ザッカーバーグCEO、デジタルコマースを強調、だがリブラには言及せず──Facebookの2030年ビジョン

フェイスブックの新10年ビジョンは、同社の金融サービスに関する計画について多くを語っている。だが、リブラ(Libra)にはまったく触れていない。


コマースと決済のツールに注力

2030年に向けたビジョンを発表したフェイスブック(Facebook)のマーク・ザッカーバーグCEOは、金融とビジネスを「分散化」するための広範な「チャンス」を含め、同社の10年間のさまざまな目標を明らかにした。

「次の10年、我々はコマースと決済のツールを開発し、あらゆる小規模企業がこれまでは大企業しか利用できなかったテクノロジーに、簡単にアクセスできるようにしたいと考えている」

このビジョンには、インスタグラム(Instagram)での物販、メッセンジャー(Messenger)をベースとしたカスタマーサポート、ワッツアップ(WhatsApp)を通じた送金など、フェイスブックがすでに取り組んでいるテクノロジーが含まれている。ザッカーバーグCEOは、フェイスブックの取り組みが「世界中でより多くの機会を生み出すことに大きな役割を果たす」ことを望んでいる。

1つ、ザッカーバーグCEOが言及していないプロジェクトがある。リブラ(Libra)だ。

確かに、フェイスブックの仮想通貨子会社のカリブラ(Calibra)は、リブラを支える20を超えるコンソーシアムメンバーの1つに過ぎない。フェイスブックは、リブラには干渉しないと主張している。

リブラプロジェクトを運営するリブラ協会(Libra Association)は、「シンプルなグローバル通貨と金融インフラの構築を通じて、数十億人もの人々に力を与える」というミッションをアピールしている。

ザッカーバーグCEOは公式にリブラプロジェクトから一定の距離を置いており、リブラ協会を運営しているわけではない。しかし、腹心のデビッド・マーカス(David Marcus)氏と同様に、リブラに関して議会で証言を行った。

政府との連携に言及

ザッカーバーグCEOは、その名前を出さずにリブラについて語ろうと考えたのかもしれない。テッククランチ(TechCrunch)が指摘した通り、10年計画の中で同氏は、子会社のオキュラス(Oculus)に言及せずにVR(バーチャルリアリティ)に触れている。

だが、ザッカーバーグCEOはリブラには触れないながらも、世界中の規制当局が同氏に投げかけた批判の嵐には言及しているようだ。多くの政治家や経済官僚は、世界的な金融秩序に対する壊滅的な危険を及ぼす可能性があるとしてリブラへの批判を繰り返している。

こうした批判の他に、フェイスブックと規制当局の間にはデータプライバシーや選挙への介入といった争いもある。

ザッカーバーグCEOは、フェイスブックは政府と協調すべきと認めている──少なくとも政府が存続している限りは。

「我々の政府が正当であると捉えられている限り、民主的なプロセスで確立されたルールは企業のみが定義するルールよりも、より正当性と信頼を与えてくれる」とザッカーバーグ氏は述べた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Mark Zuckerberg image via Shutterstock
原文:Facebook’s Zuckerberg Highlights Digital Commerce, but Not Libra, in 2030 Vision