FXと株の違いとは|取引の特徴から税制上の扱いまで詳しく解説

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FXと株は投資方法の代表格であり、個人投資家の主な選択肢だ。しかし、「投資」であること以外の特徴は、まったく別物と言ってよい。

また、どちらの方が儲かるということもない。大切なのは、どう運用するかだ。FXと株の違いを理解してから自分に合う方を選び、運用方法を検討しよう。

本記事では、投資対象や取引時間などの違いを比較形式で説明する。また後半では、比較できる項目以外も含めた双方の特徴と、投資家の状況や希望に応じてどちらを選ぶべきかを解説する。株とFXで迷っている人は参考にしてほしい。

FXと株の違い

FXと株では、投資対象から取引時間や税制に至るまで、さまざまな違いがある。ここでは、主な相違点を5つの項目に分けて解説する。

投資対象の価格の変動要因

株の投資対象は文字通り企業の株式、FXは「Foreign eXchange(外国為替)」の略で、投資対象は各国の法定通貨だ。

投資対象の価格変動要因は、株が個別具体的な事柄、FXが国内市場や国際情勢といった大きな事柄の影響といえる。具体的には次の通りだ。

種類 投資対象 価格の変動要因
企業の株式 ・企業業績
・企業の将来性への期待
・自然災害や天候
・投資家や景気の動向
・金利
・需要動向
・為替など
FX 各国の法定通貨 ・景気動向
・金利政策
・国のバランスシート
・国際情勢通貨発行
・政府の市場介入
・政府要人の発言
・大口投資家の動向など

株価の主たる変動理由は企業業績だ。そして、企業業績を左右する要因となる自然災害・天候、景気動向、金利、需要動向、為替なども関連している。

たとえば、猛暑続きによる作物の不足が懸念されると、国産の食品を取り扱う企業の株価が落ちやすい。

一方、FXは各国内の企業業績も含めた総合的な景気動向や政府の金利政策といった大きな事柄が影響する。

また、国への信頼度が法定通貨の価格に影響を与えるため、政府要人の発言も見逃せないポイントだ。

政府要人が自国の経済について前向きな発言をすれば好景気への期待感から価格が上がりやすいが、弱気な発言をすれば価格も下がりやすい。

取引時間

株式投資には取引時間に制限がある。FXは基本的に24時間取引可能と言われるが、24時間365日というわけではない。

種類 取引時間
国内株 平日9:00~11:30/12:30~15:00
※土日祝日・年末年始は取引不可
FX 月曜7:00~土曜7:00
※米国のサマータイム期間
月曜6:00~土曜6:00

国内株の取引きは平日のみ行われ、土日祝日・年末年始は取引できない。また、平日も前場と呼ばれる9:00~11:30と、後場と呼ばれる12:30~15:00に分かれている。

国内株は上記の通りだが、外国株は異なる。米国株式市場は日本時間23:30~翌6:00で、昼休みが存在しない。このように、取引する株の企業がどの国に属しているかで取引時間が異なるので注意しよう。

FXは土日を除く週5日間の24時間が基本だが、土日の区切りが米国・ニューヨーク時間だ。日本時間にすると月曜7:00~土曜7:00となる。

なお、24時間行われてはるが、各国の早朝深夜は活発な取引が行われないため、FXにおいて「東京市場」という場合には9:00~17:00頃を指す。

投資に必要な金額

株もFXも数千円から始められるため、投資に必要な金額自体は大差ない。ただし、投資金額で取引できる金額には大きな違いがある。この違いは「レバレッジ」によるものだ。

レバレッジとは日本語にすると「てこの原理」で、投資額(証拠金)以上の金額を取引できる仕組みを指す。

種類 投資に必要な金額 取引可能な金額(レバレッジ)
数千円~
(数万円~が一般的)
現物取引:1倍
信用取引:約3.3倍
FX 数千円~ 最大25倍

株取引は主に「現物取引」で、投資額と購入時の株価×数がイコールになる。また、100株単位の取引になるため、1株が数十円の株式なら数千円でも始められるが、日本企業は1株1,000円以上が多いため10万円以上が目安となる。

