FXにおけるレバレッジの仕組み|かけ方やリスク・計算方法を解説

FXのレバレッジとは
レバレッジとは、直訳すると「てこの原理」である。てこの原理とは小さな力で大きなものを動かしたり、わずかな動きで大きな運動に変換させる物理的作用を意味する。
FXのレバレッジとは、担保となる自己資金(取引証拠金)にレバレッジをかけることで何倍もの金額で為替取引ができる仕組みである。
1万円でレバレッジをかけた場合
- レバレッジ5倍→1万円×5=5万円
したがって、1万円の資金で5万円分の取引ができる。 - レバレッジ10倍→1万円×10=10万円
したがって、1万円の資金で10万円分の取引ができる。 - レバレッジ25倍→1万円×25=25万円
したがって、1万円の資金で25万円分の取引ができる。
レバレッジをかけることで得られる利益も大きい。FXに人気が出た大きな要因の一つが、少ない資金で大きく利益を狙えるレバレッジなのである。
利益が得られる反面、価格が反対に動けば損失を出してしまうリスクもある。上記の利益額と同じくらいの損失額が発生することも理解しておくべきだ。
レバレッジは最大何倍までかけられる?計算方法は
国内FXと海外FXでも規制は異なるが、レバレッジをかけられる最大倍数は決まっている。
国内は25倍・海外は規制なし
日本国内の場合、レバレッジは最大25倍と規制がある。
国内でFXが民間に導入されたのは1988年。当時はレバレッジが最大400倍までかけることができた。
しかし、高いレバレッジをかけ続けることで、大きな損失を出すユーザーも少なくなかった。
そのため、2009年に「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を交付し、2レバレッジを最大50倍までに規制した。さらに2011年8月から現在の最大25倍となっている。
一方、海外ではレバレッジの規制は基本的にない。FX取引所によるが、現在実際に提供されている最大レバレッジは500~3000倍と大きくなっている。
レバレッジの計算方法
レバレッジは取引量と有効証拠金(口座に預けてある自己資金)をもとに求めることができる。レバレッジの計算式は以下の通りである。
(現在の通貨レート×取引数量)÷証拠金
例:
米ドル/円→1ドル=110円(現在の通貨レート)
10,000通貨で取引(取引数量)
口座内の証拠金=\100,000円
(110円×10,000通貨)÷100,000円=11
よってレバレッジは11倍となる。
必要証拠金の計算方法
必要証拠金とは、取引に最低限必要な口座資金のことである。必要証拠金の計算方法は以下の通りだ。
通貨の現在レート×取引数量÷最大レバレッジ
例:米ドル/円→1ドル=110円
10,000通貨(取引数量)
最大レバレッジ25倍(国内)
110円(現在レート)×10,000通貨(取引数量)÷25倍(最大レバレッジ)=44,000円
上記のような取引の場合、必要証拠金は44,000円となる。
レバレッジをかけて取引するメリット
FXで取引をする魅力の一つがレバレッジである。レバレッジをかけることでどのようなメリットを得られるのか解説していこう。
少ない資金で大きな取引ができる
レバレッジをかけるメリットの一つが、少ない資金で大きな取引ができることである。
たとえば、自己資金50万円で取引をおこなう場合、最大レバレッジ25倍をかけることで1,250万円分の為替取引が可能。
外貨預金などの他の為替取引では、FXのようなレバレッジ取引は存在しない。したがって自己資金以上の取引ができるのはFXの大きな特徴である。
リターン(利益額)が大きい
レバレッジをかけて取引をするとリターンが大きくなる。たとえば自己資金10万円で現在レートが米ドル/円で100円だった場合で見ていこう。
レバレッジ1倍の場合、10万円で買えるポジションは1,000米ドル。レートが101円になると、利益は1,000円となる。
レバレッジを25倍にすると、10万円で買えるポジションは10万円×25で25,000米ドル。101円にレートが動くと、利益は25倍の25,000円となる。
このようにレバレッジを効かせることで、得られる利益が大きくなる。
短期的に資産形成できる(複利効果)
FXではレバレッジにより短期的に資産形成ができる。FXなどの投資商品は複利効果を利用して資産を増やしていくことが可能である。
複利とは投資で獲得した利益を再投資して大きな利益となる仕組みだ。FXでは複利の力を利用し、資産形成のスピードを上げることができる。
複利の計算方法は以下の式がある。
- 複利=元本×(1+年利率)^運用年数
「^」は累乗
実際に数字を入れて見ていこう。自己資金(元本)100万円/年利率3%/運用年数5年とする。
(千円以下四捨五入)
- (1年目)103万円
- (2年目)106.1万円
- (3年目)109.3万円
- (4年目)112.6万円
- (5年目)115.3万円
上記は複利でみた資産の増え方であるが、FX取引での資産運用を見ていこう。取引通貨ペア:ドル円/レバレッジ:3倍/1日10pips/初期資金10万円/損失が出なかったと想定する。(1,000通貨単位)
- (1年目)約20.1万円
- (2年目)約43万円
- (3年目)約95.1万円
- (4年目)約212.9万円
- (5年目)約479万円
レバレッジをかけた資産推移の方が年利3%の複利よりも大きいことがわかる。これがレバレッジでの複利運用の違いである。
上記のレバレッジを利用した場合は日々利益が取れている想定での複利であるため、数字が大きくなっている傾向はあるが、それでも福利の効果が大きいことは数字から理解できるだろう。
