ノックアウトオプションとは?レバレッジやスワップポイントなどFXとの違いを比較

ノックアウトオプションとは
ノックアウトオプションとは、損失が限定された条件のもとでトレードをおこなう商品である。
簡単に説明すると「エントリーのタイミングで損切り注文の水準を決めてポジションを保有する」商品となっているため、その水準になると自動的にポジションが決済される仕組みとなっている。
「ノックアウト」という言葉は「決済」という意味であり、決済という注文が内包された商品のトレードをおこなうというとイメージしやすいだろう。
日本では「IG証券」と「FOREX.com」が提供しており、他の証券会社では取り扱っていない。
そのため、ノックアウトオプションをおこないたい場合は「IG証券」か「FOREX.com」での口座開設が必要となる。
ノックアウトオプションとFXとの違いを比較
ノックアウトオプションとFXでは、異なる点がいくつか存在する。両者の違いについて見ていこう。
実質的なレバレッジ
ノックアウトオプションの実質的なレバレッジはFXと大きく異なる。
FXの最大レバレッジは25倍となっており、計算式は次の通りだ。
- レバレッジ=為替レート×取引数量÷口座への入金額
最大レバレッジが決められていることから、取引数量もそのレバレッジを基準に、証拠金としての入金額から判断できるようになる。
ノックアウトオプションの場合、取引は為替レートの売買ではない。「オプション」という名前の商品が付くとき、取引対象は投資対象の「オプション料」と定義される。
オプション料を計算する基準となるのは、「損切りライン(ノックアウト価格)までの幅(pips)」である。そのため、実質的なレバレッジはその損切りラインによって異なる。
ノックアウトオプションで必要となる証拠金の計算は次の通りだ。
- 必要証拠金額=(原資産価格とノックアウト価格の差額+ノックアウトプレミアム)× 1ポイント損益額
もしも、現在のドル/円の為替レートが1ドル100円であり、ノックアウト価格が99円だった場合、10,000通貨の必要証拠金額は(100.00-99.00)×10,000=10,000円となる。
(ここではノックアウトプレミアムは計算を簡便化するため計算上考慮に入れていない。)
つまり、100円の為替レートで10,000通貨を購入するなら、レバレッジがない場合は100万円必要だが、取引する場合には10,000円のみでいいということになる。
この計算からレバレッジを逆算すると、10,000円のみで100万円分の取引が可能となるため、レバレッジは100倍となることがわかるだろう。
ノックアウトオプションは、ノックアウト価格を原資産価格に近づけながら損切りラインを設定することによって、必要となる証拠金額はより小さくなる。
次の表は、1ドル100円のドル/円を10,000通貨売り買いする場合における実質レバレッジの表である。(ノックアウトプレミアムは計算上考慮に入れていない)
ノックアウト価格までの幅(pips) | 必要証拠金額 | 実質レバレッジ |
---|---|---|
10pips | 1,000円 | 1,000倍 |
50pips | 5,000円 | 200倍 |
100pips | 10,000円 | 100倍 |
このように、ノックアウト価格までの幅が広がると必要証拠金額が増加し、必要証拠金額からレバレッジを計算すると、実質レバレッジは小さくなっていくことになる。
- 指定した値ですべらずに約定させるための積立保険
- ノックアウトされずに利益確定または途中損切りした場合は返金される
スプレッド
ノックアウトオプションのスプレッドは、FXと比較すると若干ではあるが広めになっている。
例としてIG証券のノックアウトオプションの場合とFX取引の場合を比較してみた。
通貨 | FX | ノックアウトオプション |
---|---|---|
USD/JPY | 0.2銭 | 0.6銭 |
EUR/JPY | 0.5銭 | 1.1銭 |
AUD/JPY | 0.7銭 | 1.3銭 |
EUR/USD | 0.4pips | 0.6pips |
このように、FXと比較するとスプレッドが広いため、「多少のスプレッドは気にせず少額の元手で始めたい」「スプレッドよりも損失リスクを確実に限定したい」という場合はノックアウトオプションが適しているだろう。
取引レート
ノックアウトオプションはあくまで「オプション価格」を取引するというイメージとなる。そのためレートは似ているものの、小数点の桁数などが若干異なっている。
