「JPYCを活用した新しいサービスを作る人が儲かります」とJPYCの岡部氏──double jump.tokyoとBifrost、JPYCを活用したDeFiレンディングの企業向け提供へ

今日10月27日、いよいよ円建てステーブルコイン「JPYC」の発行が始まる。国内初の円建てステーブルコインの登場で、関連サービスも続々と登場しそうだ。

double jump.tokyoは10月23日、Bifrostが提供するBTCFiプラットフォーム「BTCFi Boost」と提携し、JPYCを活用したDeFiレンディング技術を企業向けに提供するための取り組みを開始したと発表した。

同社が提供する企業向けウォレットサービス「N Suite」の分散管理型ウォレット機能と承認ワークフローを活用し、企業が制度面でも整合性の取れた形でステーブルコインを活用できる環境の実現を目指すという。

ステーブルコイン・トレジャリー戦略

デジタル資産、主にはビットコイン(BTC)を保有し、資産効率はもちろん、企業価値の向上を図るビットコイントレジャリー戦略、広くはデジタル資産トレジャリー(DAT:Digital Asset Treasury)戦略が日本でも拡大している。

グローバルでは米ストラテジーがパイオニアであり、日本ではメタプラネットが先陣を切った。購入対象となる暗号資産もビットコインのみならず、イーサ(ETH)、ソラナ(SOL)、ビルドアンドビルド(BNB)といった主要銘柄に及んでいる。

保有する暗号資産の価格上昇、あるいは上昇期待を背景に株価上昇を図り、上昇した株価をもとに積極的な資金調達を行って、さらに暗号資産を購入する──。暗号資産の価格上昇と株価上昇、資金調達が連動する「順回転」の好循環を狙う動きは、大きな成果が期待できるものの、暗号資産はボラティリティが大きく、リスクが伴う。

対照的に、円建てステーブルコイン「JPYC」は、法律で裏付け資産が厳しく規制され、1JPYC=1円を維持するようになっている。リリースでは「日本円と同じ価値を持つように設計されているため安定的な価値を持ち、企業がブロックチェーン技術を利用しながらも会計・監査面での整合性を取りやすいデジタル資産として注目を集めています」と述べられている。

つまり、今回の取り組みは、ボラティリティの大きな暗号資産ではなく、JPYCを活用した「トレジャリー戦略および資産管理の新たなモデルを構築するための基盤を形成するもの」という。

JPYCではないが、資産の大部分をステーブルコインに換えて運用する「ステーブルコイン・トレジャリー戦略」を実践している企業がある。Web3支援のPacific Meta(パシフィックメタ)は9月、資産の8割をステーブルコインで運用し、9%の利回りを得ていると明かした。

関連記事:会社資産の8割をステーブルコイン運用、「9%で回している」と明かす:パシフィックメタ

DeFi、ウォレットは次の課題

JPYC代表取締役の岡部典孝氏も、JPYCのユースケースとして、JPYCを活用した資産運用を例にあげている。低金利の日本円あるいはJPYC単体では高い利回りは期待しづらいが、「JPYCを借りて、米ドル建てステーブルコインに換え、高金利の米ドルから利回りを得る」、いわゆるアービトラージ取引には、海外のファミリーオフィスなどからの期待が寄せられているという。

double jump.tokyoとBifrostの取り組みは、JPYCをDeFiレンディングプロトコルで活用しようというものだ。BifrostのBTCFi Boostは、リリースによると「ビットコインを担保として預け入れる企業や機関向けの、ビットコインベースの利回り提供プラットフォーム」で、その仕組みを応用する。

double jump.tokyoが提供する “ウォレット”、Bifrostが提供する “DeFiサービス”は、円建てステーブルコインが登場し、2026年には総合課税から分離課税への税制改正が期待される日本の暗号資産業界にとって、次の課題と考えられている。

DeFi利用については、日本だけでなく、グローバルでも規制が明確になっていないが、2021年の「DeFiの夏」の後に急落したDeFi市場は2024年以降、回復基調にあり、TVL(Total Value Locked、預かり資産)は約1500億ドルとなっている。

岡部氏もJPYCを活用したサービスに期待し、「JPYCを買っても儲かりません。JPYCを活用した新しいサービスを作る人が儲かります」とXに投稿している。

double jump.tokyoとBifrostが見据えるサービスは、JPYCを活用した企業向けサービスの試金石となるかもしれない。ビットコインなどの暗号資産には手を出しづらいが、ステーブルコインならばトレジャリー戦略での活用が行いやすいと考える企業は少なくないだろう。

JPYCの登場が日本企業にどのような影響を与えるのか、注目される。

|文:増田隆幸
|画像:リリースより

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