暗号資産は逃避資産か?──コロナショックに戸惑う投資家

市場が新型コロナウイルスの急速な感染拡大に揺るがされる中でも、暗号資産(仮想通貨)への関心は今までになく高まっている。そのように述べるのは、仮想通貨取引所であり支払いプロバイダーでもあるCrypto.comだ。

同社共同創業者兼CEO、クリス・マーズザレック(Kris Marszalek)氏はCoinDeskに対し、同社での取引量は、12月から2月にかけて2倍以上になり、アプリのダウンロード件数も過去最高を記録したと述べた。「昨年9月には、弊社プラットフォームは100万人のユーザーを有し、毎月2桁台の成長を続けている」とマーズザレック氏は語った。

香港に拠点を置く同社は、アプリベースの取引サービスおよび、ビザ(Visa)ベースの銀行カードを通じた仮想通貨支払いソリューションを提供している。社名がモナコ(Monaco)であった2017年、同社は新規コイン公開(ICO)で合計2670万ドル(約2億9000万円)の資金を調達した。2018年に、報じられた額としては1000万ドル(約1億800万円)でドメイン名を購入し、Crypto.comへと社名変更した。

マーズザレック氏は、最近の力強い成長は、金融市場安定化のための中央銀行による強力な施策への反応という可能性があると述べる。コロナ危機を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)は2020年3月23日(現地時間)、てこ入れのために、国債と住宅ローン担保証券を無制限に購入する量的緩和策を打ち出した。

「この厳しい時期、人々は仮想通貨へ大きな関心を寄せている」とマーズザレック氏は述べ、デジタル資産は投資家に対して、価値の独立した保管手段を提供し、量的緩和策により生じる可能性のある副次的影響への備えとなる可能性があると加えた。

暴落でも取引高は好調

市場が暴落した際でさえも、個人投資家はCrypto.comを使い続けたとマーズザレック氏は語った。「人々はこれを買いのチャンスと見ている」

その他のプラットフォームも、ここ数週間で取引量の増加が見られている。MyEtherWalletのCOO、ブライアン・ノートン(Brian Norton)氏も、同社プラットフォームでのイーサ(ETH)購入者はこれまでになく多いと語った。「こんな数字は見たことがない。2018年冬の大暴落の時でさえも」とノートン氏は述べる。

バイナンスUSのCEO、キャサリン・コーリー(Catherine Coley)氏は、同社が「前例のない取引高」を経験しており、特にステーブルコインとビットコイン(BTC)に高い関心が寄せられていると語った。「他の市場が下落した時にビットコインが値上がりしたことは、従来型の企業とは違って、ビットコインは救済を受けずに生き延びることを証明している」とコーリー氏は述べた。

Crypto.comは正確な数字の提供を拒んだが、広報担当者によれば、2020年3月の同社プラットフォームは、2019年12月の3倍の水準となる過去最高の取引高を記録したと述べた。

「仮想通貨は今回のような危機のために作られた」とマーズザレック氏は語った。「2月は記録的に好調な月であったが、3月はさらに良い記録だと思える」

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Kris Marszalek, co-founder and CEO of Crypto.com. Image courtesy of the firm
原文:Users See ‘Buying Opportunity’ in Coronavirus Market Downturn, Says Crypto.com