」と感じる側の筆頭として挙げるのが、DeFi(分散型金融)の世界で活動するプロの投資家たちだ。

「日本のファミリーオフィスやヘッジファンド、クリプトトレーダーの方々からは、非常に強い需要を感じている」と明かす。

現状、ステーブルコイン市場がほぼ米ドル建てで占められている中で、流動性の高い日本円建てのJPYCが登場すれば「やれることが格段に広がる」と、大きな期待が寄せられているという。

そのポテンシャルを最大限に引き出す鍵が、日本円の「低金利」という特性だ。同氏は、これがグローバルなDeFi市場におけるJPYCの最大の武器になると分析する。

「現在のDeFiでは、資金の借入はほとんどがUSDCなどの米ドル建てで行われる。これはつまり、借り手は米国の金利に影響された、比較的に高い金利を支払う必要があるということ。ここに、低金利な日本円をベースにしたJPYCが登場することで、DeFiにおいて魅力的な低コストの借入手段となる。これは別に日本の人に限らず外国の投資家にも需要があるんじゃないかなと」。

この旺盛な「借りたい」という需要は、今度は「貸したい」側にも新たなインセンティブを生む。

「JPYCを借りたい人が多いため、貸し手は、日本の銀行預金などよりは遥かに高いリターンを得られる金利でJPYCを貸し出せるようになる。この『借りたい需要』と『貸したいインセンティブ』がマッチングすることで、JPYCの発行量は自然に拡大していく。これこそが、ステーブルコインが普及していくメカニズム」

興味深いのは、こうしたプロ投資家がJPYCを入手する方法だ。特に海外のヘッジファンドなどは、日本の居住者ではないためJPYC EXで直接購入できず、主にDeFiの二次市場でJPYCを調達することになる。

この事実は、現在JPYC EXでの購入に設けられている「1回100万円まで」という上限についても示唆を与える。

[JPYC公式サイトから]

JPYC社はこの上限を緩和するため、将来的には「第一種資金移動業」のライセンス取得を目指しており、現在の「第二種」の枠組みの中でも、取引のインターバル(間隔)の解釈次第で「緩和の余地がある」と岡部代表は語る。

サービスの安定稼働が最優先だが、DeFi市場の拡大と共に、より柔軟な取引が可能になる見込みだ。

より身近な活用シーン

では、DeFi以外で、より身近な活用法としてどのようなものが考えられるのか。岡部代表は、いくつかの明確なユースケースを挙げる。

最初に挙げられるのが、海外との資金移動だ。

「海外に住むご家族やご友人への送金、あるいは海外からの仕事の報酬の受け取りといった場面では、間違いなくメリットしかないと言えるほど便利になるはず」。銀行を介さずに国境を越えた価値の移転が可能になることは、JPYCの主要な活用法の一つだ。

ビジネスシーン、特に小規模事業者やフリーランスへの影響も注目される。

その一つが、売上の即時着金による資金繰りの改善だ。「まず、資金繰りが劇的に改善される。JPYCを使えば遠隔地の相手ともリアルタイムで決済が完了し、受け取った資金をその場ですぐに使えるようになる」。請求書発行から着金までのタイムラグが解消されることは、多くの事業者にとって課題解決に繋がる可能性がある。

インタビューで語られたこうした構想は、具体的なサービスとして形になり始めている。

まず、クレジットカード「Nudge」との連携を発表。これにより、JPYCをNudgeの返済に利用できるようになり、間接的にVisa加盟店での利用シーンが広がった。

関連記事:ステーブルコイン「JPYC」で支払い可能なクレジットカード登場

さらに、実店舗での決済対応も具体化している。

JPYC社は電算システムとの基本合意を発表した。本提携は、電算システムが全国のコンビニエンスストアやドラッグストアなど6万5千店以上で展開する決済ネットワークを活用し、QRコードやバーコードを用いたJPYC決済を実現することを目指すものだ。

関連記事:JPYC、電算システムと基本合意──全国コンビニでステーブルコイン決済実現目指す

税務の簡便化

さらに、Web3領域で活動するユーザーにとっては、会計・税務処理の簡素化というメリットも無視できない。

JPYCは暗号資産ではなく電子決済手段であるため、期末の時価評価が不要となる。

岡部代表はこの点について、「これまでNFTを含むオンチェーンでの取引が活発化しにくかった一因は、複雑な税務処理にあった。しかし、取引をすべてJPYCで完結させれば、この問題は非常にシンプルになる」と指摘する。

「例えば『10万JPYCでNFTを買い、20万JPYCで売却した』場合、利益は単純に10万円です。この分かりやすさは、米ドル建てのステーブルコインを使った取引では得られない、JPYCならではの大きな利点」と説明する。

「ニセ岡部」にご注意!

いよいよJPYCの発行が開始されるにあたり、岡部代表は詐欺への警戒を強く呼びかけている。

その背景には、JPYCが持つポテンシャルと、それに伴うリスクがある。

岡部代表はインタビューの中で、発行後の規模について「割とすぐ1000億円単位までは行くと思う」との見通しを示した。

市場がこれほどの規模へ急拡大する可能性を秘めているからこそ、悪意のある詐欺師を引き寄せやすいと警鐘を鳴らすのだ。

岡部代表はXでの積極的な情報発信で知られているが、その一方で、本人を騙る偽アカウントも多数確認されている。

[Xで増加する偽アカウント]

こうした背景を踏まえ、代表はユーザーに対し、「私やJPYCの社員が『今ならJPYCを安く買えます』といった勧誘を行うことは絶対にない。そうした話はすべて詐欺です」と注意を促す。

JPYCの利用を始める際は、必ず公式サイトや、本物のアカウントからの情報であることを入念に確認する必要がある。

|文:栃山直樹
|画像:JPYC社提供、Shutterstock

PR

おすすめの国内暗号資産取引所3選

取引所名特徴

Coincheck
500円の少額投資から試せる!】
国内の暗号資産アプリダウンロード数.No1
銘柄数も最大級 、手数料も安い
無料で口座開設する

bitbank
【たくさんの銘柄で取引する人向け】
◆40種類以上の銘柄を用意
◆1万円以上の入金で現金1,000円獲得
無料で口座開設する

bitFlyer
初心者にもおすすめ】
◆国内最大級の取引量
◆トップレベルのセキュリティ意識を持つ
無料で口座開設する