SBIとスイス証券取引所、シンガポールでデジタル資産の取引事業──2021年に開始

SBIホールディングスとスイスの証券取引所を運営するSIXグループが手を組み、シンガポールを拠点とするデジタル資産の取引事業を始める。

SBIは8日、子会社のSBIデジタルアセットホールディングスが、SIXグループでデジタル資産の取引サービスを手がけるSIX Digital Exchange(SDX)と合弁会社を設立することに合意したと発表。機関投資家を対象に、デジタル資産の発行と取引、保管サービスを展開し、シンガポールでは2021年に業務を開始する。

SBIはこれまで国内外で、暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産関連企業への投資と独自の事業拡大を進めてきた。欧州のデジタル資産領域で頭角を現すスイスのSIXグループと手を組むことで、SBIはさらにデジタル資産事業の基盤を固めていく。

国内外で仕かけるデジタル資産事業戦略

SBIは、「SDXのサービスはデジタル資産を安全に発行、取引や管理を可能とすることに加えて、既存の有価証券やその他の資産をトークン化することで、今まで取り引きすることができなかった資産の取引を可能にする」と8日付発表文で述べている。

SBIは昨年、欧州でデジタル資産事業を展開するドイツのBoerse Stuttgart Digital Exchange とBoerse Stuttgart Digital Venturesへの出資を行った。2社ともにドイツ第2位の証券取引所を運営するBoerse Stuttgartのグループ会社だ。

今年10月には、日本国内でのデジタル資産の事業戦略を発表。ブロックチェーンを使って発行したデジタル証券「セキュリティトークン(ST)」で資金を調達する「STO」事業の詳細を明らかにした。

国内では、野村ホールディングスや三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループなどが、STの発行基盤の開発を進めてきており、野村は関連会社の「BOOSTRY」を通じてデジタル証券の発行プラットフォーム「ibet」を開発した。SBIはBOOSTRYの株式10%を野村から取得し、業務提携を結んでいる。

「SDXと設立する合弁会社では、デジタル証券や暗号資産などのデジタル資産の機関投資家の需要に応え、SBIとSDXが持つ技術とノウハウを結集して、シンガポールの法制基準に合致したトークンの発行や上場、取引サービスに加え、保管や振替などの総合的な機能の提供していく。デジタル資産の流動性拡大と機関投資家向けのサービス拡大を目指していく」(SBIの発表文)

文:佐藤茂
写真:SBIホールディングス北尾吉孝CEO(撮影:多田圭佑