FXはリスクが高い?借金を背負うことはある?リスク回避や対処法を解説

FXはリスクが高いのか?
FXは口座の資金を担保として、FX会社が指定するレバレッジの倍率分の通貨量を取引できる「信用取引」が基本であるため、利益だけでなく損失に関しても大きくなるリスクがある。
具体的には、自身の予想に反した値動きとなった場合に、損切りをためらえば含み損が拡大していく一方になり、証拠金維持率が一定基準を下回った際にはFX会社によるロスカットが執行されて、資金の大半を失ってしまうだろう。
しかし、仮に相場が逆行して含み損が発生しても「口座資金に対して取引量を小さく抑える」あるいは「損切りするラインを決める」などのルールを決めてしっかり守れば、最大限に損失リスクを回避することは可能と言える。
実際のところ、相場で利益を積み重ねている中上級者は、基本的にそういった自己ルールを忠実に守っている。
したがって、FXが危険なものになるかはトレーダー次第であり、適切な運用を心掛ければ、堅実に資産を増やすことができるだろう。
<損切り>
損失が発生している建玉を決済して、損失を拡大させないようにすること
<含み損>
トレーダーが行った注文に対して相場が逆行した際に発生する見込みの損失(建玉を決済すると損失が確定)
<証拠金維持率>
トレーダーが設定する取引量に最低限必要な資金(必要証拠金)に対する口座残高(純資産)の割合
<ロスカット>
含み損が拡大してFX会社が指定する証拠金維持率を下回った場合に強制決済される仕組み
FXで起こりえるリスクと対策
ここからは、ルール作りや計画性が不足している場合に起こりえるFXのリスクと、それぞれの対策について解説を行う。資金を守って運用していくためには重要なポイントであるため、ぜひ押さえてほしい。
追証(おいしょう)で資金以上の損失が発生する
追証とは追加保証金の略称である。
一定の判定タイミングにおいてFX会社が規定する証拠金維持率を下回っていた場合、維持率を規定水準まで回復させるよう追加入金を求められる仕組みとなっている。
追証基準を100%に規定しているFX会社を例にあげると、営業日が切り替わる日本時間早朝6時の判定(FX会社によって異なる)時点で、証拠金維持率が80%だった場合、不足している20%を追加入金することになる。
もし、これが「支払えない、あるいはさらに証拠金維持率が低下した」場合はロスカットとなる。
本来の追証はロスカットの前段階というイメージで問題ないが、今回あえて区別したのは、ある条件が重なることで口座資金を超える損失が発生する可能性を解説するためである。
実際のところロスカットというのは、規定水準以上の損失をトレーダーに与えないためにFX会社が設けているシステムである。
そのため、正常に執行されれば口座資金以上の損失には至らず、後から追証を支払う必要もないのが基本となっている。
しかし、ここで注意したいのが、一瞬で証拠金維持率が0%以下になってしまうほどの急激な値動きが起こった場合だ。
もしそうなれば、ロスカットが正常に動作せず資金額を超えた段階で損失が確定されてしまうため、その超過額を追証として入金しなくてはならない。
たとえば、口座資金が50万円であるにも関わらず、急激な価格変動によってロスカットが遅れると150万円分まで損失が膨れ上がり、FX会社への支払い義務が発生するということである。
こういったケースが頻繁に起こるわけではないが、相場参加者が減少する世界的な祝日などにおいて、大きな通貨量の注文が入ってもそれに対する反対注文が少ないことから、相場が一方向に暴落、あるいは高騰した事例は過去に存在する。
その代表的なものの1つが2013年1月3日のフラッシュクラッシュだ。
フラッシュクラッシュとは
年始の取引量が少ないタイミングで、大量の売り注文が入ったことで相場は大暴落。
米ドル/日本円やユーロ/日本円が一瞬で約5円変動して、買い注文を入れていたトレーダーは資金額を超える追証を負うことになったのである。
ちなみに米ドル/日本円の1日における平均変動幅は1円に満たないことから、どれほど凄まじい出来事だったかわかるだろう。
また、そういった際に取引量を多く設定していると数百万円以上の損失になる可能性もある。
FX会社へ追証を支払うために、借金を作ってしまうトレーダーも少なからず存在することを考慮すれば、早い段階から理解しておいてほしいリスクである。
相場が瞬間的に大きく変動すること
追証を回避するための対策
先ほど解説した通り、資金額を超えるほどの追証が発生するのは相場が一瞬で大きな変動を起こしたタイミングである。
したがって、相場の流動性が低下する日本時間早朝、あるいはクリスマス休日などの世界的な祝日、そして年末年始のトレードは極力控えることが大切と言えるだろう。
一方、通常の追証であっても含み損が拡大していることに変わりはないため、基本的には証拠金維持率が規定水準を下回った段階で入金ではなく損切りを行い、それ以上の損失が発生しないようにしよう。
