FXのスキャルピングとは?メリットや注意点・取引手法を解説

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FXのスキャルピングとは

FXのスキャルピングとは、数分から数十分、あるいは数秒で取引をおこなうトレードスタイルである。

まずはスキャルピングの基本知識について見ていこう。

1度に数pips程度の利益を狙う

「pips」とはFXにおける共通単位であり、米ドル/日本円が100.456円の場合は後ろから二桁目の「5」が1pipsに相当する値となる。

デイトレードの目標利益は一回の取引で数十pips分、スイングトレードは100pips程度になる一方で、新規注文から決済を数秒から数十分でおこなうスキャルピングでは、1から10pipsほどの利益を狙うのが基本である。

そのため、一度に大きな利益を狙うのではなく、少しずつ利益を積み重ねるようなトレードスタイルといえるだろう。

用語解説

<デイトレード>
1日でエントリーから決済まで完了させるトレード
<スイングトレード>
数日から1週間の間に取引を完了させるトレード

取引量を多く設定してこまめに損切りする

為替相場は、通貨発行国の経済情勢悪化や政策金利の下落などによって、レートが急激に変動するケースがあり、建玉(を保有する期間が長いほど大きな価格変動に巻き込まれる確率が高まる。

その際、口座資金に対して取引量を多く設定していると、含み損に耐え切れずロスカットされてしまうことがある。

ここではより理解を深めるために、取引量とロスカットの関係性について触れておきたい。

たとえば、米ドル/日本円110円の際にレバレッジ25倍、60万円の口座残高、10万通貨で取引をおこなった場合は次のようになる。

  • 110円×10万通貨=1,100万円
  • 1,100万円÷25=44万円(最低限必要な資金額)
  • 口座残高60万円-44万円=16万円

そして、10万通貨であれば1pipsあたりの利益が約1,000円と大きくなる一方、160pips程度の逆行でロスカットされてしまうため、数百pipsが変動するケースもある長期保有においては、取引量を半分程度に抑える必要があるだろう。

そのため、数秒から数十分という短時間で取引が完結するスキャルピングでは、長期保有の価格変動リスクが低く、尚且つ10pips程度の逆行でこまめに損切りすることから、スイングトレードよりも取引量を多く設定するのが基本である。

用語解説

<建玉>
新規注文してから決済をおこなう前の取引(ポジションとも呼ばれる)
<ロスカット>
一定以上の損失が発生した際、FX会社によって強制決済される仕組み
<レバレッジ>
証拠金として預けている金額以上のトレードができる仕組み(国内では最大25倍までトレード可能)

スキャルピングのメリット

FXで利益を重ねていくためには、トレードスタイルごとのメリットを把握することが重要である。ここからは、スキャルピングのメリットについて解説する。

ボラティリティが低くても高頻度で取引できる

ボラティリティとは、一定期間の値動きの勢いを指しており、相場全体の取引量に応じて変動する特徴を持っている。

したがって、参加トレーダーが減少する日本時間の早朝や、世界的な休日にあたるクリスマスシーズンはボラティリティが低下することから、一度に数十pipsの利益を狙うデイトレードなどは十分な値動きが確保できないため、取引自体を控えるのが得策だろう。

一方、想定利益の幅が数pips程度のスキャルピングであれば、ボラティリティを考慮する必要があまりなく、10pips程度の変動があればいつでも取引できるメリットがある。

損失を抑えることができる

スキャルピングは1度に狙う利益が小さい分、10pips程度逆行した時点で損切りをおこなうのが基本であるため、他のトレードスタイルよりも損失を抑えることが可能である。

ただし、このメリットは損切りルールを徹底して守れる人が享受できるものであり、損失が許容できず頻繁にデイトレードに切り替える癖がついてしまうと、逆に損失機会が増えてしまう可能性もあるだろう。

そのため、どうしてもルールが守れるか不安な人は、注文した段階で逆指値の決済を設定しておくなどの対策がおすすめである。

用語解説

<損切り>
建玉に発生している損失を確定させて、それ以上含み損が拡大しないようにすること
<逆指値注文>
「価格が指定した水準まで下落したら買い」「価格が指定した水準まで上昇したら売り」という注文方法

ファンダメンタルズ分析がほとんど必要ない

FXにおいては2種類の分析手法が存在しており、そのうちスキャルピングで重視するのは、チャートの形やインジケーターを利用して、将来的な値動きを予測する「テクニカル分析」である。

