ビットコインはバブルではない【オピニオン】

ビットコインは「バブル」と言うコメンテーターやアナリストは、その言葉の意味を理解していない。

ビットコインが洗練さと子供のような不思議さを呼び起こし、こんなにも楽しいコンセプトが金融的にこれほど重要な言葉になるとは。

バンク・オブ・アメリカの主任投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット(Michael Hartnett)氏は先日、ビットコイン(BTC)は「すべてのバブルの母」のようだと指摘した。

ハートネット氏は、ビットコイン価格の上昇の力強さとスピードをその分析の根拠としているようだ。まるでそれが、バブルの主な特徴であるかのように。だが、間違っている。

間違っているのは投資会社マン・グループ(Man Group)も同じで、ブルームバーグが引用した記事で次のように述べた。

「一つのビットコインバブルが崩壊すると、また次のバブルが発生して取って代わる。(中略)この頻度こそが、過去の大きなバブルと、ビットコインを違うものにしている特徴だ」

マン・グループはビットコインを「変わったもの」と認識している分だけ、不愉快さは小さい。しかし同様に、ビットコインはバブルと考えているようだ。やはり、間違っているだろう。

言葉は重要

理由を理解するために、金融系の辞書を見てみよう。 

インベストペディア(Investopedia):「バブルの間、資産は一般的にその内在的価値をはるかに超える価格、あるいは価格帯で取引される(価格は資産のファンダメンタルズと一致しない)」

ナスダック(Nasdaq):「資産価格が、その資産の基礎的価値をはるかに超えるレベルに高騰することを特徴とする市場現象」

ウィキペディア(Wikipedia):「資産価格がありそうもない、あるいは一貫性のない将来についての見解に基づいているような状況。資産の内在的価値をはるかに超える価格、あるいは価格帯で(取引される資産)表すこともできる」

共通項がわかるだろうか? 価格上昇が本質的価値、あるいは根本的価値と無関係な時、資産はバブル状態にある。

ビットコインの本質的価値は何だろうか?

答えはまだ誰も分からない。需要とともに進化している、まだ若いテクノロジーだ。このテクノロジーの未来のユースケースは依然として不透明で、金融エコシステムにおけるポジションも同様だ。

ビットコインの投資におけるユニークな特徴や、見慣れない指標は、伝統的な価値評価テクニックを当てはめることを不可能にしている。多くの人はその根本的価値について意見を持っている。だが、すぐにそれらが不確かな理論や立証されていないロジックに基づいていることがわかる。

ビットコインは「バブル」と語る人たちは、その本質的価値に判断を下している。しかし、そういった人たちは、判断のもととなる試算や数字をまったく明らかにしていない(少なくとも、私は見ていない)。

社会的コンセプト

アナリストやコメンテーターは、「バブル」という言葉を社会的な意味で使っているのだろうか?

経済学者のロバート・シラー(Robert Schiller)氏は、投機的バブルを「値動きが媒介する社会的伝染病」と定義している。

ツイッターやユーチューブのユーザーなら納得できるだろう。だがシラー氏は(今の状況には、不幸な表現だが)「伝染病」と定義しており、つまりは主流層である多くの一般の人の参加が不可欠と定義している。ビットコイン至上主義者やアルトコイン愛好者による騒ぎは、主流層からはほど遠い。

AQRキャピタル・マネジメントの共同創業者、クリフ・アスネス(Cliff Asness)氏は理解している。CFAインスティチュート向けに書かれた2014年のレポートの中でアスネス氏は次のように述べた。

「『バブル』という言葉は、仮にあなたが市場の優れたファンでなくても(もしそうなら、風呂場の外では決して発するべき言葉ではないが)あまりにも使われ過ぎている」

さらにアスネス氏は次のように書いている。

「ある状況がバブルかどうかは、決して客観的に判断できない。なぜなら、事前にも、そして事後にすら常に意見の不一致がある。しかし意味としては、バブルという言葉は、将来の合理的な結果が正当化できない価格を意味するべきだ」

根本的・本質的価値

ポートフォリオの一部をビットコインに当てているプロ投資家の大部分は、通貨価値の低下に備えることが目的だが、そのシナリオはますます非合理的に思える。それに、どうやって価格を設定するのだろうか?

原資産となる通貨と一緒に価値が下がらず、弱い経済の影響を受けず、選べれた数少ない強者に利益をもたらすために利用されないモノの「根本的価値」とは何だろうか?

監査可能、変更不可能で、検閲耐性を持ち、情報の共有を可能にするテクノロジーの「本質的価値」とは何だろうか?

これらすべてを具現化し、決済イノベーションや差し押さえに対抗できる新しい価値の保存手段としても使える暗号トークンに、どのようにして基準価格を設定できるのだろうか?

ビットコインがバブルであるためには、その値動きが潜在的価値と無関係でなければならない。

コロナ禍で需要が低迷している中、ドルの世界的な供給量が驚異的に増加していることや、経済刺激策によってコントロールが困難なインフレが発生する可能性が高いことを考慮すると、その後の経済的カオスを相殺する可能性を秘めたビットコインの潜在的価値は急速に高まっていると言えるだろう。

ビットコインの値動きは、潜在的価値に追いつきつつあると言えるかもしれない。

アンチ・バブル

ビットコインはアンチ・バブルで、経済の他の場所でのバブルによってその価格が上がっているとも言えるだろう。多くの投資家は、彼らが大規模な国債バブルと捉えているものに反応してビットコインを買っている。国債バブルは、政府が紙幣増刷によってしぼませようとするだろうと投資家は考えている。

株式については、大手IT企業の素晴らしい市場評価はその大部分が、債券バブルが崩壊すれば急速に上がる可能性のある低金利に依存している。そうした事態は、ビットコインのような「代替物」をさらに魅力的にするだろう。

ビットコインのアンチ・バブルな性質を理解するには、紙幣を増刷しない中央政府や、バランスの取れた財政を維持する政府、現代貨幣理論(MMT)や経済的抑圧などの恐れがないとしたら、ビットコインの「潜在的価値」は何かを想像してみて欲しい。

このシナリオでは、需要や価格は現在よりもずっと低いものになるだろう。

つまり、ビットコインはバブルと批判する前に、またビットコインの現在の価格が、ますます不透明感を増す世界における潜在的有用性をまったく反映していないと結論づける前に、ビットコインの有用性の原動力がどこに向かっているかを考えてみよう。

ビットコイン価格は下落しないと言っているわけではない。下落するかもしれないし、もし下落した場合は、急激に下落するかもしれない。その可能性は投資家ひとりひとりが判断するものだ。

だが、単に最近の値動きだけを検討すれば良いわけではない。大きなリターンが自動的に「バブル」を決めるわけではない。バブルは価格ではなく、価値と価格の関係だ。

言葉は重要だ。重要な言葉が新しいコンセプトを不正確に伝えていないとしても、未来は十分に複雑だ。

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Long & Short: No, Bitcoin Is Not in a Bubble