- 日本は、アジアで初めての円建てステーブルコインを発行し、自国通貨である日本円の高い交換性を活かしてDeFi(分散型金融)の機会を広げようとしている。
- 日本銀行の低金利政策によって、日本円は依然として魅力的な資金調達通貨になっており、仮に今後、利上げがあってもその地位は簡単には揺るがない。
韓国ウォンや台湾ドルは、1997年のアジア通貨危機後に導入された資本規制によって国外に持ち出すことは難しい。
対照的に、日本円は自由に流通する。この高い交換性こそが、日本円をステーブルコインに最適な通貨にしている。低金利の日本円をDeFi(分散型金融)に持ち込み、ドル建て資産で高利回りを追求できるからだ。
10月27日に円建てステーブルコイン「JPYC」が発行されたことで、日本にはアジア初の真にグローバルな法定通貨連動型ステーブルコインが登場した。JPYCは、円の高い交換性によって、海外市場でも流通が可能だ。

DeFiの資金源
JPYCの登場で、低金利の日本円がDeFiの新たな資金源となる可能性がある。投資家は、円建てステーブルコインを低コストで借り入れ、ドル建て資産で高利回りを追求できる。
つまり、世界の金融市場で長年行われてきた「円キャリートレード」が、ブロックチェーン上でも可能になった。DeFiの利回りが、日銀の金融政策と直接結びつくことになる。
日銀が金利を2008年以来の高水準となる0.5%に据え置いているとはいえ、世界の主要国と比べれば依然として超低金利だ。仮に今後、日銀が利上げを進めても、オンチェーンの利回りは日本の金融市場の水準をはるかに上回っている。

DeFiLlamaのデータを見ると、Maple、Lista、Stream Financeなどは、年率6〜14%のリターンを提示しており、日本の1%以下の金利と比べると圧倒的だ。仮にJPYCを0.75%で借り入れたとしても、ドル建て資産への交換やUSDC Syrup、BNSOLといったDeFiプールへの預け入れで十分な金利差を確保できる。
だが、現時点ではこれは仮定に過ぎない。JPYCには1日あたり100万円(約6500ドル)の発行上限があり、市場を動かす規模には程遠い。
これは、デジタルマネーであっても、日本の慎重な金融構造から逃れられないことを示しているかもしれない。規制当局の慎重さはコードにも組み込まれており、「オンチェーン・キャリートレード」は新しくとも、日本の慎重さは変わっていない。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:CoinDesk
|原文:Asia Morning Briefing: What’s the Real Use for a Yen Stablecoin? An Onchain Carry Trade


