JPモルガン、日本で電子署名を本格導入──コロナで利用企業が急増

年間約100億ドル(約1兆円)をテクノロジー関連に費やす米銀最大手のJPモルガン・チェースは、法人顧客の口座開設や各種変更等の一部手続きをハンコレス・ペーパーレスにし、電子署名で行なえるサービスを日本で開始した。

JPモルガンは既に電子契約サービスの米ドキュサイン(DocuSign)をパートナーに指名し、欧米を中心に顧客企業が電子署名(e-Signature)で口座の各種手続きができる取り組みを広げている。

新型コロナウイルスの影響で、電子署名サービスを利用するJPモルガンの顧客企業は今年3月頃から急増。現在、利用企業は世界24カ国で12000社を超えた。従来、紙に押印で行なってきた契約文書のやりとりを電子的に行なうことで、顧客と銀行双方にとって時間の短縮や手続きの効率化が見込まれる。

自宅で法人口座の手続き

JPモルガン東京支店のホールセールペイメント本部は9月、グローバルに事業を展開する国内企業向けに電子署名サービスを行う体制を整備。同事業本部がCoinDesk Japanの取材で明らかにした。現時点で、10社程度の国内企業から利用開始に向けた問い合わせがあるという。

たとえば、欧米や東南アジアなどに子会社や支店を持つ企業が、人事異動などで法人口座の契約内容を変更する時、担当者は電子署名サービスを使えば、わざわざオフィスに出社して所定の変更届けに記入・捺印する必要はない。コロナ禍でリモートワークが増えるなか、社員は法人口座の手続きを自宅でデジタルに済ませることが可能になる。

JPモルガンは、香港とシンガポールを中心にアジアでは2019年終わり頃から電子署名の導入を進めてきた。日本においては、送金を除く口座手続きの一部を電子署名で行えるようにする(同ホールセールペイメント本部)。

国内銀行は電子署名を導入するか

デジタル庁の新設を計画するなど、日本では官と民がともにデジタル化・ハンコレス化を急ピッチに進めている。JPモルガンは金融サービスのデジタル化を加速させ、将来的にはグローバル企業がどこの国でもサービスを統一されたデジタルプラットフォームで受けられる体制を整えていく。

また、日本企業による海外事業・企業の買収は、バブル経済が崩壊した1990年代初めから増え続けている。グローバルに運営する企業が増える中、銀行の口座サービスを国内外で統一されたプラットフォーム上で受けられれば、銀行手続きを一元的に管理でき、グループ企業間の透明性を確保することもできる。

一方、JPモルガンが日本で電子署名を広げる上で課題もある。日本企業の多くが国内のメガバンクや地方銀行をメインバンクとして利用している。国内銀行が同様の電子署名サービスの導入を進めなければ、企業は従来の紙とハンコをベースにした口座手続きに依存せざるを得ない。

「欧米はそもそもサインの文化で、電子署名に対する抵抗は少ないだろう。一方、日本、中国、韓国などではハンコの歴史が長い。日本全体がデジタル化の動きを強めているいま、徐々に電子署名を広げていきたい」(同ホールセールペイメント本部)

取材・文:佐藤茂
写真:多田圭佑
(編集部より:日本における電子署名サービスの開始時期を訂正して、記事を更新しました)