【FX】豪ドル(AUD)の特徴や価格変動要因・今後の見通し

FXで利益を重ねていくには、チャートの形状だけでなく、取引している通貨発行国の経済状況や金融政策などを知って、将来的な値動きを分析することも重要である。
どのような理由で価格が変動するのかがわからないと、損失をだしてしまうことも少なくない。
この記事では、主要貿易相手国である中国の経済や、コモディティ相場の影響を受ける豪ドルの特徴をわかりやすく解説。
FXを始めたばかりで通貨の選定ができていない人はぜひ参考にしてほしい。
豪ドルの概要
豪ドルは、1966年に豪ポンドから切り替えられたオーストラリアの法定通貨であり、「オージー」の愛称でも親しまれている。
また、オーストラリアは金の生産量と銅の埋蔵量において世界2位の資源国であり、輸出シェアに関しても資源が約半分のシェアを占めている。
輸出品目 | 鉄鉱石 | 石炭 | 天然ガス |
---|---|---|---|
シェア | 32.0% | 12.0% | 10.0% |
そして、2008年時点までは政策金利が7.25%と高水準であったことから、先進国の中でも高金利通貨として知られていた。
しかし、2021年現在は0.1%と過去最低水準である。
国家の金融政策の中枢を担う中央銀行(日銀やRBAなど)が、一般の金融機関に資金を貸し付ける金利
豪ドルの流動性
豪ドルは、国際通貨基金(IMF)が管理するSDRの一つであることから、国際的な信用に加えて一定の需要を誇る通貨といってよいだろう。
SDRとは、IMFに加盟している国が出資している割合に応じて得られる「特別引き出し権」である。具体的には、加盟国の保有外資が不足した場合、SDRと引き換えにすれば、米ドルやユーロが受け取ることができる資金の補完手段だ。
また、国際決済銀行(BIS)の最新調査によれば、豪ドルの取引シェアは世界第5位にランクインしている。
通貨 | シェア |
---|---|
米ドル | 88.3% |
ユーロ | 32.3% |
日本円 | 16.8% |
英ポンド | 12.8% |
豪ドル | 6.8% |
カナダドル | 5.0% |
一方、このデータだけを見れば豪ドルは取引量、流動性ともに高水準のメジャー通貨のようにも思えるが、シェア自体は米ドルやユーロに比べればかなり小規模だ。
そのため、トルコリラやメキシコペソのような、流動性が低くボラティリティの高いマイナー通貨(取引量が少なく流動性が低い通貨)ほどではなくとも、経済状況の大幅な悪化といったインパクトの強いニュースが発信された際は、値動きが大きくなる可能性もあるだろう。
ボラティリティとは価格変動率である。米ドルのような取引量と流動性の高い通貨は、大きな注文が入ったとしても値動きの勢いを相殺し得る反対注文も入りやすいため、価格変動が比較的安定している。すなわちボラティリティが低い。一方、トルコリラのように取引量、流動性ともに低水準の通貨は反対注文が入りにくいことから、突発的に大きな価格変動が起こりやすい。
オーストラリアの金融政策
先ほど触れた通り、オーストラリアは2008年時点で7.25%と高金利に設定されていたが、その翌年以降は段階的に政策金利の引き下げをおこなっている。
この背景としては、低い金利で企業や個人が資金の借入れをおこないやすくして、インフレ率(物価の上昇率)の底上げや国内企業による雇用の促進といったRBAの金融政策が挙げられる。
そして、2020年初頭に発生したコロナウイルス感染拡大による景気の落ち込みによって金利引き下げの勢いが加速し、現在の0.1%という低水準に至ったのである。
- オーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia、略称:RBA)のこと
- オーストラリア連邦の中央銀行であり、豪ドルのポリマー紙幣唯一の発券銀行である
豪ドルの価格変動要因
豪ドルを取引する上で押さえておきたい、価格変動要因の3つのポイントについて見ていこう。
オーストラリア経済指標
豪ドルを取引する際は、オーストラリアの経済指標発表から国の経済状況を判断する必要がある。具体的には次の指標をチェックしてほしい。
経済指標 | 概要 |
---|---|
政策金利発表 | RBAによる政策金利発表 |
