イーサリアム(ETH)価格推移 過去の値動きと今後の予想

イーサリアム(ETH)は、ビットコインに次ぐ時価総額を誇る仮想通貨だ。ビットコインを除く仮想通貨を指す「アルトコイン」の筆頭格であり、スマートコントラクトなどビットコインには実装されていないさまざまな技術を備えており、実用的な側面での評価も非常に高い。

仮想通貨の多くはビットコインの価格変動に大きく揺さぶられ、イーサリアムも例外ではないものの、イーサリアム関連のニュースやトピックスによりイーサリアムが独歩高になったり独歩安になったりすることは頻繁に起きる。

そのため、イーサリアムの価格の過去の値動きを分析する際や今後の価格推移を予想するときには、多くのイーサリアムに関する情報にアクセスし、理解する必要がある。

この記事ではイーサリアムの基礎知識のほか、過去の値動きを期間ごとに区切って細かく分析しながら、イーサリアムを取り巻く現在の状況や今後の動きの見方について説明していく。

イーサリアムの価格推移と今後の予想

出典:CoinMarketCap

イーサリアムは2015年7月から取引が開始されている。上記のチャートは、その当時から2023年8月までの価格の推移を示しているものだ。2024年2月時点では42万8,600円ほどで推移している。

過去から現在までのチャートを俯瞰してみると、過去2度のピークがイーサリアムに訪れていることが分かる。2018年1月と2021年11月だ。2018年1月は1ETH=15万円前後、2021年11月は1ETH=50万円を突破している。2024年2月時点では、過去最高値にかなり迫ってきた。

イーサリアムの過去の値動きの傾向や今後の推移を分析・予想する際、このようにチャートに目を向けるのは非常に重要なことではあるが、それよりはるかに重視すべきは、イーサリアムの値動きの背景を的確に理解することだ。

この記事ではイーサリアムに関する重要トピックスを紹介しながら、その当時、イーサリアムがどのような値動きをしたのか細かく解説していく。

  • 2016年 TheDAO事件
  • 2017年 バブル状態
  • 2018年 バブル崩壊
  • 2020年 コロナショック
  • 2021年 史上最高価格更新
  • 2022年 仮想通貨市場全体の下落
  • 2023年 新たなピークに向けての回復期に

2016年 TheDAO事件

Coinmarketcapより引用

2016年は仮想通貨の知名度が上昇する前の年であり、年初から順調に価格が上昇を続け3月には約1,600円を記録。しかし、この年はイーサリアムにとって歴史的な出来事であるTheDAO事件が発生している。TheDAOはイーサリアム上にトークンを発行し、ICOを行ったところ6月にハッキングされ、約360万ETH(約52億円)が盗まれる事態となった。

送金してから一定期間の間は資金を使用できないことから、ハードフォークにより送金記録を取り消すことで問題を解決した。これに納得しなかった人々により、イーサリアムクラシック(ETC)が生まれている。TheDAO事件はTheDAOのシステムに欠陥があったことが原因であることや、資金が盗まれたという事実を無くす対応を取ったことから、以降の年末までの価格は大きく下落することなく横ばいに変動した。

2017年 バブル状態

Coinmarketcapより引用

2017年は、仮想通貨元年と呼ばれ、ビットコインを始めとする多くの仮想通貨が急激に値上がりした年である。イーサリアムも例に漏れず、なんと2018年の1月には18万円以上にまで価格が高騰した。

2018年 バブル崩壊

Coinmarketcapより引用

2017年にはバブル状態にあったイーサリアムだが、2018年にバブルがはじけ、大暴落に陥る。2018年には、イーサリアムの価格は1万円代にまで落ち込んでいる。この年は、G20サミットにて仮想通貨規制に関する議論が繰り広げられるなど、仮想通貨が世界的に大きな注目を集めた年であった。

 2020年 コロナショック

Coinmarketcapより引用

2020年には、さまざまなDeFiサービスが注目を集め、基盤として使われているイーサリアムの人気も高まった。しかし、グローバルな疾病面と経済面の複合危機である「コロナショック」により、爆発的な値上がりは起こらなかった。

2021年 史上最高価格更新

Coinmarketcapより引用

2021年には、イーサリアムが史上最高価格を更新した。具体的には、53万円台にまで高騰したのだから驚きである。しかし、5月末に大手電気自動車テスラがビットコイン決済を停止したり、中国政府が仮想通貨への取り締まりを厳しくしたりといった要因から一度価格が下落している。

