FXにおけるボラティリティとは?トレードの影響・調べ方・計算ツールを紹介

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FXにおけるボラティリティとは

FXにおけるボラティリティとは、通貨ペアの価格が変動する度合いを指しており、相場の流動性によって変動する特徴がある。

値動きが激しい相場をボラティリティが高い、逆に安定している場合は低いと表現する。

たとえば、ドル/円などの参加トレーダーが多く、比較的売買注文のバランスが取れている通貨は、流動性が高くボラティリティが低いのが特徴だ。

一方、トルコリラ/円のように取引量が少ない通貨ペアは、大量の注文に対する反対注文が入りにくいため、流動性が低くボラティリティが高い。すなわちチャートが一方向に動きやすく乱高下が発生しやすいのである。

値動きが激しいほど利益が得やすいメリットがあるが、もし自身の注文と逆方向に価格が変動すれば多大な損失を抱える可能性も考慮しなければならない。

ボラティリティは通貨ペアを選定する際にさまざまなトレーダーが活用しており、現在保有している銘柄の度合いをチェックすれば、リスク判断もできる重要な指標だ。

用語解説

乱高下とは価格変動が非常に激しい状態を指しており、普段通りに注文をしても希望の価格で保有できないケースもある

ボラティリティの高い・低い通貨ペア

ここからは、ボラティリティの高い通貨ペアと低い通貨ペアを代表的なものに絞って解説していくので、ぜひ参考にしてほしい。

高い通貨ペア

英ポンド/円

両通貨とも取引量は多くなっているが、英ポンドに関しては流通している市場の範囲が狭いため、先進国同士のペアでありながらボラティリティが高い。

日本とイギリス経済はもちろん、地理的な要因からユーロ圏の経済指標などでも大きな価格変動が発生することが多い。

トルコリラ/円

トルコリラは世界的にも取引量の少ない通貨であり、シリア内戦など地政学的リスクによる突発的な値動きが発生しやすくなっている。

一方、マイナス金利の日本円と高金利のトルコリラは、買いポジションを保有し続けると高いスワップポイントが得られる特徴を持っており、長期保有を主体としたトレーダーからは根強い人気がある。

南アフリカランド/円

トルコリラと同じく高金利の南アフリカランドは、アフリカ全体の約20%にも及ぶGDPを一手に担っている南アフリカの通貨である。

ただし、取引量が少なくボラティリティが高い上に、資源の産出が豊富であることから、金やプラチナ相場の影響を強く受けるケースが多い。

たとえば、金の価格が下落すれば輸出国である南アフリカの収入自体が減少するため、直接的な経済的ダメージとして通貨の売り圧力に発展するのだ。

用語解説

<テクニカル分析>
過去の値動きから将来的な値動きを判断する分析手法
<地政学リスク>
特定の地域や国の政治、経済的な緊張感の高まりが他のエリアへ影響を及ぼすこと
<ポジション>
注文をおこなってから決済するまでの取引を指しており、建玉とも呼ばれる
<GDP>
国内総生産の略称であり、ある特定期間に生み出されたモノやサービスの価値を指す

取引する際の注意点

ボラティリティの高い通貨ペアは、ダイナミックな値動きで大きな利益が狙える一方、注文と反対の方向に価格が変動すると、損失が拡大しやすいリスクもある。

したがって、通貨発行国はもちろん、関連諸国の経済動向は常にチェックしておく必要があり、とくに政策金利などの値動きが激しくなりそうな経済指標発表前後はポジションを持たないようにするのも有効だ。

ただし、南アフリカのような慢性的な経常赤字国は突然経営破綻する可能性もゼロではなく、トルコの地政学的リスクに関しても予見しにくい。

そのため、万が一喪失しても支障のでない少額資金で取引するのがおすすめであり、いつ急激な価格変動が発生しても良いように、通貨量も少なくした方が安全である。

用語解説

<政策金利>
国の中央銀行が一般金融機関に対して資金を貸し付ける際の金利
<経済指標>
国家の経済情勢を示す数値であり、雇用統計や失業率などが含まれる

低い通貨ペア

ドル/円

アメリカと日本の通貨を組み合わせた通貨ペアであり、世界でもトップクラスの取引量を誇っている。

基本的に緩やかな値動きである一方、経済指標発表の内容が市場予測から乖離した場合や、どちらかの国で注目度の高い情報が発信されると価格変動が大きくなりやすい。

ユーロ/円

取引量の多い日本円と欧州単一通貨のペアであることから、ボラティリティが低く突発的な値動きも比較的少ない傾向にある。

ただし、ドイツやフランス、イタリアなど一定以上の経済力を持った国が複数絡んでいるため、価格変動要因になり得る情報の発信源が多いという特徴がある。

ユーロ/ドル

世界1位の取引量を誇る通貨ペアであり、流動性が高く取引量も多くほとんどのFX会社で取り扱っている

また、通貨発行国との時差があるため、日本時間の朝から昼間にかけては値動きが穏やかな傾向だが、夕方頃から徐々にボラティリティが高まり始める。

ボラティリティが大きくなりやすい時間帯や時期はある?

