1週間で巨大資金を集めたスシスワップ、匿名設立者が突然のトークン売却

「スシスワップ(SushiSwap)」の投資家にとってはひどい週末になった。登場してわずか1週間で、預け入れ額が12億7000万ドル(約1350億円)に増加したスシスワップの匿名の設立者が、自身が保有していたトークンを売却した。

スシスワップは、匿名の設立者「シェフ・ノミ(Chef Nomi)」がDeFiを代表するサービスとなったユニスワップ(Uniswap)を参考にして開発した。ユニスワップの仕組みをさらに拡張し、流動性提供者(資金提供者)に報酬として「SUSHI」と名づけた流動性提供者(LP)トークンを提供することで、スシスワップの収益の一部を得られるようにした。

本質的には、スシスワップなどのAMM(オート・マーケット・メーカー)は取引量の少ないトークンと流動性をマッチングさせるためのインフラ。ユニスワップは、コインベース・プロ(Coinbase Pro)のような従来型の中央集権型取引所に匹敵する取引高を持つ最大のAMMに成長している。

匿名の設立者がトークンを売却

スシスワップの投資家は5日、シェフ・ノミが自身が保有していたSUSHIを売却したことに気づく。身元不明の設立者によって管理された、監査を受けていないサービスに資金を入れることは、良いアイデアではなかったわけだ。

ウェブメディアのThe Blockによると、シェフ・ノミは自身が保有するSUSHIを3万7400イーサリアム(約1300万ドル、約14億円)と交換した。これはいわゆる「出口詐欺」と言われるものにきわめて似ている。

SUSHIの価格はデータサイトのCoinGeckoによると、すぐに73%下落し、その後の18時間で4.44ドルから1.20ドルまで下落した。当記事執筆時点では、3.16ドルで取引されている。

コピー&ペースト

簡単に言うと、AMMにネイティブトークンを追加することは良いアイデアだった。あるいは、少なくともDeFiブームの火付け役となった。

シェフ・ノミは8月28日にスシスワップをスタートさせた。そのわずか1週間あまりの9月6日には、12億7000万ドルがスシスワップにロックされている。Susiboardによると、この金額はユニスワップで取引されている資産の77.4%に相当する。

10億ドル超えという金額は、ライバルであるユニスワップを利用する革新的な方法によって可能になった。シェフ・ノミは、DeFiにおけるユニスワップ人気を利用して、スシスワップを立ち上げた。

スシスワップは「ゾンビ・マイニング」と呼ばれる手法で、ユニスワップのイーサリアム(ETH)/スシプールに流動性を提供したユーザーにLPトークン「SUSHI」を追加で提供する。そのため、SUSHIの価格は高騰、SUSHIを手に入れようとする人が急増した結果、ユニスワップの取扱高は指数関数的に増加した。

「シェフ・ノミは最低だ」

しかし、シェフ・ノミがSUSHIを売却したことで、すべてが変わった。

ユニスワップのコードをコピー&ペーストしただけで、表面上は億万長者になったシェフ・ノミに対して、すぐにツイッターで抗議の声があがった。彼の身元はまだ確認されていない。

その間、シェフ・ノミと他のDeFiサービスの創業者たち、スシスワップの投資家たちによる議論が始まった。

シェフ・ノミは、SUSHIの売却は設立者としての権利の範囲内だと主張。

暗号資産デリバティブ取引所FTXのCEOで、スシスワップの投資家でもあるサム・バンクマン-フライド氏などは、売却には否定的だ。「シェフ・ノミは最低だ」と同氏は9月5日にツイートした。

さまざまなやり取りの結果、シェフ・ノミは単独で保有していたスシスワップの管理権限を手放し、バンクマン-フライド氏に移譲することになった。

このやり取りはすべて、6日にツイッターで行われた。シェフ・ノミは自らの立場を嘆いている。

「繰り返しますが、私はいかなる危害も加えるつもりはありませんでした。私の決断が皆さんの期待に添わないものだったとすれば、申し訳ありません」

現状、バックマン-フライド氏がスシスワップを管理している。同氏は、他のDeFiプロトコルと同じように、プロジェクトの管理がSUSHIトークンホルダーの手に完全に分散化されるまでは、管理を複数の手で行う予定と述べた。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstocck
原文:Fishy Business: What Happened to $1.2B DeFi Protocol SushiSwap Over the Weekend