2022年 暗号資産の冬

2022年の仮想通貨市場は冷え込みを見せ、この1年間は「暗号資産の冬」と評されている。世界金融は年明けからロシアによるウクライナ侵攻で不安定となり、アメリカの政策金利の上昇で市場は冷え込んだ。仮想通貨業界にスポットを当てれば、アメリカの大手仮想通貨取引所の出金停止問題のほか、5月のTerra(LUNA)の崩壊「テラショック」が起き、さらに6月には「セルシウスショック」が畳み掛けた。

これらによって仮想通貨全体の価格が暴落し、もちろんイーサリアムも例外ではなかった。2022年の初頭は42万円台だった価格は、6月には一時13万円台を割り込むまで落ち込んだ。

その後、徐々に復調を見せ、8月には約26万円にまで回復した。イーサリアムはアップデート前後の時期に価格上昇が起きやすく、9月にアップデート「The Merge」を控えていたため、その期待感が価格に表れたかたちだ。

だが、14日のアップデート実施後は価格が下落し、20万円台を切った。これは期待感を先取りした「買い」から価格は上昇したものの、実施後、いわゆる「事実売り」が発生したということだ。その後も低調が続き、仮想通貨業界は雪解けの気配を見せないまま、2023年を迎えた。

2023年 新たなピークに向けての回復期に

出典:CoinMarketCap

上記は、イーサリアムの2023年1〜12月の価格の推移だ。まずチャートの分析から行っていこう。

2023年の年初、イーサリアムは1ETH=15万円台で推移していた。その後、1月の1カ月間で1ETH=20万円まで回復し、その後、上下動を繰り返しながら右肩上がりで価格が上昇していく気配を見せ続けた。

3月中旬と6月中旬に大きめの下落に見舞われたものの、その後、下落分をすぐに回復している。ただし、8月中旬にイーサリアムの価格は大きく下落し、1年間を通じて価格の上昇基調が続くか正念場を迎えた状況となっている。この正念場に耐えれば、イーサリアムは新たな価格のピークへ向けて長い上昇期に入る可能性が高そうに見える。

では続いて、イーサリアムの値動きの背景について説明していこう。まず年初からの値上がりについてだが、この値動きはイーサリアムに限ったものではなく、仮想通貨マーケット全体で価格の上昇が顕著だった。その理由は、金融引き締めを続けてきた米連邦準備理事会(FRB)が早期の利下げによって金融緩和に転じるのではないか、といった観測が広がったことにある

金融緩和のムードが広がると、株式市場や仮想通貨市場は「リスクオン」となる。リスクオンとは、投資家がリスクよりもリターンを重視して積極的に投資を行う状況のことを指す。基本的に仮想通貨は「リスク資産」(※リスクが高いがリターンに対する期待も高い資産のこと)と位置づけられているため、イーサリアムにも投資家の資産が向かう形となった。

その後、2023年4月にイーサリアムは28万円台まで回復する。この値動きの背景には、イーサリアムの大型アップデート「Shanghai-Capella」(通称:上海アップデート)が完了し、仮想通貨投資家がこのことを好感したことがある。この上海アップデートでは、ステーキングされていたETHの引き出しが可能になり、大きめの「売り」が相次ぐことでイーサリアムの値崩れが懸念されていたが、実際にはそうした事態にはならなかったことを投資家はポジティブ要素として受け止めた。

イーサリアムは2023年8月、ほかの仮想通貨とともに大きな下落に見舞われた。その理由は、FRBが金融引き締めを長期化させるという観測が広まり、「リスクオフ」のムードが仮想通貨マーケットでも広がったためだ。リスクオフのムードが広がるとリスク資産から資金を引き揚げる投資家が増えるため、イーサリアムも価格の下落を余儀なくされた。

その後、イーサリアムは2023年11月、一時価格を大きく上昇させた。米資産運用大手であるブラックロック社が、イーサリアムの現物ETFの上場申請を米証券取引委員会(SEC)に対して行うというニュースが伝わったことが主な理由だ。

イーサリアムの現物ETFが承認されるかは不透明だが、もし上場が認可された場合、仮想通貨の口座を保有していない人もETFへの投資でイーサリアムに間接投資できることになる。ちなみに上場が認可された場合、ナスダック市場に上場する予定となっている。

ブラックロックはこれまでにビットコインの現物ETFの上場申請も行っており、仮想通貨の代表格とも言えるビットコインとイーサリアムの現物ETFが認可されるか、今後も注目だ。

