追証とは?追証なしのFX会社のメリットやリスクを解説

そもそも追証とは何か?
FXの取引はレバレッジをかけて、資金額以上の通貨を取引するのがスタンダードとなっている。
言い換えれば、トレーダーはFX会社からレバレッジをかけている分だけ借金をしている状態であり、あらかじめ規定されている証拠金維持率を上回るだけの口座資金を維持しておかなければならない。
一方、取引を重ねていく中で損失が拡大して、証拠金維持率を下回ってしまった場合はどうだろうか。
当然そのままでは「FX会社から貸し付けを受けられるだけの担保がない」ということになるため、追加の保証金を入金する必要がある。すなわち、追証(おいしょう)が発生するのだ。
証拠金維持率が100%に規定されているFX会社を例に挙げると、ある特定の判定タイミングの段階で70%まで下回っていた場合、不足分となる30%分の入金を求められる。
通貨を保有するために必要とされる資金額と純粋な資産の割合
追証のあり・なしはどうやって決まっている?
先ほど触れた通り、FX取引において証拠金維持率を下回った場合は追証を支払う必要がある。
そして、もし資金が準備できない、あるいはさらに証拠金維持率が下落した際は、強制的にポジションが決済される「ロスカット」というシステムが発動する上に、FX会社が負担した分の損失を支払う可能性もあるのだ。
当然トレーダーにとっては大きな不安要素となることから、追証を支払う必要のないFX会社を採用したいところだが、日本の金融庁は投資家の損失補填を原則禁止しているため、国内のFX会社を利用する限り避ける手段はないといえるだろう。
ただし、金融庁の管轄下にない海外FXは例外であり、ほとんどの場合は既定の証拠金維持率を下回った分の追証は全額FX会社が負担する「ゼロカットシステム」を導入している。
急激な価格変動によって損失が拡大しても、ロスカットされるだけで済むのだ。
したがって、金融庁に届け出ている国内FXは追証を支払う義務がある一方、ゼロカットシステムを導入している海外FXであれば、基本的に追証が発生しないといえるだろう。
注文してから決済をおこなうまでの取引を指しており、建玉とも呼ばれる
追証がないことのメリット
- 口座資金以上の損失が発生しない
- リスクを取ったハイレバレッジ取引がしやすい
ここからは、追証が発生しないことのメリットについて確認する。そのあとに解説するリスクに対する理解を深めるためにも、ぜひ参考にしてほしい。
口座資金以上の損失が発生しない
基本的に追証が支払えない場合はロスカットが執行されて返済が完了する。しかし、急激な値動きによって証拠金維持率が一瞬で0%以下になった場合は、その時点で発生した超過分も支払わなければならない。
少し極端な例であるが、口座に入金していた100万円がゼロになるだけでなく、プラスで50万円を負担しなければいけないとうケースもある。
つまり、追証がなければプラスの負担がなくなることから、口座資金以上の損失を心配しなくて済むメリットがある。
リスクを取ったハイレバレッジ取引がしやすい
国内FXは金融庁の定めたレバレッジ規制を遵守する必要があるため、原則として25倍を超える倍率を設定することはできない。
一方、海外FX会社の場合は、200~1,000倍といった規格外のレバレッジを提供しており、ゼロカットとハイレバの両方が利用できるのだ。
余剰資金が10万円あるとすれば、ゼロカットシステムよって口座資金以上の損失を負担する必要がなく、最大レバレッジをかけて取引することも可能となる。
追証を導入しているFX会社では20、30万円と損失が拡大する可能性もある点を考慮すれば、こちらもメリットといえるだろう。
追証がないことのリスクや危険性
- スプレッドが広いケースが多い
- 追証が発生する可能性もある
- FX会社が倒産するリスクがある
さきほどのメリットを踏まえた上で、ここからは追証がないことのリスクや危険性を解説していく。