レバレッジのリスク・注意点
FXではレバレッジをかけることで利益を得ることができるが、損失が出る可能性もある。レバレッジのリスクや注意点を一つずつ解説していこう。
ロスカット(強制決済)による損失で大きく資金が減る
ロスカットとは強制決済のことで、FX会社が設定している投資家の資金保護を目的とした仕組みだ。
レバレッジをかけすぎると、ロスカットにより資産を大きく損失してしまう可能性がある。
ロスカットは証拠金維持率が100%以下になると発生する。(FX会社によりロスカット発生基準は異なる)証拠金維持率とは、必要証拠金に対する自己資金の比率のことである。
追加証拠金(追証)の発生で借金を背負う場合がある
レバレッジによるリスクの一つとして追加証拠金(追証)がある。追加証拠金は、取引により発生した損失がFX会社の規定する「証拠金維持率」を一定の割合で下回ってしまった場合に追加で証拠金を入金する必要がある。
追加入金は支払い期限が設定されており、期限内に追加証拠金の支払いができなかった場合、保持しているポジションが強制決済され損失の補填が行われる。
それでも損失が賄えない場合には損失額の一括支払い(事実上の借金)をFX会社から請求される。
レバレッジで失敗しないためにはどのようにすればよいのか
レバレッジのかけすぎで失敗しないためにはどのようにすればよいのかを解説していこう。
レバレッジ1倍で取引をする
FXを始めたばかりのユーザーは取引に慣れるまでレバレッジを1倍での運用がおすすめである。レバレッジ1倍のメリットはロスカットリスクが低いことにある。そのため資産の損失を抑えることが可能だ。
レバレッジ1倍を利用した場合の期待リターンは、レバレッジ10倍や25倍に比べると大きくはない。しかし、FX取引で大切なのは損失額は小さく、利益額を大きくする「損小利大」の考え方である。
そのため、一度の取引での利益は少ないが、損失を最小に抑えることができるレバレッジ1倍での取引は、これからFXを始める人には安全な方法と言えるだろう。
無理なレバレッジのかけ方をしない(10倍以下)
FXで失敗しないためには、無理なレバレッジをかけないことがポイントである。国内では、証拠金に対し最大25倍までのレバレッジをかけられる。
しかし、あくまでもレバレッジ25倍は有効証拠金にかけられる最大限の数値であり、すべての取引で25倍をかけるのは損失リスクの方が大きく危険である。
FX取引に慣れないうちは1倍→3倍→5倍→10倍と段階的に増やしていくとよい。
無理に高いレバレッジをかけると、金額の大きさに焦りや不安などのメンタルに影響が出る。そのためユーザが落ち着いて取引ができる範囲でレバレッジをかけるのが失敗しないためのポイントとなる。
十分な証拠金を用意する
FXを始める前に十分な証拠金を用意する必要がある。FXではレバレッジをかけることで利益を得ることができるが、損失を出すことも想定しておかなければならない。
そのためには仮に損失を出してしまったとしても、資金に余力があることでロスカットや追証の発生を抑えることができる。
証拠金を10万円と5万円で比較してみる。レバレッジは10倍で米ドル円のレートが1ドル=100円で10lotで買いポジションを入れたと仮定する。
5万円の場合はロスカット水準が約99.4円。10万円の場合はロスカット水準が約94.5円あたりとなる。
同じ条件で取引をした場合、5万円よりも10万円の証拠金を用意しておくことでロスカットのリスクは低くなる。したがって十分な証拠金の準備が大切である。
レバレッジに関するQ&A
FXのレバレッジに関する解説をしてきたが、ここではレバレッジの細かな疑問を解説していく。レバレッジ取引のQ&Aは以下のものがあげられる。
レバレッジ規制のない海外では追証は発生しないの?
海外のFX取引所の多くは「ゼロカットシステム」を採用しているため、追証は発生しない。
ゼロカットシステムとは、取引で証拠金よりも大きく損失が出た場合に、取引所がマイナス分を補填し損益をゼロにする仕組みだ。これは大きなメリットに見えるが、注意すべき点もある。
ゼロカットシステムを採用している海外のFX取引所は、基本的に金融庁での業者登録ができない。
そのため、海外の取引所で入出金などのトラブルがあった場合、自己責任で対処しなければならない。
必要証拠金は最低どのくらい必要?
FXを始めるにあたり証拠金として用意する資金は、ある程度評価損失が発生しても問題がないように、余裕を持って用意しておこう。
たとえば1ドル=100円だった場合、最小取引通貨単位が1,000通貨なら約4,000円から取引できる。
最小10,000通貨のFX会社の場合には約40,000円で取引が可能である。しかし証拠金が最小の場合、すぐにロスカットになる可能性が高く危険だ。
そのため1,000通貨なら5万円以上、1万通貨なら10万円以上は少なくとも用意しておく必要がある。
レバレッジの変更はできるのか
レバレッジの変更するには、基本的に次の2つの方法がある。
レバレッジ設定が選べるFX会社を選ぶ
FX会社の中には「1倍コース」「10倍コース」「25倍コース」などのレバレッジ設定を選べるところがある。
例えば楽天証券や外貨ex byGMOではレバレッジのコースが用意されており、ユーザーが自身で最大レバレッジを選択することが可能となっている。
実効レバレッジで自分で調整する
実効レバレッジとは、有効証拠金(FX口座に入金している資金)に対して現在保持している未決済ポジションに対しての実際の倍率を指す。
国内のレバレッジは原則25倍であるが、取引数量を調整して10/25倍に調整できる。