今こそビットコインを高リスク資産と考えるのはやめよう──ほとんどの資産より安全

ジル・カールソン(Jill Carlson)氏は無料かつオープンな金融システムの権利を目指す非営利の研究組織Open Money Initiativeの共同創業者。またスロー・ベンチャーズ(Slow Venures)でアーリーステージのスタートアップへの投資も行っている。

リスクの高い賭け?

人々は私がビットコインへの投資を始めたのは、私が高いリスク許容度を持っているからと考えている。

実際には、最悪のシナリオに対するリスク許容度が低いから、私はビットコイン投資を始めた。

ビットコインはしばしば、リスクの高い賭けと言われる。まだわずか10年ほどの歴史しかない。マスマーケットにはあまり理解されていない。実験で、まだ失敗する可能性もある。

こうした主張はすべて真実。多くの点で、ビットコインのリスク特性は初期段階のスタートアップのそれに似ている。ビットコインは幻滅の谷と啓蒙の坂の間をさまよっているようだ。つまり、ほとんどの人は仮想通貨をある種の狂気と考え続けている。そう、ギャンブルだ。

こうしたダイナミクスは、投資家がしばしば、ビットコインをリスク資産に分類することを意味する。高成長の株式、高利回りの債権、ベータ値の高い上場投資信託、ベンチャー投資、新興市場と同じカテゴリーに入れている。

リスク資産か安全資産か

市場には大まかに2つのモードがある。リスクオンとリスクオフだ。

リスクオン・シナリオ──市場が自信を持ち、上昇傾向にある時──では、リスク資産は安全資産よりも高い実績を残す傾向にある。市場がリスクオフの時には、ゴールドや国債、現金のような安全資産は好調で高値で取引されることになる。投資家がリスクの高いポジションを売却するためだ。

金融商品がリスク資産なのか安全資産なのかは、多くの属性に左右される。

あるケースでは、資産のファンダメンタルに左右される。株価は、企業の将来のキャッシュフローの予測を反映したものであり、予測は消費者需要といったダイナミクスに左右される。このダイナミクスによって企業は、市場の動きに多かれ少なかれ影響を受けることになる。

別のケースでは、資産の分類は需要と供給のダイナミクスに左右される。ゴールド──供給が比較的固定され、中央銀行などから継続した需要がある──は、市場サイクルや下降ショックに対する回復力がある。

しかしすべてのケースで、資産の相関関係と動きの理解において最も重要になるのは、市場の認識だと私は考えている。

トレーダーや投資家はその資産を変動する市場における良い避難場所と捉えているだろうか? あるいは、市場参加者はその投資を下降傾向に対して脆弱だが好循環に参加するためには最上と考えているだろうか?

市場は確かに、ビットコインをまだ後者と見ているようだ。ビットコインの価格に関する限り、そしてあらゆる市場の相関関係に関しても、その認識だけが重要だ。

最も重要な属性を見逃すな

この認識はビットコインの最も重要な属性を見逃している。ビットコインは多くの点で究極の安全資産だ。

つまり、自身で保有することが可能で、信用システムと法律のルールが破綻した時でさえ保有できる。オープンかつボーダーレスで、世界のすべての国に比較的流動性のある市場が存在している。

検閲に対して耐性がある。つまり、政府などの組織も事実上、ビットコインでの投資や取引を防ぐことはできない。

ビットコインはゴールドのように供給が限られている。ビットコインはデジタルであり、保有、移動が実用的。

この世の週末に備える人、ディストピアSFのファン、世界の終わりを予測する人たちにとって、ビットコインを好きになる理由は数多い。たくさんある。

それでも、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックへの懸念が広まるなか、ここ数週間のビットコイン価格の動きを見ると、ビットコインは安全資産というよりも、ハイリスクな投資のような動きを続けていることは明らかだ。

市場が見誤ったのだろうか? ビットコインはアップルの株式よりもゴールドにより相関関係を持つべきだろうか? おそらくそうだろう。

しかし、経済学者ケインズが言った通り「市場は個人の支払い能力よりも、非合理的な状態を保つことができる」。ビットコインを安全資産として理解、認識してもらうための道のりは長く、教育への大きな投資が必要だ。

重要なのはビットコインという資産にまつわるストーリーであり、現状そのストーリーは、初期段階にある高リスクの賭けというものだ。市場に関する限り、その認識は現実だ。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Jill Carlson
原文:Stop Treating Bitcoin as Risky. It’s a Safer Asset Than Most