ブロックチェーンによって到来した「Web3」時代。時価総額10億ドルを超えるユニコーン企業も続々と誕生する中、フロンティアの開拓者はどんな心構えでいるべきなのか? 

先駆者たちがWeb3を語るオンラインイベント
「UPDATE Small Business ベンチャー企業がおさえるべきWeb3─2022年に着⽬すべきトレンドとは powered by Dell Technologies」が2022年4月14日に開催された。

パネルディスカッションにはgumi創業者、Thirdverse、フィナンシェ代表取締役CEOの國光宏尚氏と、Fintech企業ナッジ代表取締役の沖田貴史氏が登壇、Web3の注目点やベンチャー企業が成功する条件、日本の課題などを話し合った。モデレーターは一般社団法人Fintech協会常務理事の貴志優紀氏が務めた。

イベント主催はbtokyo memberscoindesk JAPANがメディアパートナーを務めた。

スポンサーは、テレワーク整備・セキュリティ対策・ITインフラ構築など、中小・ベンチャー企業向けのソリューションを提供しているデル・テクノロジーズ株式会社。

「Web3」の本質とは?

パネルディスカッションは「Web3」とは何なのか、そしてどの点に注目すべきなのかという話題から始まった。

國光氏によると、Web3の技術面で注目すべきポイントは(1)トラストレスで自律的なDecentralizedネットワーク(2)NFT(3)DAOの3つだという。

もう一つ見逃せないのが、社会運動的な側面だ。

「インターネットはもともとカウンターカルチャー的なところがあり、個人の手に自由と権利を――Power To the Peopleみたいな感じがあった。ところが、気づけばいつの間にか個人のアイデンティティやデータ、富を巨大プラットフォームがコントロールするようになっていた」と國光氏は語る。

そこで失われた個人の自由と権利を「再び一般ユーザーの手に取り戻そう」というムーブメント、そして技術の2つが重なり合ったものが、今の「Web3」というわけだ。

Web3で変わる「金融」

この「個人に力を」という流れは、金融の世界でも起きている。沖田氏は「Web3で金融の民主化も加速する」と指摘する。これまでのユーザーは一方的にサービスを受けるだけの存在だった。しかし、DeFi(分散型金融)の登場などにより「みんなで創る金融」が可能になってきているという。

國光氏はWeb3金融を語る際のキーワードは「トラストレス」だと強調する。国の通貨や企業の○○ポイントなどと違い、ビットコイン(BTC)のような仮想通貨(暗号資産)には信用保証の主体がいない。マイナーも自分自身の利益のため、自律的・非中央集権的に動く。その違いが「極めて重要」なのだという。

従前のフリマサイトや暗号資産取引所など、数多くのプラットフォーマーは信用担保(トラスト)によって多額の利益を獲得してきた。しかし今後は、そういった役割がWeb3技術の「トラストレス」なコントラクトやコードによって代替されていくだろうと國光氏は話す。

「次に来る」ものを、どう見極めるのか?

ディスカッションの後半は、次世代のサービスを作り出すにはどうすればいいか? という話題から始まった。

沖田氏はビジネスを作り出すときは「UX」から考える、つまり「ユーザーが欲しがるモノ」から出発するという。

「最初から高尚なことを考えているわけではない。私が学生時代に起業したのは、インターネットでeコマースをしようとしたとき、必要な決済インフラがなかったからだ。eコマースには決済インフラがいるという、とても素朴なところから始まった」(沖田氏)

ブロックチェーンのように「ゲームチェンジャーとなる技術」が登場すれば、同時にユーザーが不便と感じること(ペイン)も現れる。大ブレイクしたOpenseaも、NFT取引の場が欲しいというユーザーのニーズに「シンプルに応えるサービス」だったと沖田氏は話した。

國光氏がマネージングパートナーを務めるgumi Cryptos Capitalは第1号ファンドで、Openseaなど36社に約20億円を投資。現在価値は約600億円に及んでいるという。その企業が勝つかどうかをどうやって見抜いているのか?

國光氏によると、勝つサービスのポイントは「そのテクノロジーならではのことを、1からやっている」ことだという。Openseaに目をつけたのは、「もしNFTが来るとすれば、どういうところが来るのか」を考え、「まずはNFTをつかった面白いコンテンツをつくるところ、2つ目はNFTが流通するマーケットプレイス、3つ目はNFTが動くプラットフォーム」という結論に至ったから。そのうえで、「PCでヤフオクが勝ち、モバイルでメルカリが勝ったように、NFT時代・Web3時代に勝つのは、Web3ファーストで作ったマーケットプレイスだろう」と、Openseaへの投資を決めたという。

Web3時代、日本の行方は?

締めくくりの話題は、「日本の未来をどう見るか」だった。

沖田氏は「カギとなるのは起業家(アントレプレナー)」と指摘。「政府はイノベーションを阻害する障壁を取り除くという意味では貢献してくれる。しかし道が平坦になっても、走る人がだらしなければ意味がない」と起業家養成の必要性を強調した。

國光氏は、ガバナンス・トークンへのみなし課税やカストディ規制など「日本には絶望的にやばい規制がいっぱいある」としつつも、「与野党議員の皆さんにも問題意識が共有されているので、改革されていくと期待している」と述べた。

国から企業への支援策としては「頑張っている人をより強くするしかない」と指摘。自力である程度の資金を調達できたベンチャー企業やVCに対し、レバレッジを効かせる形での追加出資をするよう提案していた。

また、国内の起業家・エンジニア不足については、教育改革が効果を発揮するまでの間、「外国人助っ人も必要」と強調。シンガポールとも競争できるレベルの特別税制を用意し、中国などより厳しい規制のあるエリアから優秀な人材を呼び寄せるべきだと話していた。

Web3は本当に「分散型」なのか?

会場からは「Web3といっても、結局はVCなどを中心とした中央集権的なものになっているのでは?」という質問が出た。

これに対し國光氏は「今までと比べ、Web3は明らかに非中央集権的だ」と回答し、次のように説明した。

従来型ベンチャー企業が資金調達をしながら上場する場合、株式保有の割合は「国によって違うが、ファウンダーが30%、コアメンバーが10%、VC(10〜15社)が60%程度だった」。一方、Web3型のガバナンス・トークン配分はコアチームが15%、VCが10〜20%程度。50%程度が「コミュニティ枠」として、将来の開発費やマイニング、リクイディティ、宣伝といった貢献への報酬としてプールされているという。

さらにWeb2企業の上場タイミングについても触れ、「UberやAirBnBが上場したとき、時価総額はすでに8兆円だった。みんなが株を買えたのは上場後だが、一部のVCは初期から投資できていた」と述べた。

國光氏はこうした観点から「現状、Web2時代に比べ、Web3型は明らかにDecentralizedされている。今までより遥かにマシだ」と結論付けていた。



|文・編集 btokyo members
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