リブラはディエムへ、DeFi注目高まる、PayPalが売買サービス──2020年の暗号資産・ブロックチェーンニュース【海外編・振り返り】

2020年、世界的な話題となった「ビットコインの半減期」をはじめ、国際的な規制やプロジェクトの中止など大きな影響を及ぼす話題も多くのぼった。日本に比べて新たな試みが次々に実現しているように感じられる外国だが、2020年は暗号資産・ブロックチェーンでどのような動きがあったのだろうか。国内編に続き関連ニュースを振り返る。

1月1日──中国、暗号法施行

中国で「暗号法」が施行され、ブロックチェーン技術および各国の中央銀行が進めているデジタル通貨(CBDC)を発行する土台を作った形だ。国家機密を守る暗号や一般市民の情報に関する暗号など3種類に分類され、中国共産党による国民への統制・規制を行う目的があるとみられる。

2月23日──G20、ステーブルコインのリスクに言及

サウジアラビア・リヤドで開催されたG20(財務省・中央銀行総裁会議)で共同声明が採択され、その中でステーブルコインについてリスク評価と適切な対処が必要だと言及された。また、FATF(金融活動作業部会)が設ける基準を支持すると改めて表明し、暗号資産やCBDCを含め国際的なルールについて足並みを揃えることも強調された。

5月11日──コンセンサス2020、コロナ影響でオンライン開催

米CoinDeskが主催し、毎年世界各国で開催される大規模カンファレンス・Consensus(コンセンサス)が、コロナ禍の影響により2020年はオンラインでの開催となった。

5月12日──ビットコイン半減期

ビットコインが3度目の半減期を迎え、マイニング報酬は1ブロックあたり12.5BTCから6.25BTCとなった(日本時間5月12日午前4時23分)。次回の半減期を迎えるタイミングは84万ブロックで、2024年5月と予想されている。

6月27日──TelegramのICO、有価証券問題で投資家へ返金

2018年にICOを行ったTelegram(テレグラム)は、SEC(米証券取引委員会)より有価証券判定を受けたためプロジェクトを中止し、資金を投資家へ返金することが決まった。5月にプロジェクト中止が発表されてから1ヵ月、その額は12億ドル以上にのぼるという。

7月──FATFが報告書を公表、19法域がFATF基準を未実施

マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は、FATF基準への取り組みについてまとめた報告書を発表し、調査を行った54法域のうち19法域で基準を未実施という結果だった。2021年に2回目のレビューを実施し、暗号資産や交換業者へのガイダンスも発表する予定のため、さらに国際的な規制が強まる可能性もある。

9月15日──NEMがオプトイン開始、ローンチとスナップショットは2021年1月

NEM(ネム)が新通貨XYMを受け取るためのオプトイン手続きを開始した。オプトインの最終日は2021年1月9日。新たなプロジェクトとなるSymbol(シンボル)のローンチおよびスナップショットは2021年1月14日に予定されている。これにより旧チェーンと新チェーンが存在することになるという。

10月5日──ナスダックに暗号資産取引所が初めて上場

香港の暗号資産取引所・Diginex(ディジネックス)が、米ナスダックに上場した。ティッカーはEQOS。暗号資産取引所を持つ企業が上場するのは初めてで、暗号資産を含むデジタル資産の透明性や信頼性の確保につながると期待される。

10月21日──PayPal、暗号資産の売買サービスを開始

米決済サービス大手のPayPal(ペイパル)が、暗号資産の売買サービスを開始した。2021年には、ペイパルに対応している2,600万店舗で暗号資産支払いを可能にするという。

12月1日──イーサリアム2.0、メインネットローンチ

イーサリアム2.0が正式にリリース、最初のブロックとなる「ジェネシスブロック」が生成された。これにより、イーサリアム2.0の要となるビーコンチェーンが稼働し、今後はアップデートの第4段階である「セレニティ」の開発が進められる予定だ。

12月1日──Facebookプロジェクト「Diem」が2021年発行へ

Facebook主導のもと立ち上げられたLibra(リブラ)プロジェクトが、「Diem(ディエム)」へと名称を変更されることになった。2019年6月に発表されたリブラの構想は、複数の法定通貨が裏付け資産となるステーブルコインだった。しかし、金融の安定性にリスクが生じる懸念が広まり、各国の規制当局から反発が相次いだ。これを受け、国際的な規制を順守する内容のディエムへと路線を変更。2021年の発行を目指すという。

12月16日──アダルト動画配信Pornhub、暗号資産決済のみに

大手アダルト配信サービスのPornhubが、顧客からの支払い方法を暗号資産支払いのみにした。背景にあるのは、米ニューヨークタイムズ紙が、未成年者の性行為や女性への暴行など不適切な動画配信を許可していると指摘、クレジットカードのVISA・MastercardがPornhubへのサービスを遮断したことなどと見られる。ビットコインをはじめ十数種類の暗号資産が利用でき、実需面で期待の声も上がった。

12月22日──SECがリップルを提訴

米証券取引委員会(SEC)は、リップルラボ(Ripple Labs)が個人投資家への暗号資産「リップル(XRP)」の販売において連邦証券法に違反したと考えている。12月22日に提出された訴状によると、リップル社はリップル(XRP)を継続的に販売することで、7年間で13億ドル(約1300億円)を個人投資家から調達したと主張されている。

リップル社のブラッド・ガーリングハウスCEOは12月21日、SECが提訴の意向を同社に伝えたことを公表し、ウェルズ・レスポンス(特定の行為が証券法に違反していない理由をSECに説明する文書)を発表した。

2020年──半減期で盛り上がり、DeFiへの注目が高まった

2020年はビットコインをはじめ、モナコインやビットコインキャッシュの半減期を迎えた。

またDeFi(分散型金融)に対する注目が高まったことも2020年の特徴だろう。6月にスマートコントラクト上で暗号資産の貸し借りができるプラットフォーム・CompoundのCOMPトークンが配布された後、ETH(イーサリアム)のガス代が高騰。ETHやERC20トークンの送付に時間がかかりるようになり、手数料も高くなってしまった。分散型取引所のユニスワップ(Uniswap)でも今年1年でマーケット数がうなぎのぼりになった。このところ比較的落ち着きを見せているが、それでも今後もDeFiが注目の的であることは間違いないだろう。

一方、Facebookが主導のプロジェクト・Libraが路線変更を余儀なくされたり、TelegramのGramやTonが頓挫したりといった、残念な出来事も記憶に新しい。

2021年はどうなるのか?

2021年は新たなプロジェクトとしてDiemがスタートし、NEMも数年の時を経て新たなステップへと生まれ変わる。FATFの相互審査の結果公表も控えており、さらに規制が強まる可能性もある。

2020年は暗号資産の価格高騰は、大手金融機関などがポートフォリオに組み込んでいることが一因とされている。つまり大企業にとっても暗号資産は放置できない存在になったわけだ。

こうした中、世界中のスタートアップが日々、新たな技術やプロダクトを生み、発表している。2021年も注目のプロジェクトが誕生するだろう。そうした期待を抱えながら、政府・中央銀行などの規制、ガバナンス強化、コンプライアンスを高める取り組みには注視し続けたい。

文:CoinDesk Japan編集部
編集:濱田 優
画像:Shutterstock.com, CoinDesk archives, Skuratov