例として、FXではドル/円が109.20円で取引されている場合、ノックアウトオプションでは「10920.0」というような表示になる。
そのため、小数点の桁数が何か違うと感じるかもしれないが、あくまで為替レートを売買しているというわけではなく為替レートを原資産とした商品にトレードしていると理解しよう。
ノックアウトオプションのメリット・デメリット
次に、ノックアウトオプションのメリットとデメリットを紹介する。それぞれを理解したうえで自分のトレードスタイルに合うか考えてみよう。
メリット
ノックアウトオプションのメリットは、大きく分けて次の4つだ。
- FXよりも大きなレバレッジを利用できる
- 損切りが自動的におこなわれる
- FX以外の取引商品が豊富
- FXと同様にスワップポイントを得ることが可能
FXよりも大きなレバレッジを利用できる
レバレッジは、ノックアウトオプションの方が実質的に大きなレバレッジになりやすい。
FXのレバレッジが最大25倍であるのに対し、ノックアウトオプションでは上述したように1000倍になることもあり、いかに資金効率がよいかわかるだろう。
しかし、FXとのレバレッジを考える上で重要なことは「ノックアウトオプションは最初からノックアウト価格を設定している」ため、損失が最初から限定的になるということである。
FXで初心者の場合、難しいのはこの「損失を限定する」という取引をしっかりとおこなうことができるかどうかであるため、ノックアウトオプションは初心者でも利用しやすいともいえるだろう。
損切りが自動的におこなわれる
ノックアウト価格で自動的に損切りをおこなうことができる。損失リスクを確実に限定できるのは大きなメリットだ。
相場をチェックできない時間が大きくても、損失はノックアウト価格までの幅となるため、このノックアウトのシステムを上手に利用してリスク管理をすることが望ましいだろう。
FX以外の取引商品が豊富
ノックアウトオプションはFX以外の投資商品も取引可能となっている。
IG証券の場合、FX以外でも日経平均株価や、NYダウ、またヨーロッパの株価指数から原油や金、プラチナなどコモディティと呼ばれる投資商品まで取引が可能なため、色々な投資対象から選択することができる。
FXに慣れてきたら、他の投資商品をおこないたいという場合でも、ノックアウトオプションは利用しやすい取引方法だろう。
FXと同様にスワップポイントを得ることが可能
ノックアウトオプションの場合、FXとは商品性が異なるものの、FXのメリットの一つでもある「スワップポイント」をノックアウトオプションでも得ることが可能となっている。
高金利通貨の場合、スワップポイントはまとまった取引数量になると、大事な収益の一つにもなるため、その点はFXと同じ仕組みだという視点で問題ないだろう。
また、IG証券のスワップポイントには定評があるものの、スワップポイントに重きを置いている証券会社ではない。
長期的にスワップポイント狙いで資産運用をおこないたい場合はノックアウトオプションを利用する必要はないといえる。
デメリット
ノックアウトオプションのデメリットには、次の4つがあげられる。
- FXと比較してスプレッドが広い
- 新規注文時に指値注文ができない
- ノックアウトの水準を変更することができない
- 保有期間は最大1年間
FXと比較してスプレッドが広い
スプレッドは上述した通り、レバレッジ最大25倍で取引されているFXと比較すると、若干広めの設定となっている。
そのためレバレッジを利用したいものの、細かくスキャルピングのような取引をおこないたい場合は注意が必要だ。
もしも、レバレッジが2倍や3倍程度しか必要ない場合はノックアウトオプションではなく、通常のFX取引をおこなった方がいいだろう。
ノックアウトオプションはあくまで短期的なスパンでの取引に利用するものと捉えておこう。
新規注文時に指値注文ができない
ノックアウトオプションでは、新規注文時に指値注文ができないため、リアルタイムでチャートを見ながら「成行注文」をする必要がある。
- 新規注文:成行注文のみ
- 決済注文:指値注文・逆指値注文が可能
このように、新規注文は「成行注文のみ」であり、指値注文と逆指値注文は「決済時のみ」に使える注文方法となる。
そのため、ノックアウトオプションで指値注文をする場合は、保有するポジションの含み益が今よりも有利になって決済したいとき、利益確定(利食い)のために使用する。
また、決済時の逆指値注文は「損切り」するときに使うが、ノックアウトオプションの場合、「オプション料=最大損失額」であるため、狙った位置のノックアウト価格で発注しておけば、無理に逆指値注文を入れる必要がないといえるだろう。