一見すると大変便利に思えるゼロカットシステムだが、決して万能な仕組みではないことを理解してほしい。
スプレッドが広いケースが多い
追証が発生しないFX会社はトレーダーが抱えた損失を肩代わりすることから、スプレッドを広く設定しているケースが多い。
メジャーな通貨ペアであるドル/円を例にあげると、追証を導入している国内FX会社は0~0.3銭が平均的である一方、海外FXは1~2銭と大きな差がある。
そのため、ゼロカットシステムで削減できるコストよりも、日々積み重なっていくスプレッドの負担の方が結果的に大きくなってしまう可能性が高く、トレーダーは気付かぬうちに損をしている場合があるのだ。
参考までに、FX取引は追証やロスカット水準に到達する前の段階で損切りをおこなうのが基本であるため、そもそもゼロカットシステムの利用を前提とした運用は健全とはいえない。
きちんと自主的に逆指値などを置いて損失の抑制を徹底すれば、スプレッドの狭いFX会社の方がトータルのコストは低いだろう。
<損切り>
建玉に発生している損失を確定させて、それ以上含み損が拡大しないようにすること
<逆指値注文>
「価格が指定した水準まで下落したら買い」「価格が指定した水準まで上昇したら売り」という注文方法
追証が発生する可能性もある
ゼロカットシステムといえど、あまりに強烈な値動きが発生した際は、追証が発生する可能性もある。
事実、2015年にスイス国立銀行が発表した対ユーロの上限撤廃(通称スイスフランショック)によって、ドル/スイスフラン相場が短時間のうちに約47円下落した際は、あまりに膨大な損失額を受けてゼロカットを謳っていたFX会社が追証を請求する事態に発展している。
すべてのFX会社がそういった判断をするわけではないが、「ゼロカットシステムを採用していても追証を要求される可能性はゼロではない」という認識は持っておかなければならない。
FX会社が倒産するリスクがある
追証なしのFX会社はトレーダーの肩代わりをおこなうほど負担が増えていくことから、資金力に乏しい場合は倒産してしまうリスクもあるだろう。
実際のところ、先ほど触れたスイスフランショックにおいては大手FX会社も破綻を余儀なくされている。
また、FX会社が信託保全や倒産時の補償を講じていない場合は、トレーダーが預け入れていた資金をそのまま事業立て直しの費用に充ててしまう可能性があり、結果的に一銭たりとも手元に戻ってこないケースがあるのだ。
なお、金融庁は2010年から信託保全の実施を義務付けているため、国内FX会社が倒産しても少なくとも一定額はトレーダーの元に返還される可能性が高い。
顧客からの預かり資産とFX会社の資産を分別する資金管理方法
追証が発生しないFX会社にはメリット以上にリスクがともなう
追証が発生しないFX会社は口座資金以上の損失が発生せず、余剰資金を使用したハイレバレッジの取引をしやすいメリットがある。
ただし、トレーダーの損失を補填する性質上スプレッドが広く設定されているケースが多いことから、最終的に蓄積されるコストは追証で支払う金額よりも大きくなる可能性が高い。
また、強烈な価格変動が発生した場合は、追証が請求されるリスクもある。
さらに、あまりにも膨大な損失額となった際はたとえ大手FX会社でも倒産することがあり、金融庁が義務付けている信託保全を講じていなければ、預け入れていた資産を完全に喪失してしまう危険性も考慮しなければならない。
そもそも追証やロスカットはFXにおいて最も避けるべき要素の1つであり、裏を返せばきちんと損切りを徹底している人であれば、基本的に執行される機会自体が少ないのだ。
スプレッドや倒産時の信託保全を踏まえれば、むしろ追証を導入している国内FXの方が安全な取引ができる環境であり、トータルコストの削減にも繋がるだろう。
FXにチャレンジしようとしている人は、追証不要というメリットだけでなく、運営体制が健全且つ将来的に積み重なっていくスプレッドの負担が軽減できるFX会社を採用し、損切りを徹底して追証を回避するスキルを磨いてほしい。