“金利のインバウンド”が集まるか──Secured Finance、JPYCを活用したプロダクト群を発表

金利の低い日本円を求めて、世界中から投資家が集まるかもしれない。観光地を訪れるインバウンドの資金版──いわば「金利のインバウンド」だ。

DeFi(分散型金融)の固定レンディングプロトコルを手がけるSecured Financeは10月28日、日本円ステーブルコイン「JPYC」の発行開始にあわせて、複数の新プロダクトを発表した。リリースでは主な取り組みとして、以下の5つがあげられている。

  • JPYC固定金利レンディング
  • WBTC/ETH担保によるJPYC借入 — 将来的なRWA担保への拡張
  • JPYC Yearn Vault v3 連携
  • オンチェーン円金利ベンチマークの構築
  • JPYC x402 Facilitator

同社は、これらの取り組みの目的を「日本円市場の金利構造をオンチェーン上に再現し、世界中の投資家が日本円金利にアクセスできる分散型インフラを構築すること」と述べている。よりわかりやすく言えば、世界中の投資家がブロックチェーン上でJPYC、つまり日本円を貸し借りできる環境をつくることだ。

日本円を借りる意味とは

具体的に何が可能になるのか、どういう世界が実現するのかを整理してみよう。

取り組みのベースとなるのが、1つ目の取り組みである「固定金利レンディング」、すなわちJPYC建ての固定金利レンディング市場の提供と、2つめの取り組みである「WBTC/ETH担保によるJPYC借入」だ。

まず、固定金利レンディング市場に資金=JPYCを提供する貸し手は、安定した利回りを得ることができる。一方、借り手はグローバルで見れば「圧倒的に低い」固定金利で資金を調達できる。

初期段階では、WBTC(ラップドビットコイン:ビットコインと1対1で交換可能なイーサリアム上のトークン)およびETH(イーサリアム)を担保にJPYCを借り入れることが可能だ。

つまり、BTCやETHの保有者は、保有資産を売却することなく、それをレンディング市場の担保とすることでJPYCを借りることができる。

円を借りてドルで運用──キャリートレードがオンチェーンで可能に

JPYC=日本円を借りてどうするのか? DEX(分散型取引所)などでドル建てステーブルコインのUSDCやUSDTに変えれば、例えば、米国債をオンチェーン化した「トークン化MMF」に投資し、ドルの利回りを得ることができる。

現在、日本の短期金利は0.25%前後、1年物米国債の利回りは約4.4%で、およそ4%の金利差がある。日本は低金利、米国は高金利であり、この日米の金利差を利用した「円キャリトレード」がブロックチェーン上で可能になる。

つまり、BTCやETHの保有者は、長期保有をベースとした値上がり益を期待しながら、資産を売らずに活用できる。単に「寝かせておく」だけでなく、キャリートレードによる利回りを同時に得ることが可能になる。もちろん、BTCやETHの価格下落によって、追加の担保が求められるリスクや為替リスクなどを考慮しなければならない。

だが従来、取引単位の大きさや信用力の観点から、機関投資家やヘッジファンドなどに閉じられていたキャリートレードが、円ステーブルコイン「JPYC」とSecured Financeによって、誰でも参加可能なオンチェーン市場に開かれようとしている。

その結果、低金利の日本円を求めて、世界中から投資家が殺到し、「金利のインバウンド」とも言える現象が起きるかもしれない。

事実、JPYC代表取締役の岡部典孝氏も、JPYCのユースケースとして「海外のファミリーオフィスからの需要」に触れている。また、Secured Finance創業者兼CEOの菊池マサカズ氏は「日本円を借りたい投資家は世界には大勢いる」とCoinDesk JAPANに語っていた。

〈「N.Avenue club」に登壇したSecured Financeの菊池氏、撮影:多田圭佑〉

JPYCを借りるための担保は、当初はWBTCおよびETHだが、将来的にはRWAトークンなどにも拡張するという。

AI取引への拡張

5つの取り組みのうち、ここでもう1つ、注目したいのが5つ目の「JPYC x402 Facilitator」だ。

リリースには「Coinbaseが提唱するx402プロトコル(EIP-3009対応)を通じて、コードベースでのJPYC自動決済を実現します」とある。コードベース、つまりはスマートコントラクトやAIエージェントが、自動的にJPYCを使った取引を実行できるようにするということだ。

JPYCの岡部氏も、JPYCのユースケースとして「AIエージェントによる取引」について語っていた。

〈27日、記者会見に望むJPYCの岡部氏、撮影:CoinDesk JAPAN)

Secured Financeはリリースでさらに「a16z『State of Crypto 2025』レポートによれば、自律エージェント決済市場は2030年までに30兆ドル規模に達すると予測されており、この技術がWeb2/Web3のeコマースとマシンエコノミー双方を変革する可能性が示されています」と述べている。

円ステーブルコイン「JPYC」と、DeFiプロトコル「Secured Finance」が組み合わさることで、何が起きるのか。ステーブルコインのユースケース、さらにはDeFiは、多くの人にとっては、馴染みの薄い世界で、理解も難しいかもしれない。

岡部氏はJPYCの発行について、発行当日の記者会見で「日本の通貨史に残る大きな分岐点」と語った。そこにDeFiが組み合わさることで、日本円のグローバルでの存在感が高まる可能性がある。

Secured Financeの菊池氏は「日本円は国内通貨にとどまらず、世界の金利ベンチマークです。JPYCのエコシステムを活用することで、日本円金利カーブをオンチェーン化し、実世界の金融市場とDeFiをつなぐ新しいインフラを構築していきます」と述べている。

日本円は、ブロックチェーン上で新しい形の資金調達手段として注目を集めるかもしれない。

|文:増田隆幸
|画像:リリースより

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