中国のブロックチェーン市場成長を予見し、米スタートアップに出資した携帯小売業者

中国のブロックチェーン市場成長を予見し、米スタートアップに出資した携帯小売業者

Brady Dale
公開日:2020年 1月 14日 15:30
更新日:2020年 1月 15日 10:57

中国でも最大級のスマートフォン小売業者D.Phoneを親会社にもつディキシントン・テクノロジー・グループ(Dixintong Technology Group)は、アメリカのスタートアップであるモンスーン・ブロックチェーン(Monsoon Blockchain)の少数株を取得してブロックチェーン業界に参入した。

事情に詳しい関係者によると、株式の取得は2020年1月7日(現地時間)に合意された。また、株式取得におけるモンスーン・ブロックチェーンの評価額は「9桁」(数億ドル)だったという。

中国が企業へのブロックチェーンの普及、そして新興技術の開発を推進する中、この両社によるパートナーシップは結ばれた。

ディキシントンの創業者兼会長、ドンハイ・リウ(Donghai Liu)氏は、この合意によって、ブロックチェーンと、5Gやモノのインターネット(IoT) といったその他の新興技術を必要とするユースケースを同社が研究することを可能にすると語った。

1993年に携帯電話小売業者として開業したD.Phoneは2014年、レノボ・グループ(Lenovo Group)、奇虎360(Qihoo 360)、中国電信(China Telecom)、TCL集団(TCL Corporation)という4社のアンカー投資家を携えて香港で上場した。アリババの主要なeコマース業界での競合、JD.comも7月、3000万ドル(約33億円)に相当する、ディキシントンの株式の9%を取得した。同社の時価総額の合計は約20億ドル(約2200億円)である。

同社は 2018年の年次報告書によると、中国国内の1500以上の店舗で約900万台の携帯電話を販売し、収益は20億ドル(約2200億円)以上、利益は4600万ドル(約50億円)であった。

D.Phoneは、事業を他の関連業界にも拡大するための努力を行なってきた。2019年12月には、総投資額が30億ドル(約3300億円)を超えると推計されるプロジェクトで、5Gとモノのインターネットに特化した工業団地建設のために中国の天津市政府とパートナーシップを結んでいる。

中国が国家的に後押しするブロックチェーン

中国の習近平国家主席が自国に対してブロックチェーン業界の「チャンスをつかむ」ように呼びかけて以来、多くのテック企業がブロックチェーン技術を研究している。ブロックチェーン技術関連の事業を手がける企業の株価は高騰した。

「政府からあれだけのお墨付きをもらうと、事態の進展はずっと速くなります」と、モンスーン・ブロックチェーンのCEO、ドナルド・バジール(Donald Basile)氏は語った。

中国の2大情報通信サービス提供業者、中国移動通信(China Mobile)と中国通信は、国が支援するブロックチェーンインフラプロジェクト、ブロックチェーンベース・サービス・ネットワーク(BSN)を運営するコンソーシアムの一員だ。

中国政府はさらに2019年より、国中に5Gを展開している。この新興技術には、新しいモバイルデバイスが必要となる。中国の主要通信事業者の大半は、5Gのデータプランとクラウドサービスの提供を始めている。

上海政府は、パブリックブロックチェーンプロジェクトのサポートに何百万ドルもを費やし、ブロックチェーン上で分散型アプリ(Dapp)の開発を行いたいスタートアップ向けのインキュベーションセンターを開設する予定だ。一方で広東省は、中小企業が商業銀行から資金の貸し付けを受けるのを支援するために、ブロックチェーンベースのプロジェクトを立ち上げた

アリババやバイドゥなどの中国トップのテック企業もまた、ブロックチェーンをクラウドサービスに組み込むための独自プロジェクトを開始している。

「中国政府からの支援を受けて、ブロックチェーンの普及には大きな可能性があるでしょう」とリウ氏は語り、次のように続けた。「我々がモンスーン・ブロックチェーンと連携したかった最大の理由の1つはそこなのです」

ブロックチェーン基盤の市場

バジール氏によれば、モンスーン・ブロックチェーンは、スマートコントラクトを利用してクラウドサービス提供業者と潜在顧客に対してより効率的な市場を提供することを目指すイーサリアムベースのプロトコルを宣伝している。

バジール氏は、クラウドコンピューティングやストレージサービスの価格は、場所や容量に応じて、データセンターごとに徐々に変わってくると述べた。バジール氏は、そこでブロックチェーンの出番がやってくると考えている。

モンスーン社は、価格を集計し、世界中のデータセンターのデータ状況についての情報を集める。それからそのデータをブロックチェーンネットワークに示すと、バジール氏は説明した。一方で、コンピューティングサービスやストレージサービスを購入したい企業は、具体的な要件を示すことができるのだ。

バジール氏によれば、同社のピアツーピアベースのプロトコルはスマートコントラクトを利用して、そのような企業と、彼らに最適なクラウドサービス提供業者をマッチングする。

ユーザーは現在、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用するために、法定通貨で同社ネットワークのネイティブトークンを購入する必要がある。このトークンはネットワーク内のみで流通しているが、モンスーン社は規制当局がプロセスについて明確なガイダンスを持った場合に将来的には、プライベートトークンセールのローンチ、または公開株の発行も検討する可能性があると、バジール氏は述べた。

モンスーン・ブロックチェーンは、IBM、オラクル(Oracle)、アリババを含む多くのIT大手と協働してきたとバジール氏は述べた。同氏はデータ処理ソフトウェア・ハードウェア企業のフュージョンio(Fusion-io)とバイオリン・メモリ(Violin Memory)を率いた経験を持つ。

数十億人のユーザーへのアクセス?

モンスーン・ブロックチェーンの主な顧客は企業だが、ディキシントンとの連携が消費者向けの事業を促進する可能性もあり、そのブロックチェーンプロトコルにユーザーを取り込むことができるかもしれない。

ディキシントンはモバイルデバイス以外にも、認可を受けたバーチャルサービスオペレータとして、データプランといった情報通信サービスも販売している。

バジール氏は、ディキシントンとの連携がモンスーン社に中国の何十億人ものユーザーへのアクセスを与え、より大きな規模に拡大できるかもしれないが、それはアメリカでは不可能なことだと語った。

モンスーン社は、最適化されたクラウドサービスソリューションのおかげで、より割安なデータサービスを楽しむことのできる同社のブロックチェーンプラットフォーム上の各スマートフォンユーザーに、独自のアイデンティティを割り当てることができる、とバジール氏は説明した。

その代わりに、ユーザーのデータはネットワーク内で処理、保管される。バジール氏によれば、人々が5Gサービスやインターネットに接続されたデバイスを利用すると、現行ネットワークよりもずっと多くのデータが生成され、それは企業が事業上の決断をするために分析する価値を持つ。

「中国ほどの人口規模があれば、すぐに2000万のユーザーを獲得することもできます。活用が待たれるコンピューティングと分析の量は膨大です」とバジール氏は指摘した。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Phone store image via Shutterstock
原文:Mobile Phone Retailer Joins China’s Blockchain Land Grab With US Startup Investment
(編集部より:株式取得の合意に関して、2パラグラフ目の情報を更新しました)