一方、もう一つの「ファンダメンタルズ分析」は、通貨発行国の経済状況などから、長期視野で通貨が買われていくかどうかを判断する。そのため、短期的に取引が完結するスキャルピングにおいては、ほとんど必要ないといえるだろう。

したがって、長期間建玉を保有するスタイルよりも、分析の手間が削減できるのは大きなメリットである。

ただし、為替相場全体の動向を把握しておくために、低頻度でもファンダメンタルズ分析はおこなうのがおすすめだ。完全に実施しなくていいわけではない点には注意してほしい。

インジケーターとは
  • チャート画面に描画して価格の反応を分析するためのツール
  • テクニカル分析では重要な要素となる

スキャルピングのリスクや注意点

ここからは、スキャルピングをおこなう上でのリスクや注意点について解説していく。現在スキャルピングを検討している人はぜひ参考にしてほしい。

損切りルールが守れないとロスカットの危険がある

取引量を多く設定できるスキャルピングは、1pipsあたりの利益だけでなく損失に関しても大きくなる点に注意が必要である。

そのため、損切りルールを確実に守ることができなければ、相場が大きく逆行した際に含み損が拡大しやすくなるだけでなく、ロスカットになり資金の大半を失ってしまう可能性もあるだろう。

したがって、スキャルピングでは1日の利益ではなく、1週間から1ヶ月単位の収支を黒字にするようなイメージを持ち、目先の損失を許容するスタンスが大切である。

チャート画面をチェックし続ける必要がある

スキャルピングは、取引が完結する時間が短い分、素早い判断や操作が必要となる。そのため、基本的に注文から決済、そして取引を繰り返す間はチャート画面をチェックし続ける必要がある。

したがって、スキャルピングをおこなう際は最低でも数十分から1時間程度のまとまった時間を確保するようにしよう。

スキャルピングを禁止しているFX会社がある

短時間で高頻度の取引をおこなうスキャルピングは、注文を処理するサーバーに負担をかける可能性があることから、スキャルピング自体を禁止しているFX会社も多くなっている。

違反した場合、口座が凍結されて取引自体がおこなえなくなってしまうため、口座開設の段階で規約をしっかり確認してほしい。

スキャルピングが可能なFX会社はこちら

スキャルピングのやり方

スキャルピングをおこなう際は、適切な時間足の選定や分析が重要となる。そこで、ここからはスキャルピングの具体的なやり方について解説するため、ぜひ参考にしてほしい。

相場のトレンドと反発ラインを把握する

まずは1時間や4時間足でテクニカル分析をおこない、相場の長期的なトレンドを判断してほしい。

これは、相場の細かい値動きを反映している1分足が下落トレンドであっても、全体の大きな流れとなる4時間足は上昇トレンドを形成していることが頻繁に発生するためである。

当然そういった状況で1分足だけを頼りに取引すると、大きな逆行に巻き込まれて損失が膨らんでしまうだろう。

また、その際に価格が頻繁に反発しているレジスタンス・サポートラインを見つければ、適切な注文のタイミングをより明確にできる。そのため、代表的なインジケーターである移動平均線などを活用するのがおすすめである。

用語解説

<テクニカル分析>
過去の値動きから将来的な値動きを判断する分析手法
<トレンド>
相場の勢い(買い注文が強くチャートが右肩上がりであれば上昇トレンド、逆は下落トレンド)
<レジスタンス・サポートライン>
チャートが反発している価格(上昇が反転して下落している場合はレジスタンス、逆はサポートと呼ぶ)
<移動平均線>
過去の値動きを平均化して1本のラインにしたインジケーター(価格が触れると反発する傾向がある)

取引は1分足チャートでおこなう

分析によって相場全体のトレンドと反発ラインが把握できたら、1分足チャートを表示して早速注文をしていく。

ちなみに1分足は頻繁にローソク足が更新されていくことから、慣れないうちは注文操作が追いつかない可能性もあるだろう。

そういった場合は、まず取引量を最低限にして損失を抑え、試しにチャレンジしてみるのがおすすめである。

また、デモ口座を提供しているFX会社であれば、十分に練習してから実践に移行しても良いだろう。

ローソク足とは
  • 始値、終値、高値、安値といった値動きをローソクの形状にしたもの
  • その時間の最後の価格である終値が始値より高ければ陽線、逆なら陰線となる