ノックアウトの水準を変更することができない
ノックアウトオプションは、ノックアウト価格と一緒に注文する取引であるため、最初にノックアウト価格を設定してポジションを保有すると、その後ノックアウト価格(損切りライン)の変更はできないようになっている。
そのため利益が出て、損切りラインを引き上げていきたい場合でもできないという点はデメリットといえるだろう。
この観点からも、長期的なポジションで保有するための商品というよりは短期的なトレードで利用する商品と考えるのが自然である。
保有期間は最大1年間
ノックアウトオプションのポジション保有期間は最大で1年間である。
そのため、長期的な資産運用にノックアウトオプションを利用することはできないため、あくまで1年間の間で決済まで完了するということを覚えておこう。
しかし、実質レバレッジがかなり高いため、あまり長期的なトレードでノックアウトオプションを利用するケースはなく、心配する必要はないともいえる。
ノックアウトオプションとFXはどちらがおすすめか
これまでの解説から、ノックアウトオプションとFX取引はどちらがおすすめか考えてみたい。
まずノックアウトオプションは、トレード開始時に最大損失額が確定するので、リスクが確実に限定された状態で取引ができる商品となっている。
しかしながら「実質レバレッジが高い」という点や「IFD注文やIFO注文がない」「長期保有できない」ということを考えると、自由度の高いトレード戦略を考えるには不向きかもしれない。
少ない資金から始めて、短期的にレバレッジをかけて細かく利益を取りながら資産を増やしたい方は、ノックアウトオプションを検討してもいいだろう。
ノックアウトオプションの1番のメリットは実質レバレッジであり、これが不要なユーザーはFXでも問題ない。
資産運用のための一つの手段として利用したい場合は、ノックアウトオプションではなく、通貨金利をスワップポイントで受け取りながらレバレッジも抑えた運用をおこなうためにFXを利用する方がいいだろう。
つまり短期的なトレードをおこないたいのか、中長期的なトレードをおこないたいのか自分のスタイルで決めてもらうといい。
FX初心者の場合は、まず通常のFXで注文方法や値動きの幅、レバレッジのリスクとメリットなどを学びながら慣れることが大切なため、ノックアウトオプションではなくFXからスタートしよう。
<ノックアウトオプションをおすすめできる人>
短期的にレバレッジをかけて細かく利益を取りながら資産を増やしたい人
<FXをおすすめできる人>
資産運用のための一つの手段として利用したい人
ノックアウトオプションならIG証券がおすすめ
出典:IG証券
IG証券のノックアウトオプションは投資初心者でも利用しやすい。
FXを始めたばかりのころは「損切り」に対する抵抗感があり、「もしかしたら相場が戻るかもしれない」という思考に陥ってしまい、ストップの注文を外してしまうということも少なくない。
ノックアウトオプションを利用し、損切りの水準でノックアウトを入れておくことで、注文は必ず執行されるようになる。
また、ノックアウトオプションで利大損小の大事さということを学べるということも大きなポイントといえるだろう。
IG証券のノックアウトオプションはレバレッジが大きく利用できるメリットもあるが、投資初心者が学ぶために利用するという意味でもおすすめだ。
ノックアウトオプションの始め方
ノックアウトオプションは「IG証券」と「FOREX.com」の2社が提供している。
ノックアウトオプションは、FXや株価指数、コモディティなど種類が多岐に渡るため、FX以外で取引している方も使いやすい商品だろう。
ノックアウトオプションの注文方法は次の通りである。
- 銘柄を選択
- ブル(上昇)かベア(下落)の方向性を決める(ブルはロング、ベアはショートのイメージ)
- ノックアウト価格(損切りライン)を決める
- ロット数(取引数量)を設定
- 成行注文でエントリー
- 決済(指値注文と逆指値注文が必要な場合は入力)
ノックアウトオプションの場合、FXとは用語が異なることがあるため、その点に慣れていけばとくに大きく違うと感じる点はないだろう。
ノックアウトオプションの仕組みは、FX初心者にとって大事な「損切りの大切さ」を強制的に覚えられるため、この点だけは初心者には大事なポイントといえるが、レバレッジが高いという点に関しては、リスクとメリットを覚えてから利用することが望ましい。
そのため初心者はまず通常のFXで中期的なトレードをおこないながら練習し、その後、自分のトレードスタイルが確立した段階で、ノックアウトオプションに挑戦するといいだろう。