なお、株取引のもう1つの手段として「信用取引」があるが、証券会社に預けた保証金の約3.3倍までしか取引できない。

一方、FXは日本国内の証券会社において、最大25倍の取引が可能だ。つまり、4,000円の証拠金でも10万円相当の取引ができる。

ただし、投資額以上の取引ができることはメリットばかりではないので注意が必要だ。取引額が大きいほどリスクも大きくなる。なお、レバレッジについては、後半の「FXの特徴」で詳しく解説する。

配当とスワップポイント

株・FXともに、資産売却益(キャピタルゲイン)だけでなく、資産保有益(インカムゲイン)がある。

種類 インカムゲインの名称 金額を決定する基準 付与タイミング
配当 企業業績 年1~2回
FX スワップポイント 通貨ペアの金利差 毎日

株式を保有していると、その株式の企業の利益分から年に1~2回ほど配当金が付与される。まとまった金額を得られるのが大きな特徴だ。

また、配当金とは別に企業ならではの「株主優待」もある。企業の商品を貰えたり、優待価格で買えたりする。

ただし、企業業績が悪化している場合は配当金や優待がないこともある。

FXの場合は、一晩を超えて保有(オーバーナイト)している通貨ペアの金利差に応じて、スワップポイントが毎日付与される。

スワップポイントの値は各国の政策金利の差を基に証券会社が独自に設定するが、高金利通貨/低金利通貨のペアで高いポイントになりやすい。

たとえば、高金利通貨の代表格・メキシコペソと日本円の通貨ペア(MXN/JPY)では、メキシコペソ10,000通貨の保有で、スワップポイントを7円付与する証券会社がある。

一見すると少額だが、保有する通貨ペアが多ければスワップポイントの合計額も大きくなるため、1年間の保有で10万円以上のスワップポイントを得ることも可能だ。

手数料

手数料は証券会社によって異なるため、一概には言えない。

株の場合、取引金額(約定代金)に応じて手数料が変わるケースが多い。たとえば、A社は約定代金の最大1.265%が手数料になるが、B社では50,000円まで55円、10万円まで99円のように段階的に手数料が決められている。

FXの場合は、通貨ペアの売値と買値の差額(スプレッド)が実質的な手数料にあたる。スプレッド幅が狭いほど手数料が少ないということになるため、利益を得やすくなる。

税金

株・FXで得た所得は分類こそ異なるが、取引で得た所得分は申告分離課税で、損失が出たとしても給与・事業所得と損益通算はできない。なお、株式の配当は配当所得で、総合課税の対象になる。

種類 株式の譲渡 株の配当 FX取引・スワップポイント
所得の分類 譲渡所得 配当所得 雑所得
課税方法 申告分離課税 申告分離課税
または
総合課税
(累進課税)
申告分離課税
税率 所得税:15.315%
住民税:5%
【申告分離課税の場合】
同上
【総合課税の場合】
所得税:所得に応じた税率
住民税:10%
所得税:15.315%
住民税:5%
源泉徴収制度の有無 一部有

基本的には所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要だ。ただし、株取引で源泉徴収制度のある特定口座を選択している場合には、証券会社が源泉徴収を天引きして支払ってくれる。

とはいえ、確定申告で所得控除を利用すれば天引きされた税金の一部が戻ってくる可能性が高いため、確定申告は行おう。

株の配当金は、申告分離課税または総合課税のどちらかを選択できる。申告分離課税を選択すれば、そのほかの株取引で生じた譲渡損失と損益通算できるが、配当控除は受けられない。