GDP(国内総生産) | 1年、あるいは1ヶ月といった一定期間のうちに生産されたモノやサービスの価値 |
雇用統計 | オーストラリア全体の雇用の状況を計る指標 |
CPI(四半期消費者物価) | 四半期毎のモノやサービスの物価の動きを示し、インフレ率などが判断できる |
PPI(豪州卸売物価指数) | 四半期毎の製造業界の販売価格であり、インフレ動向が判断できる |
このような経済指標では、市場の予測から乖離すると大きな値動きに繋がる傾向があるため、どの程度乖離するとどのような値動きになるのか、想定しておくことが大切だ。
また、元々が高金利通貨であったため、市場の注目は「いつ政策金利が引き上げられるか」という点にも集中していることから、RBAの政策金利発表は欠かさずチェックした方がよいだろう。
鉱物・エネルギー資源相場
オーストラリアは世界トップクラスの資源国であり、経済的にも輸出産業の依存度が大きいため、金やプラチナ、銅、石油などの相場は特に注目してほしい。
チェックする方法としては、CFD(差金決済取引)のチャートがおすすめである。ここではCFDを詳しく解説する。
株式などは現金を用いて売買をおこない、売却代金を受領する流れとなるが、CFDは現物を取引するわけではない。
証券会社に証拠金を預託して銘柄を選択し、価格変動によって生じた部分を証拠金との差額のみ決済するという方式だ。
そして、現物投資ではない性質上、通貨や株式ではなく鉱物資源やエネルギー資源、株価指数といった多彩な銘柄を取引できるのである。
また、鉄鉱石相場を例に挙げた具体的なチェック方法としては、鉄鉱石の価格が下落すればオーストラリアにとっては輸出の利益が減少し、豪ドルの売り注文が増加する。
逆に鉄鉱石価格が高騰した場合、豪ドルの買い要因となる。
中国経済
オーストラリア経済は、輸出産業が大きなウェイトを締めていることは先ほど触れた通りだが、その買い手となる貿易相手国の経済状況も同じく重要な価格変動要因といえるだろう。
具体的な輸出シェアは次の通りである。
輸出相手国 | シェア(%) |
---|---|
中国 | 36.4 |
日本 | 10.7 |
米国 | 6.3 |
このようにオーストラリアの主要相手国は中国ということがわかる。
したがって、中国経済が低迷して鉱物などを買う資金的体力が減少すれば、そのままオーストラリアへの経済的ダメージに繋がる可能性があるのだ。
具体的には中国の経済指標発表をチェックすることをおすすめする。GDPやCPIなどは欠かさず押さえておこう。
豪ドル/円のスプレッド・スワップポイント
2022年1月7日時点のFX会社のスプレッド・スワップポイントは次の通りだ。
豪ドル/円 | 外為どっとコム | DMM FX | GMOクリック証券 | みんなのFX | LIGHT FX | SBI FXトレード | LINE FX | 楽天FX | LION FX | 外貨ex byGMO |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
スプレッド | 0.5銭※1 原則固定※例外あり |
0.7銭 | 0.7銭 | 0.6銭 | 0.6銭 | 0.58銭※2 | 0.7銭 | 0.7銭 | 0.6銭 | 0.7銭 ※2 |
スワップポイント (買い) |
0円 | 1円 | 1円 | 1円 | 1円 | 1円 | 1円 | 1円 | 1円 | 0円 |
※1:スプレッド縮小キャンペーン」スプレッド(対象期間:2022年5月9日(月)午前9時00分~2022年6月4日(土)午前3時00分、提示時間帯:対象期間中の各営業日午前9時~翌午前3時)
※2:注文数量1,001~100万までのスプレッド最頻値
※2:午前9時~翌午前3時
豪ドルの今後の見通し
豪ドルにおける今後の見通しを立てる上で特に注目したいのは、現在低水準となっている政策金利が「どのタイミングで引き上げられるか」という点だろう。
まず現状、RBAは政策金利を0.1%に据え置くことを表明しており、2024年4月までを誘導目標としていることから、近々で利上げとなる期待はあまり持てない。
しかし、コロナウイルス感染拡大を受けた利下げ方向がストップし、景気刺激策の一環としておこなっていた国債の買い入れ額を減少させる金融緩和の縮小措置(テーパリング)をおこなう意向を見せている。