先ほど触れた通り、ボラティリティは市場の流動性によって変動する特徴がある。

実際にFXの取引をしている人や、これからチャレンジしようとしている人は、ここで解説するボラティリティが高くなりやすい時間帯や時期をきちんと把握してほしい。

ボラティリティが高まりやすい時間帯

ロンドン市場(日本時間16時~24時)

日本時間の16時~24時頃(冬時間:17時~25時)にあたるロンドン市場は、世界一の規模を持つことから、ボラティリティが高まる傾向がある。

一見すると取引量が多いため、値動きが安定しそうなイメージだが、膨大な数のトレーダーが同じ材料を根拠にして一斉に注文をおこなうため、大きな振れ幅でチャートが上下しやすくなる。

ニューヨーク市場(日本時間22時~翌6時)

同じく世界規模であるニューヨーク市場が開く22時~6時(冬時間:23時~7時)もボラティリティが高まる傾向であり、米雇用統計や失業率など注目度の高い経済指標が発表される日は特に変動幅が大きくなりやすい。

また、22時~24時の時間帯はロンドン市場も開いているため、1日の中でもとくに値動きが激しい。

参考までに、日本時間9時~15時までの日本市場も比較的ボラティリティが高くなりやすいが、他2つの市場に比べれば緩やかなケースが多いのが特徴だ。

ボラティリティが高まりやすい時期

株式などは決算期にボラティリティが活発化する傾向だが、FXは世界中で取引がおこなわれる性質上、通年通して程度の差はないように思われる。

ただし、以下3つの時期はボラティリティが低下する傾向にある。

ボラティリティが低下しやすい時期
  • 夏枯れ相場(8月)
  • クリスマス相場(12月)
  • 年末年始

年末年始に関しては日本も休暇を取るが、海外の大口ディーラーは8月と12月の各1ヶ月をたっぷり休むのが基本であるため、相場全体の取引量が減少するのだ。

したがって、上記3つの時期に突入する直前はディーラーのポジション決済、休暇明けは新たな仕込みによってボラティリティがある程度高まる可能性もあるだろう。

しかし、基本的にボラティリティを時期から分析する際は「いつ低下するか」に注目した方が判断しやすいだろう。

ボラティリティを調べる方法

ここからは、ボラティリティを調べる方法を解説していく。

いずれも無料で利用できるため、積極的に活用してほしい。

テクニカルチャート

ボラティリティは証券会社が提供している取引ツールに搭載されたテクニカルチャートで判断可能だ。

ここではその中でも特におすすめのツールをピックアップしていく。

ボリンジャーバンド

最もメジャーなテクニカルチャートの一つであり、過去一定期間の値動きから予測した変動範囲をチャート上に表示する。一本のラインにした移動平均線を中心に、上下2本(3本の場合もあり)ずつσラインが描画されている。

価格の変動率によってバンド全体が変動する機能を持っており、ボラティリティが高まれば拡大(エクスパンション)、低下した場合は縮小(スクイーズ)するため、視覚的な判断がおこなえるだろう。

ATR

ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)は、ボラティリティの分析に特化したテクニカルチャートだ。

値動きが激しければチャートが上昇し、勢いが収まると下落するので、こちらも簡単に分析できる仕様となっている。

HV(ヒストリカル・ボラティリティ)

過去のボラティリティから将来的な価格変動率を予測するHVは、統計学を用いてチャートとして描画するツールだ。

これまでのデータとリアルタイムの相場を組み合わせたロジックであるため、より信憑性の高い情報が得られるだろう。

ただし、比較的マイナーなテクニカルチャートとなっており、FX会社によっては搭載していない可能性もある。

ヒロセ通商「ボラティリティ表」

ヒロセ通商の公式サイトで利用できるボラティリティ表は、口座を開設していない人でも無料で利用できるツールである。

一定期間を指定して検索すると、ボラティリティの高い通貨ペアをランキング形式で最大500位まで閲覧可能だ。

開始と終了レート、そして値動きの数値であるpipsで表示されたボラティリティが大変見やすく、長期的なデータの取得ができる点も利便性が高い。

pips(ピプス)とは

FXの値動きを表す共通単位であり、1pipsは0.01円(1銭)

ヒロセ通商「ボラティリティ表」

Investing.com「ボラティリティ計算ツール」

多彩な金融情報を取り扱うInvesting.comは、ボラティリティ計算ツールを無料提供しており、期間を指定すれば40通貨ペアのボラティリティと変動pipsが全て1画面に表示される。

さらに、曜日・1時間おき・1日ごとで分けられた3種類のグラフを見れば、値動きの激しい時期や時間が簡単にチェックできるため、通貨を選定する際の情報収集にも役立つ大変有用なツールだ。

Investing.com「ボラティリティ計算ツール」

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(画像:Shutterstock)

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