- KindlyMD、Strive、Capital Bといったビットコイントレジャリー企業のほとんどは、mNAV(市場純資産価値)が「1」を割っている。負債リスク、冴えない市場心理、低迷するビットコイン価格がその背景にある。
- 自社株買いや独自のトレジャリー戦略を試みるが、株価回復には成功していない。
- ビットコイントレジャリー企業のパイオニアであり、最大手のStrategy(ストラテジー)のmNAVは「1」を上回っているが、数値は急速に低下している。
ビットコイン(BTC)トレジャリー企業は、株価の下落と冴えない市場環境の中でのビットコイン蓄積の急激な鈍化に苦戦し、その多くは時価総額が純資産価値を下回っている。
つまり、MARA Holdingsのようなマイニング企業や暗号資産プラットフォーム以外の「純粋な」ビットコイントレジャリー企業は、mNAV(企業の時価総額÷保有BTCの時価総額)が「1」を割っている。
Semler Scientific(セムラー・サイエンティフィック)は2024年半ばにビットコイントレジャリー戦略を開始し、5000BTC以上を保有している。にもかかわらず、同社株価はビットコインの購入を開始した頃とほぼ同じ1株24ドル前後で推移しており、mNAVはわずか0.80となっている。
同社は現在、Strive(ストライブ)による買収プロセスが進んでいるが、ストライブもまた同様の困難に直面している。
ストライブの株価は、約1カ月前のSPAC上場以降、約90%下落し、時価総額は保有する5885BTCの価値のわずか約50%となっている。
同様の状況は、最近SPAC上場を果たしたKindlyMDにも見られる。同社は当記事執筆時点、ビットコインを保有する上場企業の中で19番位にあり、5765BTCを保有しているが、mNAVは0.50。つまり、約6億3100万ドル相当のビットコインを保有しながら、企業の時価総額は約3億ドルにとどまっている。同社は2億5000万ドルの転換社債を抱えており、これが大幅なディスカウントの一因となっているようだ。
こうした事例は一部に過ぎない。ビットコイントレジャリー企業全体で同様の傾向が見られる。
他の注目企業も、BitcoinQuantのデータによるとmNAVが1.0を割っている。Capital Bは0.75(2818BTC保有)、The Smarter Web Companyは0.72(2660BTC保有)、H100 Groupは0.88(1046BTC保有)、そして日本の代表的なビットコイントレジャリー企業メタプラネットは0.98(3万823BTC保有)となっている。
これらの企業はすべて、この夏の強気相場では大幅なプレミアムで取引されていた。だがその後、投資家心理は楽観から慎重、そして現在の完全な悲観へと急速に変化した。
こうしたディスカウントは今、重大な疑問を投げかけている──本当の価値を表しているのか。市場はこうした企業のバランスシートや経営に対する不確実性を反映しているのか。
再びプレミアムとなるためには
ビットコイントレジャリー企業が再びプレミアムで取引されるためには、市場心理の変化が必要であり、ビットコイン市場の上昇が欠かせない。
ビットコインは年初から上昇しているものの、現在の価格はトランプ大統領が就任した1月20日とほぼ同水準にある。強気派にとって特に不満なことは、株式や金がほぼ毎日のように上昇している一方で、ビットコインがほとんど動いていないことだ。
マクロ経済環境をコントロールすることは難しいが、ビットコイントレジャリー企業はディスカウントを緩和するためにいくつかの戦略を検討できる。
ひとつは自社株買いだ。保有ビットコインの一部売却や、融資などでその資金を調達できる。ただし後者は、有利な条件での借り入れが可能か、負債を返済できるだけの収益を生み出せるかに大きく依存する。
一例がEmpery Digital(エンペリー・デジタル)だ。同社は1億ドルの融資を確保し、1億5000万ドル規模の自社株買いを実施すると発表した。しかし発表後に株価は10%下落し、年初来では60%の下落となっている。また、Sequans Communications(シークアンス・コミュニケーションズ)は3234BTCを保有し、発行済み株式の10%にあたる157万株の買い戻しを発表したが、株価は27%下落した。
もうひとつの方法は、保有するビットコインの一部を低利回りのトレーディングや流動性運用に活用し、1桁台半ばのリターンを得ることだ。これは、マイニング企業のMARA Holdings(マラ・ホールディングス)が採用している手法だ。
Strategy(ストラテジー):最後のプレミアム銘柄
ビットコイントレジャリー企業上位20社の中で、マイケル・セイラー(Michael Saylor)氏が率いるStrategy(ストラテジー)のみが、現在、保有BTCに対してプレミアムで取引されている。
直近のmNAVは約1.39。だが、数値は急速に低下している。2024年11月、同社株価が過去最高の543ドルとなった際、mNAVは約3.0だった。
それから約1年、ビットコイン保有量が大幅に増え、ビットコイン価格が約60%上昇したにもかかわらず、ストラテジーの株価は285ドルに下落している。
mNAV「1」割れが、必ずしも致命的というわけではない。ストラテジーは2022年の下落局面で同様のディスカウントを経験しており、その時期に同社株を購入した投資家はその後の急騰で大きな利益を得た。同社の株価はこのところ下落したとはいえ、今でも当時の約10倍の水準にある。
今、ストラテジーが2022年に直面したことと同じような困難に直面しているビットコイントレジャリー企業が、ストラテジーと同じように回復できるかどうかは、まだわからない。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:CoinDesk
|原文:Bitcoin Treasury Firms Now Valued at Less Than Their BTC Holdings Amid Crumbled Sentiment