決済する

注文して保有した建玉をチェックし、数pips程度の含み益を得ることができたら、決済して利益を確定させよう。

一方、反対に含み損が10pips程度発生してしまった場合は、それ以上損失が膨らまないように躊躇なく損切りすることが大切である。

含み益とは
  • 建玉に発生している利益であり、決済することで確定する
  • この反対を含み損と呼ぶ

スキャルピングはどのような人に適したトレードなのか

ここからは、スキャルピングが適している人を解説していく。当てはまる場合は、チャレンジを検討してみよう。

ある程度まとまった時間が確保できる人

スキャルピングは取引している間、チャート画面をチェックし続ける必要があるため、1日の間に1から2時間程度のまとまった時間が確保できる人に適しているトレードスタイルだ。

10pips程度の値動きがあれば利益になるメリットがあることから、早朝や夜間など、どのような時間帯でも取引は可能である。

しっかり損切りができる人

損切りはスキャルピングにおいて最も重要な要素の一つであるため、しっかりと自分で定めたルールを守って、実行することが大切だ。

また、FXにおいては、損切りせずに建玉を持ち続けていれば利益に転じるケースも多いが、そういった場合でもメンタルを一定に保ち、気持ちを切り替えることも心掛けてほしい。

長期的にコツコツ利益を重ねていける人

スキャルピングは1度に得られる利益が少ないため、長期目線でコツコツ資産を増やしていくスタンスを持った人に適したトレードスタイルといえるだろう。

また、損失に関しても同様であり、1日の収支がマイナスになったとしても動じずに、週から月といった長期目線での黒字転換を目標にできれば、なおよいだろう。

スキャルピングが可能なFX会社

ここからはスキャルピングを公認しているFX会社を3社解説していく。

GMOクリック証券(FXネオ)

出典:GMOクリック証券(FXネオ)

FX取引高世界1位*を誇るGMOクリック証券(FXネオ)は、米ドル/日本円0.2銭、ユーロ/日本円0.5銭と業界最狭水準のスプレッドを提供しており、スキャルピングも禁止していないことから、存分に取引することが可能である。

また、独自取引ツール「はっちゅう君FX+」は、1クリックで注文できる操作性に加えて、画面配置も見やすく簡単に取引できる利便性を備えているため、初心者にもおすすめだ。

※Finance Magnates「2020年年間FX取引高調査報告書」において、2020年1月から12月のFX取引高(売買代金/ドル換算)1位を獲得。

JFX

出典:JFX

JFXは約定力99.9%を公表しており、スプレッドも狭い水準であることから、スキャルピングにマッチしたFX会社といえるだろう。

また、「スキャルピング対応」を明言したスマホアプリは、チャートを見ながら素早く発注することが可能であり、2つの通貨ペアの同時表示やレート更新速度といったアプリの動作設定についても自分好みに調整できる性能を備えている。

約定力とは
  • トレーダーがおこなった注文を通す力
  • FX会社のサーバースペックが高いほど思い通りの価格で約定される

ヒロセ通商(LION FX)

出典:ヒロセ通商(LION FX)

50種類もの豊富な通貨ペアを取り扱っているヒロセ通商も、スキャルピングを公認しているFX会社の一つである。

全7種類にもなる取引ツールを提供しているため、自分のレベルにマッチした仕様を選ぶことができ、スプレッドも狭く設定されている。

また、動画セミナーや専門性の高いレポートといった情報コンテンツも充実していることが魅力の、全体的に良質なサービスだ。

スプレッドとは
  • FX会社の指定する売値と買値の価格差
  • トレーダーにとっての実質的な取引コストとなる

スキャルピングは注意点を押さえて長期的な利益を狙おう

スキャルピングとは、数秒から数十分という短時間で取引が完結するトレードスタイルであり、一度に数pips程度の利益を狙うのが基本である。

そのため、コツコツと少しずつ資産を運用するスタンスの人にマッチしているだろう。

そして、短期的な相場の値動きを捉える特徴があるため、ほぼテクニカル分析だけで運用可能であり、ボラティティが低い相場でも取引がおこなえるメリットがある。

長期保有による価格変動リスクも軽減できることから、取引量を多く設定しつつ損失に関しても抑えることができる。

ただし、損切りを躊躇してしまうと含み損が拡大して、早い段階でロスカットになってしまうポイントに加えて、1時間から2時間程度のまとまった時間が必要となるデメリットも押さえておこう。

また、FX会社によってはスキャルピング自体を禁止しているケースもあるため、本記事を参考に注意点を踏まえて、堅実に利益を重ねていってほしい。

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(画像:Shutterstock)

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