FXのメキシコペソの特徴・価格変動要因・今後の見通し

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メキシコペソはメキシコが発行する法定通貨である。メキシコは中南米の中でブラジルやアルゼンチンと肩を並べる経済国であり、自動車産業や原油などのエネルギー資源、銀といった鉱物も豊富な国だ。

メキシコは世界的な経済大国である米国と国境を接していることから、輸出シェア全体の約8割、輸入シェアの半分程度を米国が占めている。

また、メキシコペソの政策金利は現在4.75%に設定されている。参考までに、日本の政策金利は-0.1%であることを考慮すれば、どれだけ高金利かがわかるだろう。

政策金利とは

国家的な金融政策を担う中央銀行が金融機関へ資金を貸し出す際の金利のこと

メキシコペソの概要


ここからは、メキシコペソの流動性と金融政策、そして価格変動要因を解説していく。メキシコペソを取引する上では重要な知識であるためしっかり押さえておこう。

メキシコペソの流動性

メキシコペソは取引量が少なく、流動性の低いマイナー通貨に分類されていることから、急な価格変動が発生しやすい通貨といえる。

ここで、なぜマイナー通貨は価格変動が発生しやすいのかを解説しておきたい。

米ドルや日本円といったような流動性の高いメジャー通貨は、FX市場での取引量や取引参加者が多いため、大きな注文に対する反対注文が入りやすく、安定した値動きになる。

一方、メキシコペソのようなマイナー通貨は取引しているトレーダーが少ないことから、値動きの勢いを抑制するような反対注文が入りにくい。

そのため、メキシコ経済の大幅な悪化といったインパクトの強い情報が発信された場合に大きな売り注文があると、チャートが急激に下落する可能性が高く、反対に経済が好転する内容なら突発的に価格が高騰しやすいのだ。

さらに、メキシコのように日本との時差が大きい国の通貨を取引する場合、時刻による流動性の違いにも注意しておきたい。

メキシコペソの場合、おもに北米の市場で取引されるため、取引が活発なのは米時間の日中であり、日本では夜から早朝にかけての時間帯にあたる。したがって日本時間の昼間はメキシコペソの取引量がさらに少なく、大きな事件やニュースがあると相場が急変するリスクが高くなる。

流動性が低いことは、損失が発生するリスクがあるということを常に念頭に置いておこう。

メキシコの金融政策

メキシコは恒常的に政策金利が高い通貨として有名だが、これまでの推移を見てみると常に一定水準ではないことがわかる。

たとえば、2008年には今よりも高い8%を記録していたが、同年のリーマンショック以降は景気が減退したことにより、3%台まで政策金利を引き下げている。

この背景としては、金利を引き下げて企業や個人が資金を借入れやすい状態を形成し、雇用促進やインフレ率(物価上昇率)の上昇を狙ったことがあげられるだろう。

一方、2016年頃からは徐々に経済が持ち直したことで、逆にインフレが進む結果となった。そのため、市場に流入する資金を抑制するために政策金利を引き上げ、再度8%前後を目指す形となっている。

以上の通り、メキシコ中央銀行は自国のインフレ率次第で政策金利を変更する傾向があるのだ。

そして、2020年初頭からはコロナウイルス感染拡大によってメキシコ経済が低迷したことを受け、インフレ懸念が後退し、結果として現在の4%程度の水準に至っている。

また、メキシコの金融政策は米国の経済状況を反映しやすいことも押さえておこう。

米国経済が上向いて政策金利を引き上げると、市場は米ドルを買い、メキシコペソを売る流れが強くなる。米ドル/メキシコペソでいえば、チャートが上昇する。

この場合、メキシコにとっては米国から物資を輸入する際、これまでより多くのメキシコぺソを支払うことになり、国民一人当たりの収入自体は変わらないにも関わらず、仕入れ額の高騰によるインフレが起こってしまう。

この関係性をよりわかりやすく解説すると、「米ドル/日本円」が100円(1米ドル=100円)の際は、50米ドルの米国製品を5,000円で購入できる。

一方、「米ドル/日本円」が200円まで円安方向に上昇した場合(1米ドル=200円)、全く同じ製品を仕入れるために倍の1万円を支払わなくてはならず、一般市場へ流通する販売価格が高騰するのだ。

したがって、メキシコ中央銀行は通貨安が進みインフレが発生しないよう、米国に合わせて自国の政策金利も引き上げる傾向がある点には注意してほしい。

メキシコペソの価格変動要因

ここからは、メキシコペソを取引する上で押さえておくべき、3つの価格変動要因を解説する。

メキシコの経済指標

メキシコペソを取引する際は、メキシコの経済指標発表をチェックして、国家的な経済状況を把握する必要がある。具体的には以下の指標を押さえておこう。

経済指標 概要
政策金利発表 メキシコ中央銀行による政策金利発表
CPI(前年比) 物価の変動率を表し、インフレ率の判断に繋がる
GDP(国内総生産) 一定期間の間にメキシコ国内で生産されたモノやサービスの価値
雇用統計 メキシコ国内における雇用状況を示す指標
貿易収支 輸出入の収支を示す指標
WTI原油先物価格 国際的な原油価格の指標

メキシコペソは高金利通貨であることから、政策金利の動向にはとくに注目してほしい。

また、通貨の流動性が低いことから、市場予想から乖離すると大きな価格変動が発生する可能性があるため、取引をおこなう際はどの程度乖離するとどういった値動きになるか、あらかじめ想定しておいた方がよいだろう。

アメリカの経済状況

先ほど触れた通り、アメリカはメキシコの輸出産業において大きなウェイトを占めていることから、アメリカの経済状況も重要な価格変動要因である。具体的には、以下の経済指標をチェックしておこう。

