日本サービス終了?仮想通貨取引所「バイナンス」とはどんな企業?──TaoTaoと提携

Zホールディングスの100%子会社であるZコーポレーションと、同社の子会社であるTaoTao。両社との提携を1月17日に発表したバイナンス(Binance Holdings Limited)は、提携発表前日に日本居住のユーザーに段階的サービス終了を告知したばかり。2018年3月には金融庁から警告(PDF)を受け、日本語でのサービスは止めているため、初心者の中にはどんな企業なのか知らない人もいるだろう。だが世界では知らない仮想通貨・暗号資産トレーダーはいないほどの存在だ。バイナンスがどんな企業、取引所なのか確認しておこう。

バイナンスは2017年設立、創業者のCZことジャオ・チャンポン氏とは

バイナンスの設立は2017年7月。まだ2年半ほど前にできた新しい取引所だ。

創業者でCZの愛称で知られるジャオ・チャンポン(趙長鵬)氏は、中国生まれだが幼い頃にカナダに移住。カナダの大学でコンピューターサイエンスを学んだ後、ソフトウェアエンジニアとして東京証券取引所やニューヨーク証券取引所のシステム構築に従事、ブルームバーグにも勤務したという。

仮想通貨取引所KCoinのCTOを務めたり、Blockchain.infoで仮想通貨ウォレットのプロジェクトに関わったりした後、バイナンスを設立した。Twitterなどでの発言も盛んで、バイナンスブログではおすすめの書籍10選の紹介記事も掲載されている。

上場通貨は170以上、取引通貨ペアは500以上

設立時に独自の仮想通貨(トークン)BNBを用いたICOで約20億円集めるなどして注目を集めたバイナンスの取引規模は、世界有数だ。CryptoCompareによるランキングでは世界12位、CoinMarketCapによると世界15位

上場している仮想通貨の数はおよそ170以上、Coinhillsのデータによれば184種ある。決済通貨はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨のほか、ユーロ、ロシア・ルーブルなど法定通貨を含めて計15種で、マーケットペアとしては550を超えている。

なお日本で登録されている仮想通貨交換業者は22。購入できる仮想通貨は20に満たない。日本はルールが厳しいため、投資できる仮想通貨の種類は抑えられているものの、投資家保護の施策は手厚い。

取引手数料は低め、証拠金取引、レンディングも提供などサービスも充実

バイナンスの取引手数料は一律0.1%、BNBコインなら0.075%と低いことも人気の一因といえるだろう。証拠金取引も2019年にスタート。当初はレバレッジ20倍などと発表されていたが、実際は3倍程度と報じられている。手数料は、BNBの場合0.01%。それ以外のすべてのコインでは0.02%。

またレンディングサービス「バイナンス・レンディング」も提供。これは、利用者である投資家が、自身の保有するUSDT、イーサリアム・クラシック(ETC)、BNBを貸し付けることで利子を得られるサービスだ。

中国・日本の関わり──中国での取引は禁止、日本金融庁からは警告も

バイナンスは設立時、中国を拠点としていたが、設立直後の17年9月に中国ではICOが原則禁止されたこともあって、バイナンスは同月、中国での取引を禁止している。

日本では前述したとおり、日本ではサービスを提供していない。というのも、仮想通貨交換業の免許は持っていないにも関わらず、サービスが日本語に対応していたことから、金融庁が2018年3月、改正資金決済法に基づき警告。これを受けバイナンスは日本語でのサービスを停止したのだ。

同じころバイナンスは本社を中国からマルタに移転し、現在はケイマン諸島に所在地を置いている。

チャリティに熱心、西日本豪雨などに被災地に寄付

2018年には西日本豪雨の被災地支援に寄付を発表。チャリティには熱心で、最近もオーストラリアの火災被害への支援を表明している。

バイナンスチェーン、バイナンスX……高い技術力・開発力も魅力

バイナンスが世界中で支持される理由の一つは、その技術力の高さだ。1月17日にTaoTao、Zコーポレーションと合同で発表した提携内容でも、「BinanceからTaoTaoへの世界最先端の暗号資産取引関連技術の提供や暗号資産取引所運営のサポートなど、日本市場における戦略的なパートナーシップについて協議」と記されている。

そのバイナンスが開発しているブロックチェーンがバイナンスチェーン。メインネットの立ち上げは2019年4月で、BNBもそれまではイーサリアムブロックチェーン上にあった。これはいわゆるERC20トークンと呼ばれるもので、イーサリアムに対応したウォレットで管理できる(ERCはEthereum Request for Commentsの略で、イーサリアムブロックチェーンの規格も表す。ERC20のほかにもERC721なども存在する)。

管理者不在の分散型取引所「バイナンスDEX」とは

そのバイナンスチェーン上で動く分散型取引所が「バイナンスDEX」だ。

DEXとは、Decentralized Exchangeの略。一般にイメージされる仮想通貨・暗号資産取引所は、運営企業という管理者が存在するが、DEXはブロックチェーンやP2Pなどの技術を活用、管理者がいない取引所として運営される。管理者がいないためハッキングのリスクが低いと考えられることがメリットの一つだ。

バイナンスはまた、開発者がブロックチェーンを学び、導入できるようにブロックチェーン開発者向けのプラットフォーム「Binance X」も開設している。ここでは、バイナンスチェーンやBinance.comのAPIなどについて知ることができる。こうした技術者の教育、コミュニティの育成にも注力している。

取引所ビジネスが厳しさを増す中、TaoTao、Zコーポと提携してどう展開するのか?

17日に発表された3社の発表では、「戦略的提携に関する交渉を開始」とあるものの、その具体的な内容は明らかになっていない。

TaoTaoを傘下に持つZホールディングスはLINEとの経営統合プロセスを進めている最中だし、前述したとおり、バイナンスは日本でのサービス段階的停止を発表したばかり。

日本では2020年、仮想通貨取引所のビジネスは厳しさを増すと予想されている。

仮想通貨の証拠金取引では、金融庁認定の自主規制団体・日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)が倍率上限を4倍に自主規制しているが、金融庁が2倍に抑える方針を固めたと見られる。

今年は仮想通貨交換業にとって“苦しい”内容の改正金商法が施行されることもあり、仮想通貨ビジネス協会(JCBA)会長の廣末紀之氏(仮想通貨交換業ビットバンク社長)はCoinDesk Japanの取材で、「一部の仮想通貨取引所は廃業もありうる」と述べているほどだ。

こうした厳しい環境の中で、バイナンスがTaoTaoやZコーポレーションと組んでどんな展開を見せるのか、次の発表が待たれるところだ。

文:濱田 優
編集:小西雄志
写真:CZ image courtesy of Binance, Chart image via Binance.com