メタプラネットは11月4日、同社が保有するビットコイン(BTC)を担保として1億ドル(約153億円、1ドル=153円換算)の借入を実行したと発表した。借入先については「非開示」となっている。
同社は借入実行日の10月31日時点で3万823BTC(約35億ドル相当)を保有。これにより、本借入金額に対して十分な担保余力を維持できると見込む。
また、同社はビットコイン価格が大幅に下落する局面においても、担保余力を十分に維持できる範囲内でのみ借入を実行する方針を示しており、保守的な財務運営を徹底するとしている。
調達した資金の使途については、ビットコインの追加取得、ビットコインインカム事業、および市場環境に応じた自己株式の取得に充当する予定だという。
今回の借入は、10月28日に発表された新たな財務戦略の一環である。
同社はこの日、最大750億円規模の自己株式取得枠の設定と、保有ビットコインを担保とする最大5億ドル(約764億円)の融資枠契約を締結したことを発表しており、今回の1億ドル借入はこの融資枠を利用したものとなる。
これら一連の動きの背景には、同社の株価が本源的な企業価値に対して「過小評価されている」という経営判断がある。

同社では、企業価値を保有BTCの時価総額で割った指標「mNAV」が、2024年のビットコイン・トレジャリー事業開始以来、初めて1倍を割り込み、時価総額が保有BTCの価値を下回る事態に陥っている。

この状況に対応するため、新たに「キャピタル・アロケーション・ポリシー(資本配分方針)」を策定。mNAVが1倍を下回る局面で自己株式取得を実行することで、資本効率の向上と1株当たりBTC保有量の最大化を目指すとしている。
同社のこれまでの主な資金調達手段は、Evo Fundを割当先とする新株予約権の発行や、海外市場での公募増資といった株式発行を伴う手法が中心であった。
しかし、2025年9月に実施した海外募集では、発行価格が市場価格から割り引かれたことで株式価値の希薄化が懸念され、株価が下落基調となる一因となっていた。
今回のビットコインを担保とした借入は、これまでの株式発行による資金調達とは一線を画す新たなメタプラネット社の財務戦略となる。
|文:栃山直樹
|画像:同社ウェブサイトから(キャプチャ)


