日本が直面した深刻な不況リスク──GS、JPモルガンが予想する「2020年のブラックスワン」がもたらす経済危機

「2020年のブラックスワンとも呼ぶべき新型コロナウイルスの世界的流行は、多くの主要経済における部分的、または完全なロックダウン(外出禁止・学校休校などの措置)を招き、世界経済はリセッションに突入した」

米ゴールドマン・サックスは3月24日、「ROARING INTO RECESSION」と題する経済予測レポートを公開した。「凄まじい勢いでリセッションの渦に吸い込まれていく」さまを連想させる、強いタイトルの報告書だ。

ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ジャン・ハチウス氏は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大「パンデミック」がもたらす経済へのインパクトをこう予想する。

世界のGDPは2020年、1%縮小し、2007年~2008年の世界金融危機(日本ではリーマンショックで知られる)の状況よりも悪化する。過去数年間、年率6%~7%成長を維持してきた中国経済は、3%成長にとどまる。驚くべきは、第2四半期(4月~6月)におけるアメリカ経済の生産高の下落幅で、年率換算で24%縮小する。ヨーロッパにおける同四半期の生産高は、38%落ち込む。

世界金融危機と異なるコロナショック

2020年3月、客のいないニューヨークのカフェ(Shutterstock)

大企業・中小企業の破綻リスクは高まり、多くが失業するだろう。アメリカの失業率は今後数か月で、直近の4%弱から9%にまで上昇すると、ハチウス氏は予測。世界金融危機時に記録した10%をわずかに下回るが、残念ながら、そのレベルに近づくリスクは極めて高いという。

「経済活動が物理的に抑制され、スピードと経済後退の深さにおいては、世界金融危機時よりも深刻に見える。金融危機は、人の生産や消費をここまで抑制するものではなかった。今、起きていることは、モノやサービスに対して我々が支払う意思やその能力とは関係ない。レストランで楽しむ食事にありつくことができないのだ」(ハチウス氏)

中央銀行の緊急対策の効き目は?

今月、アメリカ、欧州、日本の中央銀行が動いた。アメリカ連邦準備理事会(FRB)は15日、緊急の連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、2008年の金融危機以来のゼロ金利政策を復活させた。同時に、米国債を買い入れる量的緩和も再開。

翌日16日、日本銀行は金融政策決定会合を前倒しして、ETF(上場投資信託)の買い入れ目標を年間6兆円から12兆円に倍増することを決めた。18日、今度は欧州中央銀行(ECB)が、7500億ユーロ(約89兆円)規模の資産購入プログラムを2020年末までにスタートさせると発表した。

ハチウス氏は、短期間で大きな衝撃を与えるという意味では、中央銀行のアクションは効果的に作用するとは言えないだろうと述べる。今起きている危機の本質を考えると、経済が短期的にたどる道筋は、ウイルス感染の収束の行方と、それに伴う人・経済の活動が大きく左右する。

「コロナウイルスはその予兆もなきまま、突然にやってきたブラックスワン(黒い白鳥)。感染のピークが過ぎ、人口における免疫力が高まり、ワクチン開発が進めば、最終的には衰えていく」とハチウス氏。しかし、「今後数か月で新たな感染者数に著しい減少が見られなければ、経済活動の停止は長引かざるを得ないだろうし、その後の回復成長へのインパクトも大きくなる」

3四半期連続でマイナス成長:よりシビアな日本経済の行方

2020年3月25日、桜の花が咲く東京・新宿御苑(Shutterstock)

一方、日本経済は、昨年末の時点ですでに大きく減速した。内閣府が9日に発表した報告書によると、2019年10月~12月期の実質GDPは、年率換算で7.1%減少。ゴールドマン・サックスは、日本は2019年第4四半期から3四半期連続で、マイナス成長を余儀なくされるだろうと述べ、2020年のGDPは2.2%減少すると予想する。

米銀最大手のJPモルガン・チェースも、27日付の経済レポートの中で、日本経済に対するシビアな見方を明らかにした。

特に、4月~6月期における世界の総需要の減少予想を考慮すれば、日本の輸出と企業による投資額は大きく落ち込み、同四半期の工業生産は4割近く減るだろうとしている。トヨタ自動車、マツダ、日産自動車、三菱自動車工業は今月、国内外の一部の工場における生産の一時中止を決めている。

JPモルガンが同レポートで予想する日本の2020年のGDP成長は、マイナス3.1%。同社は、日本のマイナス幅が2ケタにはならないという見方の背景として、欧米諸国に比べると、日本における新型コロナウイルス感染者数が比較的に少ない点をあげる。ロックダウンではなく、不要不急の外出を自粛する要請を行うなど、「控え目な」対策を講じていることで、国内消費の減少は欧米諸国のものとは異なるだろうとした。

しかし、日本の感染者数が徐々に増加し、感染の抑え込み策がより強化されるようになれば、経済見通しを下方修正する可能性は高まるだろうと、JPモルガンはレポートに記した。

米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、世界の感染者数は3月29日現在、71万人を超え、死者の数は約3万4千人。感染者数ではアメリカが世界最多で、約13万7000人。ニューヨーク州における感染拡大は急速に進み、同州の感染者数は約6万人まで増えた。

同大学のデータでは、日本の感染者数は1866人。有効な感染抑え込み策が評価された韓国の約9600人の約5分の一だ。東京都は29日、新たに68人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表した。1日に発表する数としては、これまでで最も多い人数で、都内で感染が確認された数は合わせて430人になった。

文:佐藤茂
写真:Shutterstock