経済指標 概要
政策金利発表
  • FRBによる政策金利発表
  • FOMCの声明
米雇用統計 毎月第一金曜日に発表される米国の雇用状況を示す指標
GDP(国内総生産) 米国内で生産されたモノやサービスの価値
貿易収支 輸出入の収支を示した指標
CPI(消費者物価指数) 米国の物価指数を示しており、インフレ率の判断に繋がる

これらは市場予測から乖離すると、米ドルの下落要因に繋がる。それだけでなく、アメリカの経済が低迷してメキシコ製品を輸入する資金体力がなくなると、メキシコへの直接的な経済的ダメージに繋がる可能性もある。

また、先ほど触れた通り、メキシコは米国の政策金利をある程度反映させる傾向があるため、FRBによる政策金利発表は欠かさず押さえてほしい。

用語解説

FOMC(Federal Open Market Committee)
米国の金融政策を決定するために開かれる会合
FRB(Federal Reserve Board)
米連邦準備制度理事会の略称であり米国の中央銀行にあたる

原油価格

メキシコは原油の産出国でもあることから、原油価格の動向に関しても注意しておこう。

具体的には、先ほどの経済指標で触れた「WTI原油先物価格」をチェックしておくことをおすすめする。

「WTI原油先物価格」とはWest Texas Intermediateの略称であり、テキサス州とニューメキシコ州で算出される、高品質な原油の先物取引価格を示している。

一見するとメキシコとは関連性がないようにも思えるが、WTI原油先物の参加者は大変多く、世界的な原油価格の指標として活用されているのである。

メキシコペソ/円のスプレッド・スワップポイント比較

2022年1月7日時点のFX会社のスプレッド・スワップポイントは次の通りだ。

メキシコペソ/円 外為どっとコム DMM FX GMOクリック証券 みんなのFX LIGHT FX LINE FX SBI FXトレード 楽天FX
スプレッド 0.2銭
原則固定※例外あり
0.2銭 0.2銭 0.3銭 0.3銭 0.3銭 0.2銭※ 0.2銭
スワップポイント
(買い)
7円 6円 60円
(10万通貨)
7.1円 8.1円 8円 6円 4円

※注文数量1,001~100万までのスプレッド最頻値

メキシコペソの今後の見通し

現状、メキシコ中央銀行は政策金利を4.75%に設定しており、8%であったことを考慮すれば比較的低水準にも思える。

しかし、2021年9月に発表された今回の政策金利は連続して三回の金利引き上げをおこなった結果であり、その背景にはエネルギー資源や食料品の価格高騰による経済の復調が挙げられる。

すなわち、メキシコ経済はコロナウイルス感染拡大の経済低迷から徐々に回復している傾向にある。

また、同じく経済的に上昇基調となっている米国も政策金利を引き上げる可能性があるが、もしそうなれば通貨安を回避したいメキシコ中央銀行は更に利上げをおこなう期待が持てるだろう。

したがって、メキシコペソの今後を見通す上では、次の点を把握しておくことが大切だ。

  • メキシコ経済が安定して推移していくか
  • 政策金利の動向

ただし、経済指標発表の内容が悪化、あるいはメキシコ中央銀行がネガティブな観測を発信した場合は、期待が裏切られたことによる強いメキシコペソ売りに繋がるリスクもある点には注意してほしい。

メキシコペソはどのような人におすすめできる通貨か

ここからは、メキシコペソが持つ特徴を踏まえて、どのような人におすすめできる通貨なのかを解説する。

メキシコペソの特徴
  • 政策金利が高い
  • 原油価格との関連性が強い
  • 米国経済の影響を受ける

おすすめできる人

<メキシコペソは、FXで取引できる通貨の中でもとくに政策金利が高く設定されているため、長期的に保有してスワップポイントを重ねていくトレーダーにはおすすめできる。

また、メキシコ中央銀行の発言内容や、経済状況と政策金利の関係性が理解できており、米ドル/日本円、あるいはユーロ/日本円を取引しているのであれば、よりおすすめの通貨といえるだろう。

おすすめできない人

メキシコペソは、原油価格や米国経済に大きく影響を受けるため、複数の情報を正確にキャッチすることが難しい人にはおすすめできない。

最低限、米国とメキシコの経済指標を両方ともチェックして、内容が良いか悪いかの判断がスムーズにできるようになってからチャレンジするのがよいだろう。

また、メキシコ中央銀行の発言内容が難しい場合は、まず金融用語の勉強からスタートすることをおすすめする。

メキシコペソを取引する場合の注意点

ここからは、メキシコペソを取引する場合の注意点について解説をおこなう。

突発的な価格変動が発生する可能性がある

メキシコペソは取引量が少なく、流動性も低いため、経済指標発表の内容が悪化、あるいはメキシコ中央銀行がネガティブな発言をした場合は、トレーダーの売り注文が多くなり突発的に価格が変動する可能性がある。

そして、もし自分の注文と逆方向にレートが変動してしまうと、大きな損失が発生するリスクもあることから、マーケットニュースや先ほど触れた指標の内容については必ずチェックしておこう。

メキシコと米国の政治的関係性

メキシコペソを取引する上では米国経済をチェックしておくことが大切だが、両国は地続きになっていることから、経済的側面だけでなく政治的関係性についても注意しておこう。

たとえば、数年前のトランプ政権においては、移民の流入を阻止するための国境の壁建設計画、そして北米自由貿易協定の見直し主張などが投資家の不安を招く結果となり、メキシコペソの売りに繋がっている。

現状、バイデン政権においてそういった動向は見られないが、移民の流入数は依然として減少していないことから、両国の政治的関係性については今後も注意した方がよいだろう。

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(画像:Shutterstock)

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