総合課税を選択すると、配当控除は受けられるが、そのほかの譲渡損失と損益通算ができない。税率も変わるので注意しよう。

FXは取引による所得・スワップポイントともに雑所得で、課税方式は申告分離課税だ。損失が生じた場合には、最長3年間の繰り越し控除を受けられる。

FXと株それぞれの特徴まとめ

株とFXの違いがわかったところで、次は取引をイメージできるよう、それぞれの大きな特徴をまとめて解説する。

FXの特徴

FXの大きな特徴として、レバレッジ・取引時間の長さ・世界経済全体の影響・スワップポイントの4点が挙げられる。

レバレッジ

日本でFX取引をする場合、レバレッジは最大25倍だ。先述の通り、4,000円で10万円の取引ができる。なお、最大が25倍というだけで、実効レバレッジに下限はない。

10万円の証拠金で250万円相当の取引をすればレバレッジは25倍だが、100万円の取引をすればレバレッジは10倍だ。

レバレッジの倍率が高いほどに大きな金額を動かせるが、メリットばかりではない。米ドル/円の通貨ペアで10万円を元手(証拠金)にを取引した場合をシミュレーションしてみる。

元手(証拠金) 取引数量 レバレッジ 1米ドル=110円で決済した場合の利益 1米ドル=90円で決済した場合の損失
10万円 10,000米ドル 10倍 10万円 -10万円
10万円 25,000米ドル 25倍 25万円 -25万円

このように、レバレッジ倍率が高いほど、損失時の金額も大きくなる。なお、FXには「ロスカット」という仕組みがあり、再度値上がりまで長期的に待つことができない点にも注意しよう。

損失が一定以上に達すると証拠金を追加するか(追証)一部を決済しない限り、全通貨分が強制決済される。

取引の時間帯が長い

FXはニューヨーク時間の月曜~土曜なら24時間取引できる。そのため、日中は別の仕事や家事育児がある人でも、夜の時間帯に取引可能だ。

しかし、自分がチェックしていない時間でも常に市場は動いているため、高い利益を得られるタイミングを逃すだけならばまだ良いが、評価損が大きくなってロスカットになる可能性もある。

自分なりの時間ルールを設けて運用しよう。

世界経済全体が把握できる

FXは国際情勢や各国の金利政策など、世界経済全体に関わる情報によって左右される。そして、これらの大きな情報は、細かな情報が複雑に影響しあって形成されるものだ。

保有する通貨ペアの価格変動理由を深堀するなかで、経済全体への知識を深められるだろう。

今後、さまざまな投資にも挑戦していきたい人にとって、FXから始めることは知識を広げる意味でも有用な選択肢といえる。

スワップポイント

FXでは通貨ペアを保有している限り、その金利差分のスワップポイントが発生する。

支払った通貨の政策金利よりも買った通貨の政策金利が高ければ、ニューヨーク時間で1日が切り替わるタイミングで、スワップポイントがもらえるのがメリットだ。

ただし、支払った通貨の政策金利が買った通貨の金利を上回っている場合は、投資家がスワップポイントを毎日支払わなければならない。通貨ペアを購入するときは、金利差を必ずチェックしよう。

株の特徴

株の大きな特徴として、各企業の業績が株価を大きく左右すること・支払った金額以上のマイナスが生じるリスクがないこと(信用取引を利用しなかった場合)・取引時間に制限があることの3点が挙げられる。

特定の業種や企業に詳しくなる

個別銘柄の株式を購入する際は、その企業の財務諸表やIR情報を収集して分析しよう。

初めて見る人には難しく感じられるかもしれないが、勉強しながら見ていけば、その企業の経営状況やリスクが見えるようになってくる。

企業の事情がわかるようになれば、日常生活で製品やサービスを選ぶときにも役立つだろう。

また、株はFXとは違い「好きな企業」「応援したい企業」に投資をするという目的でも活用できる。好きな企業の株を買うことで優待を受け、愛用している商品を安く購入することも可能だ。

現物取引のため投資額以上のマイナスになるリスクがない

株式にもレバレッジの要素がある信用取引はあるが、一般的にはレバレッジをかけない現物取引だ。購入した株式は自分のものになり、自ら売却するまで強制決済されることはない。

