中国は“宿敵”リブラに関して国際的に発言を:中国人民銀行元副総裁

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行の元副総裁は、ステーブルコイン、特にリブラ(Libra)についての国際的な議論に中国が加わるべきと考えている。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)の記事によれば、中国人民銀行の元副総裁ミン・ツゥー(Min Zhu)氏は、中国がフェイスブック(Facebook)の主導するステーブルコイン、リブラ(Libra)に対する規制に関して他国に加わるべきと述べた。

「議論に参加し、国際的に協調したリブラの規制に加わることは非常に重要だと考えます」と同氏は述べた。今回の報道によると同氏はさらに、デジタル通貨電子決済(DCEP)とも呼ばれるデジタル人民元のローンチに関して具体的な予定はまだ定まっていないことも指摘した。

同氏の発言は、中央銀行や金融機関がステーブルコインをより適切に規制するためのガイダンスを提案する中でもたらされたものだ。主要7カ国(G7)のワーキンググループや金融活動作業部会(Financial Action Task Force:FATF)などの国際機関は、リブラが国際的金融システムにもたらす影響の可能性を評価し、規制を行うための措置を講じてきた。

特に中国は、独自のステーブルコインであるデジタル人民元のローンチに関して、リブラと競争関係にある。フェイスブックのブロックチェーンウォレット子会社カリブラ(Calibra)のトップを務め、リブラの運営評議会のメンバーでもあるデビッド・マーカス(David Macus)氏は2019年、アメリカの議員らに対して、リブラが足止めを食えば、中国が通貨競争で勝ちを収めると警告している。

フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ(Marc Zuckerberg)氏も、議員の前で証言を行う際に、同様の主張を繰り返した

中国がリブラを牽制する理由

一方で複数の中国人民銀行関係者が、デジタル人民元はいくつかの技術的側面において リブラよりも進んでいると繰り返し主張してきた。しかし、リブラが勝利すれば、中国は自国においても、海外においても、かなりの経済的影響力を失う可能性がある。

多くの中央銀行と同様に、中国人民銀行もリブラの隆盛によって、通貨市場の需要と供給の絶対的な支配を失い、効果的な金融政策を行う力が削がれることを恐れている。

中国はまた、部分的に米ドルに裏付けられるリブラが、国際的金融システムにおけるドルの優位を強化し、中国が人民元を国際化することをさらに困難にすることも恐れている。

中国人民銀行は2014年、独自の国家デジタル通貨開発のためにタスクフォースを結成した。しかし、フェイスブックが2019年6月にリブラローンチの計画を公表して以降、開発プロセスを加速させ、DCEPに関する詳細をさらに公表している。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock 
原文:Ex-PBoC Governor Urges China to Join Global Conversation on Libra