イーサリアムの将来性を左右するポイント

イーサリアムの将来性を左右するポイントは、以下の4つだと考えられる。

  • スケーラビリティ問題を解決できるか
  • 仮想通貨の普及・実用化が進むか
  • DeFiやNFTのサービスが普及するか
  • イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるか

それぞれについて、詳しくご説明しよう。

スケーラビリティ問題を解決できるか

スケーラビリティ問題とは、ネットワークの利用負荷が増大することで発生する問題であり、イーサリアムにおけるスケーラビリティ問題は、利用者の増加による処理速度の遅延と手数料の増加だ。イーサリアムが普及して利用が増えるほど問題が大きくなるため、スケーラビリティ問題を解決できるかどうかがイーサリアムの将来を決めるといっても過言ではない。

解決策として期待されている方法には、ブロックチェーンの外に新たなネットワークを構築し、取引を効率化させるライデンネットワーク、イーサリアムを補完する形で新たにブロックチェーンを形成するセカンドレイヤー・ソリューションのPolygon(MATIC)が挙げられる。

仮想通貨の普及・実用化が進むか

サトシ・ナカモトによって論文が発表され、2009年1月に世界初の仮想通貨であるビットコインが誕生した。その後、さまざまなアルトコインが誕生し、仮想通貨に関心を寄せる人や実際に仮想通貨を保有する人は増えていると言えるだろう。

しかし、そうはいってもまだ仮想通貨を保有していない人が全人口のうちの大半を占めている。また、仮想通貨を支払いに使えるサービスは少ないため、仮想通貨を保有している人のほとんどが投資や投機を目的としていると考えられる。

今後仮想通貨が広く普及し、ほとんどの人々が法定通貨のように仮想通貨を所有する世の中が実現すれば、イーサリアムの価格も高騰するだろう。仮想通貨の普及・実用化が進むかも、イーサリアムの将来性を左右するポイントのひとつだと言える。

DeFiやNFTのサービスが普及するか

先述したとおり、イーサリアムのブロックチェーンは、さまざまなDeFiおよびNFTサービスに利用されている。ちなみに、DeFiとNFTについての概要は以下のとおりだ。

DeFiとは

DeFiとは、仮想通貨を利用した金融サービスのことである。銀行などの従来の中央集権型金融サービスとは違い、ブロックチェーン上に構築しているため分散型の構造となっている点が特徴的だ。

中央集権型ではない故に、手数料が安かったり世界中で利用出来たりといったメリットがある。また、「流動性マイニング」や「レンディング」といった方法をとれば、DeFiを利用してお金を稼ぐことも可能だ。ちなみに、DeFiのアプリケーションとして特に有名なものとしては、以下の3つがあげられる。

  • WBTC(Wrapped Bitcoin)
  • Compound
  • MakerDAO

NFTとは

NFTとは、代替不可トークンという意味を持つ用語で、偽造が不可能なデジタルデータのことである。これまではデジタルデータに価値を付与することは難しかったが、NFT技術の登場によりデジタルアートや音楽が高価で取引されるようになった。NFTを利用したゲームも注目されており、ゲーム内で現実世界のお金を稼いだり、異なるゲーム間でキャラクターやアイテムを使いまわしたりできる。

これらDeFiやNFTのサービスが今後さらに普及すれば、基盤を形成しているイーサリアムの人気も高まり、価格が高騰すると考えられるだろう。以上のことから、イーサリアムの将来性を左右するポイントのひとつに、「DeFiやNFTのサービスが普及するか」があげられる。

 イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるか

数あるアルトコインのなかには、「イーサリアムキラー」と呼ばれる銘柄が存在する。イーサリアムキラーとは、イーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題を解消している仮想通貨のことだ。例えば、以下の銘柄がイーサリアムキラー銘柄だと言われている。

  • ADA(エイダコイン):仮想通貨のなかで初めて安全性が完全に確立されたとされている。
  • SOL(ソラナ):DeFi領域で活発な活動が見られる仮想通貨銘柄。
  • Fantom/FTM(ファントム):金融分野に精通している。ステーキング向きな仮想通貨銘柄。
  • Polkadot/DOT(ポルカドット):Web3.0を目指しており、高い技術力を有している。

イーサリアムが今後も人気を博し続けるためには、上記のようなイーサリアムキラー銘柄よりも高い技術力を持ち続けなければならない。「イーサリアム2.0」へのアップデートなどを積極的に行うことで、ライバル通貨よりも優位に立てれば、イーサリアムの将来は明るいだろう。

イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるかという点も、イーサリアムの将来性に大きく関わるポイントだ。