そのため、景気回復への兆しは徐々に見えているといってよいだろう。
また、RBAによれば、当面のGDPに関しては依然として前期比マイナス圏を推移することを予想してはいるが、2022年移行はプラス圏に持ち直すとの観測を示している。
このことから、投資家は2024年を待たず、景気回復による前倒しの利上げがいつおこなわれるか、そして利上げにともなって強い豪ドルに転じる動きが出る可能性があるだろう。
したがって、豪ドルの今後は次の2点を把握しておくことが大切だ。
- 利上げのタイミング
- 利上げの根拠となる経済回復
加えて、先ほど触れた経済指標の内容が好調になるかどうかをあわせて確認してほしい。
ただし、経済指標の内容が悪化、あるいはRBAの発言がネガティブに転じた場合は、期待値が高い分、失望の度合いも強くなり、豪ドル売りが発生する可能性もある点には注意しておいた方がよいだろう。
豪ドルはどのような人におすすめできる通貨か
ここからは豪ドルが持つ特徴を踏まえて、取引がおすすめできる人とそうでない人を解説していく。
- 鉱物・エネルギー資源相場との関連性が強い
- 中国経済の影響を受ける
- 政策金利の引き上げタイミングに注目が集まっている
それぞれ詳しく見ていこう。
豪ドルをおすすめできる人
豪ドルは世界トップクラスの資源国の通貨であるため、金やプラチナ、鉄鉱石などのCFDを取引している人なら、価格変動の予測が立てやすく、効率的に運用できるだろう。
また、テーパリングや量的緩和といったRBAの発言内容、そして国家経済と政策金利との関係性などが把握できており、中国人民元を取引しているのであれば、よりおすすめの通貨である。
経済を循環させるために市場へ資金を供給すること
豪ドルをおすすめできない人
CFDの取引経験がない、あるいは知識がないという人は豪ドルの効果的な分析ができない可能性がある。
ただし、分析手法自体は関連性の高いCFD銘柄の相場が下落すれば豪ドル売り、上昇なら買い、というシンプルなものであることから、最低限チャートの見方を習得しておけば対策は可能だろう。
また、RBAの発言内容やその他の指標の内容が理解できていない初心者も、将来的な利上げの予想が立てづらくなってしまうため、まずは金融用語や各指標がどんな内容を示すかを勉強してほしい。
必ずしも中国人民元を取引している必要はないものの、指標発表などから中国経済をきちんと読み取れなければ、豪ドルの取引はおすすめできない。
豪ドルを取引する場合の注意点
ここからは、豪ドルを取引する際の注意点を解説する。
中国の地政学リスク
オーストラリアは島国であるため、他国と地続きになっている大陸よりも地政学リスクが比較的低いと考えられる。
しかし、コロナウイルス感染拡大の起源を巡る対立にともない、主要貿易相手国である中国との関係性が悪化したことで、中国側が一部品目の輸入を制限するなどの制裁措置を講じている。
現状主要品目である資源類の制限には踏み切っていないため、経済的ダメージは比較的限定されてはいるが、今後の動向は注目しておいた方がよいだろう。
また、現在は香港国家安全法案の可決による米中関係に関しても悪化が懸念されており、米国からの経済的制裁が加われば、中国経済の下落要因に繋がることには注意してほしい。
ある特定の国、あるいはエリア間で発生する政治や軍事的な対立が別のエリアへ社会的な緊張をもたらすこと
大きな価格変動が発生するケースがある
先ほど触れた通り、豪ドルは世界でもトップクラスの取引量を誇るメジャー通貨の一つだが、全体的なシェアは米ドルや日本円、ユーロに比べれば小さな規模であり、流動性も十分に高いとはいえない。
そのため、普段は比較的安定した値動きであっても、経済指標発表の内容が市場の予想から大きくかけ離れている。
あるいは政府要人がネガティブな発言をおこなった場合には、注文が殺到して急激に価格が変動する可能性がある。
その際に自分の注文と逆方向にレートが動いてしまうと、損失が拡大してしまうケースもあるため、経済指標やマーケットニュースは欠かさずチェックする必要がある。
初心者は細かな経済指標のブレともいえる動きには一喜一憂せずに、大局感を見定めてゆっくりとしたスタンスでポジションを保有するようにしたほうがいいだろう。