外貨預金からFXへ切り替える理由4つと違い
外貨預金とFXはどちらも海外通貨へ投資を行う。したがって、投資効果はほぼ同じだ。
投資効果は同じだが、コストや税制を考えるとFXの方が有利になることも多い。本記事では外貨預金とFXを比較し、なぜFXの方が有利になるのか、理由を述べる。
この記事の目次
外貨預金とFXの投資対象は同じ
外貨預金とFXの投資対象はどちらも海外通貨。同じものに投資するため、その効果は当然同じになる。
レバレッジ1倍ならほぼ同じ
ただし、レバレッジをかけたFX取引の投資効果は外貨預金と異なる。
レバレッジとは自己資金以上の取引を指し、FXでは最大25倍の取引ができる。例えば自己資金100万円の場合、2,500万円分の取引が可能だ。1米ドル=100円なら100万円で25万米ドル買える。
1米ドル=100円のとき 100万円で投資できる米ドルの数量
- 外貨預金:最大1万米ドル
- FX:最大25万米ドル
取引数量が大きくなると、当然リスクとリターンは大きくなる。したがって、レバレッジをかけるほど外貨預金と投資効果が異なってしまう。
なお、取引金額は任意に決められるため、自己資金と同額(レバレッジ1倍)の取引ももちろん可能だ。上記の例でいえば、25万米ドルではなく、1万米ドルにとどめておくと実質的にレバレッジ1倍の取引となる。このとき、外貨預金と投資効果はほぼ同じになる。
外貨預金と比べる際、FXはレバレッジ1倍の取引を前提とすべきだろう。
金利相当はスワップポイントとして受け取れる
外貨預金の魅力は円貨預金よりも高い金利にあるだろう。
FXでも金利相当をスワップポイントとして受け取れる。例えば米ドルを日本円から買う場合、仮に米ドル金利が2%かつ日本円金利が0%の場合、金利差の2%分がスワップポイントとして付与される。
スワップポイントはFX口座や日によって異なる。例えば「SBI FXトレード」で日本円から米ドルを1万米ドル分買ったとき、1日あたり5円が付与された(2021年5月27日時点)。年間では1,825円となる計算だ。当時1米ドル=110円程度なので、1万米ドルは約110万円。利回りは約0.17%となる(1,825円÷110万円)。
受け取れるスワップポイントは高金利通貨ほど高くなる。この点も外貨預金と同じだ。
外貨預金よりFXが優れる4つのポイント
ほぼ同じ投資効果が得られる外貨預金とFXだが、以下4つの点でFXの方が有利だ。
外貨預金 | FX | |
コスト (米ドル、往復) |
0.5~2円 (50~200銭) |
0~0.4銭 |
税金 | 総合課税(税率:最高55%) ※利息は分離課税(20.315%) |
分離課税(税率:20.315%) |
取引時間 | 1日1回 | 平日24時間 |
信用リスク | 銀行の信用リスク ※外貨預金はペイオフ対象外 |
信用リスクがない ※信託銀行で分別管理 |
【コスト】FXは125分の1
コストは明らかにFXの方が低い。外貨預金は円⇔米ドルの往復に数円(数百銭)程度かかるが、FXは1銭未満が普通だ。外貨預金を2円、FXを0.4銭とした場合、その差は125倍だ。中にはコスト0のFX口座もある。
投資効果がほぼ同じなため、コストが低いFXの方が大きな利益となりやすい。
外貨預金のコスト例(米ドル、往復)
三菱UFJ銀行 | 窓口:2円(200銭) インターネット:0.5円(50銭) |
三井住友銀行 | 窓口:2円(200銭) インターネット:1円(100銭) |
ソニー銀行 | 8~30銭 |
FXのコスト例(米ドル、往復)
ネオモバFX | 0銭 |
外為どっとコム | 0.2銭 原則固定※例外あり |
SBI FXトレード | 0~0.1銭 |
※20201年8月25日時点
【税金】外貨預金は最高税率55% FXは一律20.315%
外貨預金で得られる為替差益は雑所得として総合課税される。最高税率は約55%だ(住民税含む)。給与などと合算されるため高所得者ほど税率が上がりやすい。
FXで得られる利益も雑所得だが、特例で税率は一律20.315%だ。利益の額や所得の大きさの影響を受けない。
外貨預金の税率は個々人で変わるため一概にはいえないが、FXの方が税制上有利になることが多いだろう。なお、外貨預金の利息部分は利子所得として一律20.315%が分離課税される(利息から源泉徴収)。
両者20万円以下の利益は申告不要