ロスカットで資金の大半を失う
ロスカットはトレーダーの損失を限定するために行われるFX会社の措置となっているが、大切な口座資金の大半を失ってしまうことになるため、やはり避けるべきリスクと言えるだろう。
ちなみにロスカットが執行されてしまう代表的な原因としては、資金額に対して取引量が多すぎるというものがある。
たとえば、ロスカット基準が証拠金維持率100%、レバレッジ25倍、30万円の資金で110円の米ドル/日本円を10,000通貨取引すると仮定した場合の必要証拠金は次の通り
- 110円×10,000通貨÷25(レバレッジ)=44,000円
次にロスカット基準に達する際の口座残高は
- 必要証拠金44,000円×100%(ロスカット基準)=44,000円
そして、ロスカットまでに許容できる値動きは
- 口座残高30万円-ロスカット基準に達する口座残高44,000円=25万6,000円となる
以上の計算から、米ドル/日本円で換算すると25円分もの値動きに相当する約2,500pipsの含み損でロスカットとなるため、かなり余裕がある状態と言えるだろう。
しかし、より利益が得られるように取引量を6万通貨まで増やすと、わずか約60pips分の含み損でロスカットになってしまうのである。
また、含み損が拡大し続けているにも関わらず、損失が確定することを避けたい気持ちから、損切りを行わないことも代表的な原因であり、FX自体から撤退するトレーダーも少なくない。
<レバレッジ>
口座資金を担保に、設定された倍率分の金額が取引できる仕組み
<pips>
FXの全通貨ペア共通単位(正式名称はpercentage in point)
具体的には、米ドル/日本円のレートが100.000の場合、後ろから二桁目が1pipsにあたり、100.010までレートが上昇した場合は1pips上昇したことになる。
ロスカットを防ぐための対策
ロスカットを防ぐためには、自身のトレードスタイルにあわせて適切な証拠金維持率を保つことが大切だ。
数秒から数分で取引が完結するスキャルピングは、建玉を保有する時間が短く、含み損が発生したら比較的早い段階で損切りを行うことから300~400%が目安である。
そして、1日で取引を完結させるデイトレードは、ある程度の値動きに耐えられるように500~600%が推奨水準である。
数か月以上建玉を保有するスイング・ポジショントレードに関しては、比較的大きく相場が逆行しても問題ないように800~1000%を目安としてほしい。
一方初心者は、トレードスタイルに関わらず1000%(レバレッジ2倍~3倍程度)を保つようにすることでより安全に運用できるだろう。
また、10pips逆行したら損切りする、といった自身のルールを策定して必ず実行することも重要なポイントである。
資金が増えずに目減りしていく
ロスカットというわけではないが、利益を重ねることができず週単位、あるいは月単位で少しずつ損失が重なることで資金が目減りしてしまう可能性もある。
そして、最終的には口座資金がゼロに近い状態になってしまい、FXから撤退するトレーダーも多くなっている。
原因としては相場を分析するスキルが低いために、将来的な値動きを判断することができず、取引の精度を欠いていることがあげられるだろう。
資金を減らさないための対策
テクニカルチャートの適切な使い方を身につけて、相場が上昇、あるいは下落する兆候を読み解くスキルを磨くことが重要と言えるだろう。
そして、精度の低い無駄なトレードをしないためには、新規注文を行うルールを自身で策定し、「それらが満たされていない場合は一切発注操作をしない」という選択肢を持つこともおすすめである。
たとえば、代表的なテクニカルチャートである移動平均線をチャート画面にセットして、価格がラインに触れたら新規注文、そうでなければ取引は見送るなどの明確な判断基準を設けるとより効果的になるだろう。
<テクニカルチャート>
チャートに表示させて将来的な値動きを予測するFXの分析ツール
<移動平均線>
過去の一定期間の価格から平均値を算出し、一本のラインにしたもの
借金を作ってしまう
FXで借金を作ってしまうパターンとしては、先ほど解説した資金額以上の追証の他に、取引量を増やして利益を大きくするために口座資金として利用することも挙げられるだろう。
また、損切りによって発生した損失を補填するために借金をしてしまうトレーダーも存在している。
一見すると口座資金を回復できるようにも思えるが、実際のところは返済に対する精神的な焦りから取引量が過剰になってしまい、ロスカットとなって借金ばかりが残るということも少なくはない。
借金を作らないための対策
まず大前提として、生活に支障の出ない余剰資金で運用するのが基本であり、借金を資金に利用することは避けるべきである。