そのため、株価がどれだけ下がったとしても、自分が投資した金額以上のマイナスになるリスクはゼロだ。

貯金に回すお金を株式投資にあてるのであれば、生活費を切り崩すような事態には陥らない。

ただし、3.3倍までの取引が可能な信用取引、あるいは借金をしてまで株を買っている場合は、株価が上がらなければ実質マイナスになるため注意しよう。

時間制限がある

国内株の取引きは平日9:00~11:30と12:30~15:00に制限されている。日中は忙しく株の取引ができない場合には、短期間の売買で利益を得ることは難しいだろう。

いわゆる「デイトレード」をしたいのであれば、平日の日中に時間を作る必要がある。

とはいえ、株式を中長期で保有し、配当金や優待を受けることが目的であれば、この時間制限はデメリットともいえない。

これから始めるにはどちらを選ぶとよいか

株とFXのどちらに投資するか迷ったときは、次の3つのポイントを軸に選ぶのがおすすめだ。もちろん、人によって細かな事情は異なるため、自分に合っているかどうかの判断基準の参考程度に考えよう。

日中チェックできない方の場合

平日の日中は仕事や家事育児が忙しく、取引する時間がない、しかし短期間で利益を確定させたいという場合はFXの方が適しているだろう。FXは24時間市場が開かれているため、出社前や帰宅後、隙間時間でも取引できる。

日中に時間がとれない人が株を選ぶという場合は、先述の通り、配当や優待を目的で銘柄を選ぶことをおすすめする。

注意点としては隙間時間に取引を行って利益が出るほど簡単な相場ではない。そのため初心者は中長期的な投資としてFXを利用する方がいいだろう。

リスクを大きく取りたくない場合

リスクを回避したいなら株が適している。株式投資の現物取引なら、投資額以上の損失を被ることはない。

そのため、投資額以上の取引ができる代わりに投資額以上の損失を被るリスクのあるFXよりは、低リスクといえる。「株価が〇%上がったら売却」と決めて運用すれば、コツコツ利益を積み上げることも可能だ。

ただし、FXでもレバレッジが1倍になるような取引をすれば、ロスカットになりづらく、投資額以上の損失もほとんどない。

低金利の通貨で高金利の通貨を買っておけば、スワップポイントという利益も得られる。運用次第ではFXも選択肢から外れることはない。

リスクを取って大きなリターンを狙いたい場合

ハイリターンを狙うならFXがおすすめだ。FXはレバレッジをかければ最大25倍の取引ができるため、少ない投資額でも大きな利益を得られる可能性がある。

しかし、リスクの高さは株の比ではない。レバレッジ比率を高くすればするだけ、評価損が生じたときのリスクも高くなる。ロスカットを防ぐために追証をつぎ込んでも、さらに値崩れすれば強制決済されて多額の損失を被りかねない。

大きなリターンを狙うことだけを重視せず、「レバレッジは3倍まで」「〇%の変動があったら決済」のように自分ルールを作って運用しよう。

株・FXともに自分ルールを作って運用できるかが重要

株とFXは似て非なるものだが、いずれにせよ「投資」をする際は自分ルールを作って運用することが重要だ。

たとえば、自分が取引をして10万円の利益を得た直後に「あと少し待てば50万円の利益になった」とわかると、損をしたような気持ちになるだろう。

しかし、大切なのは「50万円を狙えた」ということではなく「10万円の利益を得た」という結果だ。

株もFXもさまざまな要因で価格が変動するため、次も同じように値上がりするとは限らない。利益を確定できるタイミングを逃せば、一気に損失へ傾くこともある。

より高額な利益を狙うのではなく、確実に得られる利益を狙うことをおすすめしたい。

株とFXの違いを理解した上で「〇%の変動で決済」のようにルールを作り、それを守って利益を積み上げていこう。

当然ながら利益の幅と損失の幅というのは利益の幅が大きくなるような取引を心がけるということが大切である。

「利大損小」という言葉がある通り、利益は大きく損失は小さくということを繰り返すとトータルでは利益が積み上がるということが投資の基本ということを意識するといいだろう。

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(画像:Shutterstock)

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