どちらも一定以上の利益があると確定申告が必要だが、その基準は両者同じだ。例えば年収2,000万円以下の給与所得者の場合、他の雑所得と合わせて利益が20万円以下なら申告不要。
他にもいくつか条件があるため、詳細は税務署等で確認したい。
【取引時間】FXは24時間取引可能
外貨預金の受付時間は平日の日中のみ。レートは一般的に朝のレートで固定される。つまり、朝からのレート下落分は反映されない。
一方、FXは土日を除き24時間取引できる。祝日も取引可能だ。レートはリアルタイムで更新される。
【信用リスク】外貨預金はペイオフ対象外
外貨預金は預金保険(ペイオフ)の対象外。仮に銀行が破綻した場合、預金保険からの保護は受けられない。銀行の破綻リスクは一般に極めて低いが、留意しておきたい。
一方FXは20210年2月より顧客資金の区分管理が義務付けられた。FX会社は信託銀行などで顧客資金を保全し、さらに信託銀行は信託銀行の資産と分けて分別管理している。万が一FX会社が破綻した際も、その弁済に顧客資金が使われることはなく、選任代理人が返還を行う。つまり、FXにはFX会社の破綻リスクがない。
積立もFXで可能
外貨預金には積立商品があるが、FXでも提供されるケースが増えてきた。SBI FXトレードや外為どっとコムなどで積立FXが提供されている。
FXの注意点
高レバレッジ取引ではリスクが高くなる
上述したが、レバレッジをかけたFX取引は外貨預金と投資効果が異なる。取引金額が大きくなるためだ。
例えば1米ドル=100円のときに100万円分米ドルを買う場合、外貨預金なら1万米ドルを購入できる。一方、FXは最大25万米ドル分の買いが可能だ。このとき、レートが4円上昇すれば資産が倍になる(4円×25万米ドル=100万円)が、反対に4円下がると資産のすべてを失う。
高レバレッジは一般に中長期取引には向かない。外貨預金の代替としてFXを考える場合、レバレッジは1倍程度に抑えるべきだ。自己資金を大きく上回る金額で取引しないよう注意したい。
中にはレバレッジ倍率が低く固定された取引コースもある。次章で詳しく紹介したい。
取引単位が大きいケースがある
外貨預金にもいえるが、FXは最低取引単位が大きいケースがある。従来は1万通貨単位が多かった。米ドルであれば1万米ドル、2万米ドルと取引を行う。1米ドル=100円なら100万円単位の取引となり、金額を細かく調整できない。低レバレッジで行う場合は特に障害となろう。
もっとも、現在では1,000通貨単位のFX会社が多く、中には1通貨単位のFX会社もある。外貨預金の代替としたい場合、取引単位の小さいFX会社を選ぶべきだ。
外貨預金利用者に推奨されるFX口座
ここで、FXを外貨預金の代替とする場合に推奨されるFX会社を紹介したい。以下3つの基準で選択した。
- レバレッジ1倍コースがある
- 取引単位が小さい
- 積立FXがある
この基準に沿い、以下6つのFX口座をまとめる。
レバレッジ1倍コース | 取引単位 | 積立FX | 各社の特色 | |
SBI FXトレード | 〇 ※積立FX以外は最大25倍 |
1通貨 | 〇 | 取扱通貨ペア6社で最多 |
外為どっとコム | 〇 ※積立FX以外 最大25倍(個人の場合) |
1通貨 ※積立FX以外は1,000通貨 |
〇 | 6社で唯一24時間電話受付 |
MATSUI FX | 〇 | 1通貨 | ─ | 積立FXを除き、レバレッジ1倍で1通貨取引できるのはMATSUIだけ |
楽天FX | 〇 | 1,000通貨 | ─ | 楽天ポイントが貯まる |
FXブロードネット | 〇 | 1,000通貨 | ─ | 複数のコースを同時に持てる |
ネオモバFX | ─ | 1通貨 | ─ | ドル円スプレッド(取引コスト)0は唯一 |
積立FXは「SBI FXトレード」か「外為どっとコム」のみ
6社の中で積立FXに対応しているのはSBI FXトレードと外為どっとコムだけだ。積立外貨預金から切り替える場合は両者のいずれかから選ぶといいだろう。
コスト0で取引できるのは「ネオモバFX」のみ
ネオモバFXは1,000米ドル以下の取引に限り「米ドル/円」スプレッド(取引コスト)が0だ。他5社は原則スプレッドがかかる。
特に低コストを重視したい場合はネオモバFXを選ぶといいだろう。
FX以外にも分散したいなら「MATSUI FX」または「楽天FX」
MATSUI FXは松井証券が、楽天FXは楽天証券が提供しているFXサービスだ。両者は総合ネット証券として株式や投資信託など、さまざまな資産運用を提供している。
