TikTok、アリババ創業者らも武漢に義援金──中国「コロナ禍」で慈善事業へのブロックチェーン活用が拡大

TikTok、アリババ創業者らも武漢に義援金──中国「コロナ禍」で慈善事業へのブロックチェーン活用が拡大

新型コロナウイルス禍による武漢市の封鎖は、慈善事業に大きな関心を集めた。

新型コロナウイルスの震源地、武漢市で2ヵ月半に及んだ都市封鎖の間に寄せられた義援金は、3月上旬までで既に義援金が206億元(3180億円)に上った。

1億元以上寄付した企業と個人は37で、個人の最高額は、ショートビデオ「快手」の網紅(インフルエンサー)有志の1億5000万元(23億円)。続いてTikTok運営会社バイトダンスの創業者、張一鳴氏とアリババ創業者、ジャック・マー氏の1億元(15.4億円)だった。これらの報道は、問題点も含め、中国人の慈善事業へ関心を大きく高めた。

このように巨額の義援金が集まった一方、慈善団体の抱える問題点もまた注目を集めた。そのソリューションとして、この部門でもブロックチェーン採用への関心が高まった。このところ中国を代表する大企業が、新しい慈善プラットフォームに言及している。これらの流れは、中国文化の転機となるのだろうか。

中国の慈善事業の変遷と現在の問題

中国人の慈善事業の特徴は、儒家の「仁愛」や道家の「積徳」、仏教の「慈悲」など長い歴史があるが、近代ではキリスト教の影響も見られる。当然ながら統治機構との関係は深く、政府がつくった慈善機構が事業の中心となっている。しかし文化大革命による統治機構のマヒにより、慈善事業の発展は30年遅れだとも指摘されている(百度百科による)。

1994年、慈善団体・中華慈善総会が設立されて以降、同様の民間団体は増えているものの、依然として、半官の組織による低所得者救済政策の一環というイメージは強い。現代中国人は今まで、自発的な慈善にはあまり関わってこなかった。

中国の慈善事業の概況をまとめた『慈善藍皮書2019年』によれば、2018年末、全国の慈善組織数は81万6000。前年比7.1%増だが、慈善団体の設立と存続のハードルは高いという。そして資金管理態勢は甘く、不適切な使途も多いなど、運営レベルはおおむね低い。また合法的地位があいまい、情報開示不足などにより、信頼性も十分とは言い難い。武漢の都市封鎖は、こうした慈善事業の環境下において起こった。

武漢で明らかになった問題点とは

武漢への援助ではさまざまな問題が指摘された。大別すると3つで、「被災地側は何を必要としている、うまく声が伝わらない」「実際に支援を必要とする人々に、うまく届かない」「人々の信任が得られていない」──というものだった。日本でも聞かれるような、問題ともいえよう。

武漢のこうした状況から次第に大きくなったのが、「慈善ブロックチェーン」を求める声だ。

実は1月末、いち早く武漢用にブロックチェーン慈善登記プラットフォームを立ち上げた企業がある。ブロックチェーン技術を開発する企業・杭州復雑美科技有限公司だ。

ネットメディア騰訊網によれば、このプラットフォームは、1ヵ月で10万元の資金と物資を集めた。救助が必要な病人の情報、支援物資のトレーサビリティ、ボランティア情報の管理、貢献した人々への「愛心ポイント」の登録などを行った。

他社、他都市に先駆けたこの取り組みだが、先駆的な例だからこそかもしれないが、寄付額に対するカバー率は低く、わずか0.0005%でしかなかった。これでは、お世辞にも実用的なレベルとは言えない。あくまでお試しレベルだろう。

しかしこのプラットフォームはまさに“さきがけ”であり、これ以降、大企業の動きが加速していることには注目する必要がある。

アリババ、テンセント、中国工商銀行の慈善ブロックチェーン

最近、慈善事業へのブロックチェーン活用で目立っているのが、アリババ、テンセント、中国最大の中国工商銀行だ。特に前2社は誰もが知るとおり、ブロックチェーンに注力している企業集団だ。中国の知的財産メディアIPR Dailyによれば、2020年上半期の、ブロックチェーン特許申請数は、アリババ(アント・グループ含む)1457件、テンセント1006件(子会社の微衆銀行含む)で、世界の2トップを占めているほどだ。

アリババ……慈善事業ブロックチェーンの技術と使い方を明示

まずアリババの状況を見ると、毎年9月上旬に開催しているチャリティー活動のオフラインミーティングで、慈善事業ブロックチェーンの技術と使い方を示した「公益鏈技術と応用の規範」を公表した。アリババのアプリを介した寄付は、すでに60%がこのブロックチーェン上に記載されているが、このほど示した新しい規範により、結果の検証可能性、情報のトレーサビリティなどがより明確に分かりやすくなるのだろう。

テンセント……寄付をブロックチェーン電子認証で証明

テンセントも同様に9月上旬にチャリティー活動を行なっているが、今年は、寄付が“ブロックチェーン電子認証”により証明、保存される「騰訊領御TUSIブロックチェーン」システムのプロセスを発表した。例えば、貧困の母親援助のための、中国婦女発展基金会へ寄付した経緯が、スマホアプリにおいてきっちり検証ができるという(ITメディア互聯網頻道による)。

中国工商銀行……ブロックチェーン白書と金融慈善網

工商銀行のブロックチェーン「金融慈善網」は、全国200の慈善機構にサービスを提供し、業務効率の改善、資金利用率の向上などに貢献している。既に評価は高く、ネットメディア「互聯網周刊」は、2020ブロックチェーンイノベーションランキングの1位に選んでいる。また工商銀行は4月に初のブロックチェーン白書を発表、金融分野における応用価値を詳しく分析し、ブロックチェーン技術の自主開発に力を入れている。

慈善事業はブロックチェーンで透明性やトレーサビリティの確保・向上へ

8月以降、ブロックチェーン関連報道は増え、全国各地でカンファレンスも花盛りだ。こうした中、慈善事業への有用性も盛んに報じられている。

中国の慈善事業は、これまで半官半民の組織が担い、個人が積極的に関わるものとはいえなかった。それが武漢封鎖を契機に、ブロックチェーン技術の採用によって、透明性やトレーサビリティの確保が進みつつある。中国の慈善事業、寄付文化は新時代へと向かいそうだ。

文:高野悠介
編集:濱田 優
画像:sevenke, Iurii Motov / Shutterstock.com

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