雇用統計の発表はいつ?重要な指標や発表前後の取引の注意点

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雇用統計とは

FXの世界だけでなく、マーケットに関わる人にとって、一番重要な経済指標とも言われているのが雇用統計である。

雇用統計では世界各国の経済指標が公表される。特にアメリカは世界経済の中心であるため、アメリカの雇用統計注目度も高い。また、アメリカ経済は他国の経済にも大きな影響を与えている。

雇用統計が重要となっている背景

雇用統計が重要となっている背景としては企業の背景が読み取れるためである。

雇用が減速するときは企業側も最終手段として人員整理をおこなうため、企業の状態が良くないことが把握できる。

一方、企業側が採用を増加させたいときは中長期的に見て景気が良くなると判断していると理解できる。

雇用の動きはその国の経済や企業マインドを表している。雇用統計の結果は経済動向に遅れて表れるため、遅行指標とも呼ばれている。

また、アメリカの中央銀行であるFRBも雇用統計の数字をチェックしてから政策運営をおこなっている。

マーケットもそのことを理解しているため、雇用統計の数字が公表された後に中央銀行の利上げ期待が後退したり、高まったりなど、相場の方向性を変えることもある。

雇用統計の詳細なデータは労働統計局のホームページに多くのデータが公表されており、「家計調査」と「事業所調査」の2種類から集まったものがデータとして集約されている。

雇用統計で公表される指標

雇用統計で公表される指標は多岐に渡るが、「非農業部門雇用者数」と「失業率」の2つが代表的な指標となっており、それ以外に平均時給や労働参加率、週の平均労働時間等も公表される。

雇用統計の総合的なデータを分析して今後のアメリカ経済の見通しを予測することができる。

非農業部門雇用者数

非農業部門雇用者数は、農業部門を除く産業で勤務している人の増減を示しており農業以外の産業で雇用ニーズが高まっていると判断されると増加する。

労働者不足になると、労働者獲得のために企業側が賃金の引き上げを迫られるため、物価上昇率を予想する際の一つの材料となっている。

失業率

失業率はアメリカ国内における失業者数を労働力人口で割って算出し公表される。

失業者数の定義は「16歳以上の働く意思のある人」となっており、労働力人口は「失業者数+就業者数」となっている。

失業率にはU1やU6など種類が分かれており、U6は「不完全雇用率」と呼ばれ、機関投資家が見ている重要な指標である。

この定義は「フルタイムでの雇用を希望しているが、仕方なくパートタイムの職に就いている労働者」や「仕事に就きたいものの、積極的に職探しをしていない人」もカウントして計算している。

「広義の失業率」なことから投資家に注目されている指標だ。

雇用統計発表はいつ?

雇用統計は毎月、第一金曜日に公表される。

ニューヨーク現地時間の午前8:30が公表時間となっている。(日本の場合は夏時間が午後9:30 冬時間が午後10:30)

雇用統計の発表が相場にあたえる影響

雇用統計は上述した通り、アメリカ経済の先行きの見通しに影響を与える。

波及する先として株式市場や米国債金利、為替市場、コモディティマーケットなどすべてのマーケットが対象となる。

雇用統計の結果から投資家が考えることは景気のトレンドに変化は起こりそうか、そして政策金利の見通しに変化が出るようなインパクトのある数字が出るかどうかである。

現在のように利上げ見通しが強まる中、雇用統計の数字で失業率が大幅に上昇し、平均時給が大きく下落するようなことになった場合、インフレ懸念が低下する。

そのため利上げを急がないとFRBは判断すると予測されるため、米国債金利は低下し米ドルは下落するだろう

一方、雇用統計で非農業部門雇用者数が予想以上の伸びを見せ、平均時給も上昇し労働参加率も高まる動きとなった場合、早期利上げ観測が強まり、金利は上昇し米ドルは上昇する動きとなることがシナリオとして浮かび上がる。

そして、株式市場は利上げ観測が強まると株式市場は下落する可能性が出てくるため、それぞれのマーケットに密接に関係する。

また、短期的な見方として「マーケットの予想と実際に公表される数字がどのくらいの乖離が出るのか」という点は重要だ。

予想よりも悪化するような数字となれば、株価は下落し、金利は低下、米ドルは下落という動きになりやすく、予想よりも良い数字となれば、逆の動きとなる。

しかし「非農業部門雇用者数」と「失業率」それぞれが強弱混在となるような数字も出ることがある。

他にも注目すべき指標が出てくると、この2つだけで値動きは判断できない。そのため、相場への影響をシンプルに判断するのは難しいことが多いだろう。

FXの取引において雇用統計発表前後で気をつけること

最後に雇用統計の発表前後において取引で大切なことを紹介する。

可能な限りポジションを無くしておく

雇用統計前後では「可能な限りポジションを無くしておくこと」が大事といえるだろう。雇用統計の結果がどうなるかは誰にもわからない。

その状況で大きくレバレッジをかけてポジションを保有していると、あっという間に大きな損失を抱えることもあれば、逆に大きなリターンを得ることもある。

しかし、これはどちらにしてもただの博打であり、運次第な面が大きいだろう。

そのため、リスク管理をおこなう上でもポジションは最低限に留めておき、短期的なポジションは外しつつ、長期的なポジションは一部外したりすることも検討してよいだろう。

また、雇用統計前には売り買いをおこなう人が急激に減少するため、スプレッドが広がりやすくなるのが特徴だ。

雇用統計公表直後の値動きに翻弄されない

雇用統計は公表された瞬間に大きな値動きが起こりやすい。

公表後に大きく上昇したからといってロングポジションで攻める投資家もいるが、これはリスクが大きな行動である。

何かしらの確証があればよいかもしれないが、取引に慣れていない人は雇用統計発表後にいきなり飛び乗るようなことは控えたほうがいいだろう。

雇用統計は多岐に渡る数字が公表されるため、公表された瞬間には誰も目についていない大事な数字が隠されている。

またマーケットの認識に変化が見られることや、ポジションが傾いていたために値動きが継続しなかったりなどさまざまな理由で、反転する可能性がある。

とくにポジションの傾きはとても大事なポイントのため、しっかりと理解してほしい。

ポジションの傾きというのは、雇用統計前に数字が良好であると予想されている場合、ドルをロングで保有している人が多数いることが予想される。

つまり発表後にドルを買ってくる投資家が少ないため、ドルの上昇が続かないという意味である。

もしも100人投資家が存在し、そのうち90人がドルのロングのポジションを保有していた場合、数字が良くてもドルを買える人が10人しか存在しなかったら上昇しないのは理解できるだろう。

マーケットではこのことを「織り込み済み」という言葉で示しているが、すでに良い結果が価格として織り込まれている場合は、数字とは裏腹に下落するような動きが出ることも多々ある。

機関投資家でも雇用統計の数字や公表後の価格の動きも誰もわからないし、経済指標公表時はテクニカル指標は無視して動く傾向がある。

リスク管理が難しいことや予測できない不透明な部分が多いため、雇用統計時のトレードは控えるようにしよう。

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(画像:Shutterstock)

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