- USDCを発行する米サークルは、ブラックロック、ビザ、HSBCなど100社を超える金融機関、テック企業の参加のもと、独自ブロックチェーン「Arc」のパブリックテストネットを稼働させた。
- Arcは、米ドル建ての手数料、1秒未満の決済などの機能を備え、金融取引をオンチェーン化することを目指す。
- 最終的にはArcの分散化を進め、ガバナンスやバリデーター参加を開放する方針だ。
米ドル建てステーブルコイン「USDC」を発行するCircle(サークル)は、決済に特化した独自ブロックチェーン「Arc」のローンチを控え、金融機関の参加によるテストフェーズを開始した。
同社は米国時間10月28日、Arcのパブリックテストネット版を稼働されたと発表。Visa、HSBC、BlackRock(ブラックロック)、Anthropic(アンソロピック)など、すでに参加している100社以上の金融機関、資産運用会社、テック企業がアクセス可能となった。
「これらの企業は合わせて数十億のユーザーを抱え、数百兆ドルの資産や決済を移動・交換・カストディし、アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、中東など世界各地の地域経済を支えている」と、サークルのジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)CEOは述べた。
ステーブルコインは、TradFi(伝統的金融)に急速に組み込まれつつある。一方で、大手銀行や資産運用会社も、債券、ファンド、融資などの金融商品をブロックチェーン上で取り扱う「RWA(現実資産)のトークン化」を進めている。
ステーブルコインとRWAトークン化は巨大市場に成長すると見られている。Citi(シティ)は、ステーブルコイン市場は2030年までに4兆ドルに達すると予測しており、BCG(ボストンコンサルティンググループ)とRipple(リップル)は、トークン化資産は2033年までに約19兆ドルに拡大すると見ている。
金融機関、テック企業などが参加
サークルによると、Arcはトークン化ファンドから国際送金、外国為替(FX)決済まで、金融サービスの基盤レイヤーとして機能することを目的としている。米ドル建ての手数料、1秒未満の決済、プライバシー制御などの機能を備え、USDCおよび同社の決済プラットフォームと密接に統合される。
Arcのテストには、State Street(ステート・ストリート)、Deutsche Bank(ドイツ銀行)、Invesco(インベスコ)、Société Générale(ソシエテ・ジェネラル)といった伝統的金融大手のみならず、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)などの暗号資産企業、さらにはフィンテック企業、AWSやMastercard(マスターカード)といったグローバルテック企業も参加している。
例えば、Visa(ビザ)は、テストネットを使って、ステーブルコインを基盤とした決済インフラが国際送金をどこまで高速化できるかを評価している。ブラックロックのデジタル資産責任者ロバート・ミチニック(Robert Mitchnick)氏は、Arcのステーブルコイン決済およびオンチェーン外側為替機能が、資本市場に「新たなユーティリティをもたらす」可能性を調査していると述べた。
日本から参加しているSBIホールディングスは、規制下にある金融サービスをオンチェーン環境に拡張できるかどうかを評価している。
AIアシスタント「Claude」を開発するアンソロピックも、AIを活用した開発者ツールをArcに統合する計画だ。複数地域のステーブルコイン発行者もテストネットに参加している。
サークルは、Arcの長期的な目標として、分散型でコミュニティ主導のシステムへの進化を掲げている。初期段階では同社が主導するものの、その後はバリデーター参加の開放や開発のためのパブリックガバナンスの枠組みを構築するとしている。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:サークルのジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)CEO(HK Fintech Week)
|原文:Circle, Issuer of USDC, Starts Testing Arc Blockchain With Big Institutions Onboard


