野村、SBI出資のセキュリタイズ、米DTMを買収──デジタル証券基盤を拡大

ブロックチェーン上でトークン化した株式や債券を発行するプラットフォームを運営する米セキュリタイズが、証券の代替取引システム(ATS)を展開するDTM社を買収すると発表した。欧米やシンガポール、日本などで注目を集めるデジタル証券の発行・取引プラットフォーム事業を拡大する。

15日(日本時間)の発表によると、サンフランシスコに本社を置くセキュリタイズ(Securitize Inc)が買収するのはDistributed Technology Markets(DTM)で、買収額は明らかにしていない。

DTMは米証券取引委員会に登録するブローカーディーラーで、デジタル証券を含む私募証券の発行(プライマリー)と投資家間の取引(セカンダリー)ができる取引所の認可を取得している。

M&Aでプラットフォームを拡大

セキュリタイズはDTMを買収することで、未公開株(プライベートエクイティ)を中心とするデジタル証券のプライマリーとセカンダリー市場をつなぎ、その発行と管理、取引のプラットフォーム基盤を拡大させる。デジタル証券は「セキュリティトークン」と呼ばれるもので、発行体企業が従来の株式や社債に代わり、ブロックチェーン等を使って発行される。

また、セキュリタイズは15日、アメリカの複数の州で送金業のライセンスを持つVelocity Platform(ヴェロシティ・プラットフォーム)を買収する計画も発表した。この買収は米規制当局の承認が必要で、買収金額などの詳細は開示されなかった。

セキュリタイズはこれまで、三菱UFJフィナンシャルやSBIホールディングス、野村、ソニー・フィナンシャル・ベンチャーズを含む各国の金融機関から3000万ドルを超える資金を調達。デジタル証券の発行と管理ができるプラットフォームの開発を進めてきた。セキュリタイズによると、同プラットフォームを利用する投資家は現在までに4万人を超える。

日本では、みずほフィナンシャルや三菱UFJ、野村HDがデジタル証券(セキュリティトークン)の発行プラットフォームの開発を進めてきた。SBIは今月、デジタル証券サービスの事業計画を発表し、同事業を本格化させる。また、トヨタ自動車はグループ企業を横断して設立した研究ラボが中心となって、セキュリティトークンの活用方法を検討している。

文:佐藤茂
写真:セキュリタイズ共同創業者兼CEOのカルロス・ドミンゴ氏(撮影:CoinDesk Japan)