米食料品チェーンのアルバートソンズ、ウォルマートに続きIBM食品追跡ブロックチェーンに参画

年間約6兆円を売り上げる米食料品チェーンのアルバートソンズ(Albertsons Companies)は、食品の供給元から小売店までの流通経路を追跡するIBMのブロックチェーン・プラットフォームに参画した。

アルバートソンズは2019年4月11日(現地時間)、ロメインレタスの供給者が参加する試験的な取り組みに着手すると発表した。アメリカでは昨年、ロメインレタスが原因とみられる大腸菌感染が広がり、数人の死者を含む甚大な被害に見舞われている。

アイダホ州ボイシに本社を置くアルバートソンズは全米でおよそ2300の店舗を運営し、同社の年間売上高は570億ドル(約6兆3000億円)に上る。IBMのプラットフォーム「フードトラスト(Food Trust)」は、昨年10月に運営を開始。アルバートソンズを含む同プラットフォームへの参画企業は80社を超えた。

フードトラストは、食品が流通する上で発生する問題を解決するために開発された取り組みで、流通経路で怪しいと思われる商品を見つけると、サプライチェーンからそれらを取り除くというもの。

カルフール、ネスレ、クローガー……

カルフール(Carrefour)やウォルマート(Walmart)、ネスレ(Nestle)、ドールフード(Dole Food)、タイソンフーズ(Tyson Foods)、クローガー(Kroger)、ユニリーバ(Unilever)など、世界の食料品大手が参画している。これまでに50万件の追跡をフードトラスト上で行ってきた。

アルバートソンズのIT部門・グループバイスプレジデントのRucha Nanavati氏は、「大企業の多くがこのプラットフォームに集結できるようにになった。多くの供給者もここに集まってきてほしい。サプライチェーンにおけるテクノロジーはいつの日も存在したが、全てのデータを集めることができれば、可能性は大きく広がる」とCoinDeskの取材で答えた。

食品業界は常に安全性を最重要視してきたが、効率的にリコール(商品回収)を行うことは極めて難しいと、Nanavati氏は話す。

IBMとウォルマートは2016年、商品の追跡時間の短縮を図るためブロックチェーンの実証実験を開始した。概念実証(コンセプト立証=Proof of Concept)は北京の清華大学が、中国の巨大な豚肉市場を対象に行った。追跡時間は数日から数分に縮小された。

今では、追跡時間は数秒の世界だと、IBMフードトラスト・ディレクター、スザンヌ・リビングストン(Suzanne Livingston)氏は言う。「ルーツを探るための調査は時に数カ月を要することもある。商品の追跡調査ができなければ、企業はその全ての商品を店の陳列棚から撤去することになる」とリビングストン氏は述べる。

強気のウォルマート

IBMフードトラストのパートナーとして、この取り組みの鍵を握るのは米食料品チェーン最大手のウォルマートだ。ウォルマートは昨年、葉物野菜の全ての供給者に対して、2019年9月までにフードトラストへの参加を義務づけた。

アルバートソンズはウォルマートの後を追うのか?

前出のNanavati氏は、「我々も同様にそれを行う立場にあると考えている」とした上で、「義務付けるというより、推奨するかたちになるのかもしれない」と、ウォルマートよりもやや柔軟な姿勢を見せた。

IBMのリビングストン氏は、フードトラストへの参加を必要条件とすれば、それはそれでうまく事は運ぶと述べる一方、義務付けに反対する小売業者も存在すると加えた。

翻訳・抜粋:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:カリフォルニア州サリナス近郊のレタス農場(Shutterstock)
原文:World’s Second-Largest Grocer Joins IBM Food Trust Blockchain