FX以外の運用方法も行う場合、両者のいずれかで口座を開くといいだろう。
「FXブロードネット」は取引コースを分けて管理できる
FXブロードネットは9つの取引コースを用意しており、複数のコースを同時に持つことも可能だ。
コースごとに資金管理をしたい方に向くだろう。例えば老後資金用や住宅資金用など、資金の性格別にコースを分けることで管理が容易になる。
人気のFX会社ピックアップ

「SBI FXトレード」は2011年設立、取り扱い通貨ペアは34種あり、うち33種の通貨ペアで1通貨単位の取引が可能だ。最大1,000万通貨の取引ができ、少額から大口まで幅広い取引に対応している。取引コストは業界内で最低水準だ。「米ドル/円」の取引コストは0.09銭(1,000通貨以下の取引)で、比較的低いコストで取引ができる。
「取引高」「口座数」「預かり残高」の市場シェアはトップクラス。
通貨ペア数 | 34(対円は19) |
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スプレッド(1000通貨まで) | 米ドル/円(0.28~0.30銭)/ユーロ/円(0.5銭)/豪ドル/円(0.4銭) |
ツール・アプリ |
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みんなのFXは「トレイダーズ証券」が提供するFXサービスだ。27通貨ペアを小口の1,000通貨から取引でき、取引コストは高シェアを獲得しているFX会社と同水準に低い。また、自動売買ツール「みんなのシストレ」を提供している。
通貨ペア数 | 27(対円は16) |
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スプレッド | 米ドル/円(0.2銭)/ユーロ/円(0.4銭)/豪ドル/円(0.6銭) |
ツール・アプリ |
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GMOクリック証券は2005年に創業した、GMOインターネット株式会社のグループ企業だ。インターネット専業証券会社として、FX取引サービス「FXネオ」を提供している。「取引高」「口座数」「預かり残高」の市場シェアはトップクラス。
通貨ペア数 | 20(対円は10) |
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スプレッド | 米ドル/円(0.2銭)/ユーロ/円(0.5銭)/豪ドル/円(0.7銭) |
ツール・アプリ |
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セントラル短資FXは創業100年超の「セントラル短資グループ」が展開するFX会社だ。25通貨ペアの裁量トレードができる「FXダイレクトプラス」のほか、22通貨ペアで自動売買ができる「セントラルミラートレード」口座が用意されている。
取引コストは市場シェアの高いFX各社と同水準であり、比較的低コストで取引できる。また新規口座開設で最大50万円キャッシュバックのキャンペーンを行っている。
通貨ペア数 | 25(対円は11) |
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スプレッド | 米ドル/円(0.2銭)/ユーロ/円(0.4銭)/豪ドル/円(0.5銭) |
ツール・アプリ |
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動画でもFXを勉強(松井証券によるFX動画の例)
たとえば「MATSUI FX」(通貨ペアの追加や主要ネット証券初の1通貨単位取引導入など、2021年2月にサービス内容がリニューアルされた)を運営する松井証券は以下のように動画でFXについて解説するシリーズを用意している。
FX初心者が見るべき情報一覧
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- FX口座開設と審査の対策、業者の選び方や注意点
- FX会社口座比較ランキング──スプレッド、スワップポイント、通貨ペア、タイプ別
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