VISAは中央銀行デジタル通貨の基盤開発を始めたのか──特許申請で分かったこと

VISAは、米ドルなどの法定通貨を簡単に中央銀行デジタル通貨(CBDC)に置き換えることができる次世代プラットフォームの開発を進めているのか?

1日あたり平均1億件以上の取引を処理する決済大手のビザ(VISA)は、法定通貨をデジタル化するプロセスの特許を申請した。

特許申請は2019年11月、米特許商標庁(Patent and Trademark Office)に提出され、2020年5月14日に公開された。申請によると、このシステムはブロックチェーンを使ってデジタル通貨を発行・管理できる。「中央組織のコンピューター」によって管理されるこのシステムを使えば、物理的な現金を流通から取り除くことも可能になるという。

新たに作られるデジタル通貨は、物理的な現金と完全に同等の価値を持つものとなるようだ。額面、そして通し番号さえも新しいシステムに引き継がれる。特許はまた、おそらく発行を厳格に管理されたプロセスとするために、デジタル通貨の発行には「信頼できる証明書」のようなものが必要となると記されている。

VISAは「中央組織のコンピューター」が具体的に何を示すのかについては詳細を明らかにしていないが、申請書類には次のように記されている。

「中央組織は、通貨供給を規制する中央銀行になる可能性がある」

VISAの狙いは?

中央組織の役割の1つは、デジタル通貨の発行量を管理し、デジタル通貨の価値が常に物理的な通貨と確実に連動していることに責任を負う、通貨の監督者として機能することのようだ。

中央組織のコンピューターはまた、新たなデジタル通貨を作り出すことのできる唯一のもの。つまり、エコシステムに供給されるデジタル通貨を管理する唯一の存在になる。

申請書類によると、官民を問わず、他の組織がエコシステム内で役割を果たすことはない。VISAは、中央コンピューターを運用する組織は、物理的な通貨を流通から取り除き、破壊する権限さえ持つと想定している。

この特許申請は、必ずしもVISAがデジタル通貨システムの開発を意図していることを意味するわけではない。既存の金融システム内で並外れた成果をあげているVISAが、通貨のイノベーションを模索していることを示している。

VISAは5月12日、トークンの形態でロックされた資産を換金する手段である「デトークン化システム」の特許も取得している。

VISAはCBDCにおける重要なインフラ提供事業者になることを想定し、デジタル通貨システムの開発を進めているのか?CoinDeskは同社に取材を試みたが、当記事公開時点でVISA広報担当者からの回答はなかった。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:Visa Patent Filing Would Allow Central Banks to Mint Digital Fiat Currencies Using Blockchain