また、万が一ロスカットになって運用資金のほとんどを失ってしまった場合は、一度取引を控えて、また資金を貯めるようにしてほしい。
保有している資産の中から生活費などを除いた資金のこと
質の悪い情報商材を購入してしまう
たとえば、現在はインターネットやSNSで「月利100%以上の自動売買プログラム」「365日寝ててもお金が手に入る」などと謳う広告が存在し、一見すると大変魅力的にも思えるだろう。
しかし、それらの中には高額教材を販売するセミナーへの誘導、あるいは損失ばかりの粗悪な自動売買プログラムも存在しており、数十万円の費用を無駄にしてしまう場合もある。
したがって、FXを運用する上ではそういった質の悪い情報商材を購入してしまうリスクにも注意するべきだろう。
商材を見極めるための対策
FX市場には健全な商材や自動売買プログラムももちろん流通しているが、それらは絶対に勝てるわけではなく、あくまで自身の管理も必要不可欠ということを理解しておいてほしい。
したがって、必ず儲かるといったコピーの商材は質が悪いことが多いとも言える。
必ず儲かるのであれば、商材として販売せずに本人がそれを使って儲けるほうが効率的なのに、それをわざわざ販売するということは何か裏があると思ったほうがいい。
FX口座が凍結される
FX会社は原則として取引規約を策定しており、たとえば短期間で高頻度の取引を繰り返す行為(スキャルピングと明確に名指すことはあまりない)を禁止していることも多くなっている。
その他にも、取引規約に抵触したと判断されれば口座が凍結されてしまい、FXの取引自体ができなくなってしまうだろう。
凍結されないための対策
FX口座を開設する際、取引規約を事前に確認して禁止行為とされる内容を把握しておくことが大切である。
以下でその一例を紹介する。
<スキャルピング>
短期間の高頻度取引(許可しているFX会社もある)
<アービトラージ(裁定取引)>
価格が安いA社で買い、高いB社で売り、価格差が縮小した際に決済をおこなう行為
<他人名義の口座開設>
知人、友人はもちろん親族の名義を用いて口座開設をする行為
その他にも、取引とは関係のない入出金操作を禁止しているFX会社もあるため、詳細は自身で確認するようにしてほしい。
リスクを回避して上手にFXを始めるには
ここからは、リスクを回避して上手にFXを始めるための方法をいくつか紹介していこう。
FXはお金儲けのツールではないことを認識する
リスクを回避してFXを始めるには、専門的なスキルや知識を身につける前段階として、お金儲けのツールではなく、中長期的に資産を形成していく投資であるということを認識してほしい。
たとえば、1日で数十万円の利益を上げているトレーダーをSNSなどで見かけたとしても、それはこれまで地道に形成してきた大きな資産を元手に、無理のない取引量で運用している結果である。
したがって、証拠金が少なくスキルがともなっていないうちは、決して目先の利益を追い求めて取引量を増やしたりせず、週単位、あるいは月単位の収支をじっくりと黒字にするようなイメージを持つことが大切である。
自己ルールを順守する
FXを運用する上で、自己ルールの策定は必須と言えるだろう。
しかし、それ以上に重要なのはそのルールを徹底して守るということであり、とくに含み損の拡大を防ぐ損切りに関しては資産を守るために欠かせない要素である。
また、初心者は自身にとってもわかりやすくするために「移動平均線にタッチするまでは新規注文しない」などの明確な内容を心掛けよう。
自身にマッチする情報ツールを見つける
FXは各国の経済情勢や相場全体の動向を知ることも大切であるため、自身にマッチする情報ツールを見つけることも忘れずに行ってほしい。
たとえば、現在は為替相場に影響を与える情報を専門に取り扱った、情報ベンダーのサイトが豊富に存在している。
FXi24のようなインターバンクオーダーから相場全体の注文動向を把握できるものもあれば、ブルームバーグやロイターのように世界情勢を取り扱っているところもあるため、適切に使い分けることが重要である。
ちなみに情報を仕入れたとしても分析に活かす自信がないという方は、トレンドラインをチャートに自動描画するツール、あるいは現状の相場が上昇か下落トレンドかを知らせてくれるシステムを提供しているFX会社を利用すればカバーできるだろう。
FXは確かに資金を失ってしまうリスクをともなう投資であるが、自身の認識やルールの順守、そして適切な情報活用を行うことで、最大限に資金を守りつつ堅実に運用していくことができるようになる。
<情報ベンダー>
経済全般、そして株式や為替といった金融関連のニュースを取り扱う配信元
<インターバンクオーダー>
インターバンク(世界中の為替取引における中心となる銀行)における発注の状況
<トレンドライン>
高値同士、あるいは安値同士を結んだ一本の線(相場のトレンドをわかりやすく判断できる)