トラブルだらけのビットフィネックス㊤取引所発展における功罪

トラブルだらけのビットフィネックス㊤取引所発展における功罪

Brady Dale
公開日:2019年 5月 9日 17:00
更新日:2019年 5月 9日 17:00
  • 仮想通貨取引所のビットフィネックス(Bitfinex)が、 関連会社でステーブルコインを扱うテザー(Tether)が管理する資産を利用して、巨額の損失を隠ぺいした疑いで、米ニューヨーク州司法当局に訴追された。ビットフィネックスの創業の経緯や過去のトラブルについて詳報した2016年8月の記事を、2回に分けて紹介する。

2016年8月、香港に拠点を置くビットコイン取引所、ビットフィネックス(Bitfinex)がハッキングされ、6000万ドル(約66億4000万円)超の盗難にあった。

ビットフィネックスはハッキングされる前は、ドル建てビットコイン取引量において、世界最大のビットコイン取引所だった。ビットコイン価格のボラティリティが低下するのに伴い、証拠金取引市場は成長しつつあり、同取引所は2012年の創業以来、証拠金取引に参加したいと考える顧客を引き付けてきた。

同社は、高い流動性を持つピアツーピア(P2P)証拠金取引プラットフォームを提供することで、トレーダーたちから好評を得つつあった。取引所・トレーダーの専門家によると、この要素がプラットフォームに対する関心と同社ウェブサイトを使用する動機を生み出していた。

ビットコイン取引クラブ「ウェールクラブ(Whale Club)」の管理者BTC VIXは、このイノベーションによって同取引所の評価は大幅に上がったと指摘する。

同氏は以下のようにCoinDeskに語った。

「これは極めて価値のあることでした。ただ、証拠金取引が可能というだけではなく、証拠金取引に参加するための資産を他人に貸し出しても良いと考えている人々が実際に見られたのです」

しかし、プラットフォーム関連の問題が多発したことが批判を呼び、同社はソーシャルメディア上の一部コミュニティーから「バグフィネックス(Bugfinex)」という不名誉なあだ名がつけられた。

また、ビットフィネックスは、ビットコイン中心とした取引コミュニティー、ウェール・クラブで同社の従業員がビットフィネックスのプラットフォームに関する見解を投稿していることでも有名だった。

ビットフィネックスは、取引所という立ち位置を超えて、ビットコイン取引市場の発展における中心的立場となった。同取引所は、この領域の最も優れた側面と最も問題的な側面のどちらをも体現していると言えるかもしれない。

しかし、この成功は今瀬戸際に置かれている。

2016年8月、同社はハッキングに遭い、12万BTC近くを失った。この事件の対処にあたり、同社は、法律、および規制面において未知の領域に突入することとなった。

同社は、事業を継続するためにユーザーの資産の36%を強制的に徴収し、将来の売り上げに紐付いたトークンを発行するという新しい計画を講じたが、産業内では疑問視する声が上がっている

奇妙な始まり

ビットフィネックスの歴史はビットコイニカ(Bitcoinica)と呼ばれる、あまり知名度が高くない取引所から始まった。

ビットフィネックスのプラットフォームは、ビットコイニカのソースコードをベースとして使っており、ビットフィネックスは事実上ビットコイニカの生まれ変わりと言えるだろう。ビットコイニカの閉鎖から、1年も経たずにビットフィネックスは開業した。

2011年後半にローンチしたビットコイニカは、ユーザーに証拠金取引などを提供し、複雑な取引に対応したプラットフォームとして、自社のポジションを確立しようとしていた。

しかし、創業から1年経たないうちに同社は盗難に遭い、4万3000BTC(20万ドル相当)超を失った。アーズ・テクニカ(Ars Techinaによると、盗まれたBTCの大半はビットコイニカのプラットフォームそのものが保管していたもの。また、一部のユーザーも少額を失ったとされている。

しかし、盗難はそこで終わらなかった。

数週間後、第2の盗難事件が発生し、1万8000BTC(約9万ドル)以上が失われた。その後、同取引所はオフラインにされ、創業者のチョウ・トン(Zhou Tong)氏が事件裏にいるのではないかという声が飛び交い始めた。

最終的に、同取引所の閉鎖は民事訴訟に発展した。

ビットフィネックスの取引所としての初期の活動は、注文控元帳を作り上げることだったコミュニティ内のトレーダーたちは語る。実質的に、ビットコイン取引所ビットスタンプ(Bitstamp)から流動性を吸い上げる動きだった。

その後、同取引所はコードを改変していった。バックエンドインフラストラクチャにアルファポイント(AlphaPoint)の取引所ソリューションを使用することを検討したこともあったが、この計画は初期テストの段階でとん挫した。

ビットフィネックスの概要

ビットフィネックスは、オフラインになる前、仮想通貨と法定通貨を交換する取引サービスを提供していた。同取引所では、ビットコインと米ドルの取引が中心となっていたが、ライトコイン、イーサリアム、そしてイーサリアム・クラシックなどその他の仮想通貨も後に追加された。

ユーザーは入金した資産でこれらの通貨ペアを取引するか、他のユーザーから資金をP2Pで借りて、取引に参加することができる。

この情報は公開されているが、同社の所在そのものは世間にはっきりと示されていたとは言い難い。

同社のサービス規約によると、ビットフィネックスは、香港にビットフィネックス、そしてアメリカにBFXNAを子会社として持つアイフィネックス・インク(iFinex Inc)の名でイギリス領バージン諸島に登記されている。

ビジネス向け交流サイト、リンクトイン(LinkedIn)のデータは、ビットフィネックスのチームメンバーが世界各地に散らばっていることを示す。創業者のラファエル・ニコル(Raphael Nicolle)氏はフランス在住、コミュニティー・商品開発のディレクターであるゼイン・タケット(Zane Tackett)氏はサンフランシスコ在住だ。

カリフォルニア地域に身を置く幹部や関係者は他にもいる。オレンジカウンティに在住する、アプリケーションのディレクターのドリュー・サムセン(Drew Samsen)氏や過去にアドバイザーを務めたクレイグ・セラーズ(Craig Sellars)氏などだ。

幹部はその他の地域にも散らばっており、最高戦略責任者(CSO)のフィル・ポッター(Phil Potter)氏はニューヨーク、インフラのディレクター、アダム・チェイムリー(Adam Chamely)氏はアトランタに在住している。

また、同社は仮想通貨エコシステム内のその他の企業にも投資を始めている。投資先には、2015年9月に160万ドルの資金調達に成功した仮想通貨取引所、シェイプシフト(ShapeShift)や2016年7月に350万ドル調達した、身分証明に焦点を置くスタートアップ、ネットキ(Netki)などが名を連ねる。

<下に続く>

翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Wilting Bitfinex logo via cryptograffiti 
原文:Bitfinex Examined: Inside the Troubled Bitcoin Exchange’s History