イーサリアム基礎情報

ビットコインやリップルなどの仮想通貨には発行枚数の上限が設けられているが、イーサリアムは主要な暗号資産のうち唯一発行上限が設けられていない点が特徴だ。発行上限があるビットコインでは発行枚数の急激な増加を防ぐためにマイニング報酬を半分にする「半減期」も設定されているが、上限のないイーサリアムにおいてはそのような措置がないため、安定供給を実現できると言われている。

また、イーサリアムは仮想通貨であるだけではなく、ブロックチェーンプラットフォームとしての役割も持っている。そのため、分散型アプリケーション(Dapps)を構築することや、独自トークンを発行する事ができる。また、スマートコントラクト機能も備えている。

分散型アプリケーションは中央管理者なしで分散管理されるアプリケーションのことを指し、スマートコントラクトは管理者が不在でもブロックチェーン上で取引を自動化して、アプリケーションを動作することができるシステムだ。これらによって情報漏えいのリスクやデータ改善などの内部不正を防ぐことができることから、イーサリアムはDeFiやNFTアート、NFTゲームなど多くの用途に実装されている。

イーサリアムに関する最新トピックス

続いて、イーサリアムに関する最新ニュース・トピックスを紹介する。

イーサリアム先物ETFが米市場で承認されるか

アメリカ市場においてSEC(米証券取引委員会)がイーサリアム先物ETFを承認するか、注目が集まっている。2023年時点においては、報道ベースではイーサリアム先物ETFが年内に承認される可能性が高まっているという情報がある。

SECがイーサリアム先物のETFを承認するということは、投資商品としてのお墨付きを与えたことに他ならない。このことは多くの投資家のイーサリアム投資の安心感を高めることにつながる。

ちなみにビットコイン先物ETFはすでに2021年10月から承認されている。また、ビットコイン現物ETFはまだアメリカでは承認されていないが、欧州市場では初めて2023年8月に上場しており、いずれはイーサリアムの先物ETFに続いて現物ETFにも注目が集まることは間違いない。

ガス代の支払いがVISAのクレジットカードで可能に?

イーサリアムネットワークでトランザクションを行う際などに「ガス代」が必要となるが、このガス代をクレジットカードで支払う実証をVISAが完了させたことが2023年8月に発表された。このテストはイーサリアムのテストネット「Goerli」で実施され、成功した。

もし実際にVISAでガス代を支払う仕組みが実装されれば、イーサリアムの利用がより容易になることは間違いない。現在はガス代の支払いに伴ってイーサリアムの送受信などが必要となり、VISAはこの点がイーサリアムネットワークの利用促進を阻害する要因の一つになっていると指摘している。

まとめ

イーサリアムは、スマートコントラクト機能などの優秀な技術が搭載されている人気の仮想通貨だ。一方で、スケーラビリティ問題やイーサリアムキラー通貨などの存在によって、地位が脅かされるのではないかと懸念している人もいる。今後「イーサリアム2.0」へのアップデートが完了し、他の仮想通貨に比べ圧倒的な技術力を持つことができれば、イーサリアムの地位は確かなものとなるだろう。また、DeFiやNFT関連のサービスの普及も、イーサリアムの価格推移に関係するものと思われる。

ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、これからも進化を遂げるであろうイーサリアムを保有してみてはいかがだろうか。

関連FAQ

イーサリアムとは?

イーサリアムは仮想通貨であるだけではなく、ブロックチェーンプラットフォームとしての役割も持っている。分散型アプリケーション(Dapps)や独自トークンを構築でき、スマートコントラクト機能も備えている。それらの特徴からDeFiやNFTアート、NFTゲームなど多くの用途に実装されている。

イーサリアムアップデート「Shanghai(上海)」とは?

「Shanghai(上海)」は、ステーキングされたイーサリアムの引き出しを可能にするアップデートで、3月中に実施される予定だ。供給量の13.2%に当たる1,600万イーサリアム(約3兆1,800億円相当)と、ステーキング参加者に分配される年利4%〜6%の報酬の引き出しが可能となる。

イーサリアムアップデート「The Surge(シャーディング)」とは?

「The Surge(シャーディング)」とは「スケーラビリティ問題」を根本的に改善するアップデートである。この問題の解消によって、トランザクション手数料が下がり、処理速度も上昇する効果が見込まれている。これまで、スケーラビリティ問題の解消がイーサリアムの将来性を決める鍵と言われてきたため、このアップデートに大きな注目が集まっている。