金連動型ステーブルコイン、新型コロナ危機で価格上昇

新型コロナウイルスによる危機のなか、金(ゴールド)そのものを手に入れることは困難になっていると伝えられ、ゴールドに連動した仮想通貨トークンの価格は上昇を続けている。

ゴールドに連動した人気の2つのトークン、パクソス・ゴールド(PAXG)とテザー・ゴールド(XAUT)への需要は今週、急増した。

ブロックチェーンベースの2つトークンは、それぞれ企業の金庫に保管されたゴールド1オンスの法的権利を表している。つまり、どちらのトークンも実際のゴールドと交換できる。

報道によると、伝統的なゴールドの供給業者が供給不足に直面し、金塊を市場に提供することは難しくなっているが、ゴールドの需要は高まっている。

「FRB(連邦準備制度理事会)は完全にルールを変えた──実質金利はさらに変動したので、そのお金はすべてすぐにゴールドに流入している」と貴金属保管企業ゴールドマネー(Goldmoney)の創業者ロイ・セバッグ(Roy Sebag)氏は3月24日、CoinDeskとの電話インタビューでFRBについて語った。

トークンの新規購入は毎日2倍に

パクソスの広報担当者ベッキー・マクレイン(Becky McClain)氏によると、パクソス・ゴールド──ロンドン貴金属市場協会(London Bullion Market Association:LBMA)が認定したゴールド1オンスを表す──の新規購入は、3月23日から毎日、2倍近くに増加している。

パクソスは3月26日、現在の需要をカバーできる十分な量のゴールドを保有していると述べた。

一方、データ提供業者ノミックス(Nomics)によると、テザー・ゴールドへの需要増によって、その時価総額は3月25日、5000万ドルに達した。

しかし、ザ・ブロック(The Block)によると、ゴールドを調達するサプライチェーンの問題によって、トークンのさらなる発行は妨げられているようだ。

「テザー・ゴールドは、年間手数料なしにゴールドを保有する、新しい、技術的に革新的な方法となっている」とテザーは声明でCoinDeskに語ったが、日々の市場変動に関するコメントは拒否した。

「テザー・ゴールドは力強い成長を見せており、ゴールドの所有権を表す代表的なデジタルトークンとしてその地位を確立し、成長を続けることを期待している」

ノミックスとコインマーケットキャップ(CoinMarketCap)の市場データによると、2つのトークンの取引高もここ数日で増加している。

「我々は皆、ここ数週間、市場で前例のないボラティリティを目撃した。そのため人々は当然、ゴールドのような安全資産に目を向けている」とパクソス幹部のウォルター・ヘザート(Walter Hessert)氏はCoinDeskに語った。

「ブロックチェーンベースのトークンとして、金融システムの外側でも最大レベルの管理とアクセシビリティを所有者に提供する」

物理的なゴールドを上回る価格

ゴールドへの需要の増加は、ゴールドを調達するサプライチェーンの問題と組み合わさって、ゴールド価格を上昇させた。

ブルームバーグは今週、新型コロナウイルスの拡大によってニューヨークでゴールドの現物決済ができなくなったため、ゴールド先物の価格はゴールド価格に対して、40年以上見られなかった水準で上昇したと伝えた。

ゴールドに連動したトークンの価格は現在、FTXなどの取引所におけるスポットと先物、双方のゴールド市場での伝統的な取引価格を上回っている。

しかし、CoinDesk Researchによると、現在の価格は、こうしたトークンが維持していた過去の価格(スポット、先物を上回る価格)の継続かもしれない。

実際、パクソス・ゴールドとテザー・ゴールドは誕生以来一貫して、ゴールドのスポット価格を上回り続けてきた。テザー・ゴールド2020年1月、パクソス・ゴールドは2019年9月にローンチされた。

だがトレーダーはゴールドの小さな取引単位を求めているが、見つけることはますます困難になっているとセバッグ氏は語った。

「この数日で何かが変わった。物理的なゴールドの不足ではなく、単位の問題だ」

パクソスは、パクソス・ゴールドへの需要の増加は、テザーで見られていると伝えられる供給の制約にはつながっていないと述べた。

「我々はロンドン貴金属市場協会のゴールドのみを扱っており、そこには大量のゴールドがある! 信頼され、規制を受けた企業であることのメリットは、我々は他の人たちとは違って、そうした市場へのアクセスが可能なことだ」とマクレイン氏は語った。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Gold-Backed Stablecoins Race to Keep Up With Crisis-Driven Demand