イーサリアム保有、9割のアドレスで含み損

イーサリアムは史上最高値から大幅に下落し、保有者の大半は投資したお金を失っている。

最高値から90%下落

CoinDeskのイーサリアム価格インデックスによると、時価総額第2位の仮想通貨イーサリアムは当記事執筆時点には130ドル(約1万4000円)付近で取引され、2018年1月初旬に記録した史上最高値1431ドル(約15万7000円)から90%下落している。

ブロックチェーン情報企業イントゥーザブロック(IntoTheBlock)によると、この厳しい下落によって、全体の90%にあたる3131万アドレスは「アウト・オブ・ザ・マネー」にある。

現在のイーサリアム価格が、購入時あるいはアドレスに送られた時の平均価格よりも低い場合、アドレスは「アウト・オブ・ザ・マネー」と表現される。

つまり、3131万のイーサリアム・アドレスは、現在の価格131ドルよりも価格が高い時にイーサリアムを手に入れた。

アウト・オブ・ザ・マネーのアドレスの大半は、211ドル〜530ドルでイーサリアムを取得した。最も大きな集団の約477万アドレスは、262ドル〜352ドルでイーサリアムを取得している。

また約358万アドレスは、745ドル〜1340ドルでイーサリアムを取得している。イーサリアムがローンチからこれまでに、747ドルを超えて取引された期間は、2017年10月〜12月の急激な高騰から2018年の第1四半期の下落までのわずか6カ月しかない。

出典 : IntoTheBlock

利益が出るアドレスは8%のみ

一方、全体の8%にあたる279万アドレスは取得コストが現在価格よりも低い「イン・ザ・マネー(利益が出る状態)」にある。そして取得価格が現在価格とほぼ同じ「アット・ザ・マネー(at-the-money)」は全体の1.78%だ。

イン・ザ・マネーのアドレスの大半は、0ドル〜130ドルでイーサリアムを取得した。一方、4120アドレスの平均取得コストは0ドル。これらのアドレスは2015年8月〜12月、イーサリアムが(1ドル以下の)セント単位で取引されていた時にイーサリアムを取得した初期の購入者だろう。

イン・ザ・マネーの状態にあるアドレスの数は少ないが、これらのアドレスが保有しているイーサリアムの量は極めて大きい。

わずか8%がイン・ザ・マネーだが、それらのアドレスが全アドレスが保有しているイーサリアムの31.24%を保有している。すなわち3405万イーサリアムで、45億ドル(約4900億円)に相当する。

これらの投資家はすでに莫大な利益が消えていくことを目の当たりにしており、価格が100ドルを下回って受け入れられ、イーサリアムに弱気圧力が加わることになれば、資産を手放す可能性がある。

アウト・オブ・ザ・マネーのアドレスが保有しているのは、7313万イーサリアム。144ドル〜170ドル、212ドル〜262ドル、262ドル〜352ドルの価格帯でイーサリアムを取得したグループは合計で3624万イーサリアムを保有している。

厳しい2019年下半期

イン・ザ・マネーのアドレス数は、2019年第2四半期末、イーサリアムが360ドル付近で取引されていた頃の方が多かっただろう。

イーサリアムは2019年上半期だけで120%以上も上がり、下半期には54%下落した。

ここ最近、強力な売り圧力に直面している仮想通貨はイーサリアムだけではない。ビットコインは6月の1万3800ドル超えの高値から、このところ6400ドル付近まで下落し、多くの市場参加者がダメージを受けている。

しかし、時価総額トップのビットコインは年初に比べれば、まだ103%上昇している。一方のイーサリアムは、当記事執筆時点で年初からわずかに下落している。

一部の観測筋は、イーサリアムにつきまとうスケーラビリティーの問題が、投資家の信頼を損ない、下落を招いた可能性があると考えている。

「イーサリアムは、プロトコル・アップグレードの期限をいつも守ることができない」とデジタル・アセット・データ(Digital Assets Data)のリサーチアナリスト、コナー・アベンドシャイン(Connor Abendschein)氏はCoinDeskに語った。

「イーサリアム2.0は今年前半にもう実現しているはずだったが、まだ実現していない」

プルーフ・オブ・ステークへの移行を予定

イーサリアム2.0は、現行のプルーフ・オブ・ワークの合意アリゴリズムをプルーフ・オブ・ステークへと移行させ、検証機能をマイナーから特別なネットワーク・バリデーターに移行する大規模なネットワーク・アップグレードだ。

プルーフ・オブ・ワークでは、マイナーは互いに競い合って、チェーンにブロックを追加するために複雑なパズル(アルゴリズム)を解く。プルーフ・オブ・ステークでは、ブロック生成者はプロジェクトに対するユーザーのステーク、つまり保有するイーサリアムに基づいて選ばれるため、競争は生まれない。

市場は、最初のアップグレードを2020年1月と想定している。しかし、データ企業メッサーリ(Messari)のCEO、ライアン・セルキス(Ryan Selkis)氏は、移行は2022年まで起こらないと考えている。

アップグレードの遅れに加えて、初期の長期保有者による売りが下落の要因となった可能性がある。

クリプト・ランド(Crypto Land)のデータサイエンティストで、データサイエンス企業D 5の共同創業者、アレックス・スバネビック(Alex Svanevik)氏が指摘した通り、2015年から存在するあるアドレスは、過去4カ月で30万以上のイーサリアムを取引所に移動させた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:CoinDesk’s ether price index
原文:Into the Ether: 90% of All ETH Wallets Now ‘Out-of-the-Money’