3万5000人が熱狂、制度化へ進むビットコインと「トランプ×BTC」のリアル【寄稿 Bitcoin 2025レポート】

2025年5月、ラスベガスで開催された「Bitcoin 2025」(通称、BTC Vegas)は、まさに “ビットコイン史における転換点” を象徴するような3日間となった。

参加者数は過去最大の3万5000人超。まるでロックフェスのような会場の熱気は、他のWeb3カンファレンスとは一線を画していた。

特にスピーカーセッションの熱量は圧巻。注目セッションが始まると、メイン会場「Nakamoto Stage(ナカモト・ステージ)」には人が殺到し、椅子に座るには早めの場所取りが必須なほど。身動きが取れない混雑ぶりからも、今年の関心の高さが窺えた。

政治とビットコインの接近──「制度化」と「理想」のせめぎ合い

今年のカンファレンスで印象的だったのは、例年以上に強まった “政治色”。トランプ陣営をはじめ、共和党関係者の登壇が相次ぎ、ビットコインがいよいよ国家レベルの議論のテーブルに乗ってきたことを感じさせた。

ただ、その一方で浮かび上がったのは、「なんのためのビットコインなのか?」という根源的な問い。

制度化への高揚感と、草の根から始まった理想との間にある価値観のギャップは、今のビットコインを取り巻くリアルそのものだ。もはやビットコインは「サイファーパンクたちの夢」ではない。国家、企業、そして個人の資産が交差する、現実的で複雑な金融・政治アセットへと変貌を遂げつつある。

「Bitcoin 2025」の会場は、まさにその最前線の景色を映し出していた。

Nakamoto Stageで語られたビットコイン関連サービスの未来

筆者が特に注目したのは、Nakamoto Stageで開催されたセッション「Retail Bitcoin Investors & The Front Running of Wall Street」。

Kraken(クラーケン)、Xapo Bank(ザポ・バンク)、Robinhood Crypto(ロビンフッド・クリプト)、eToro(イートロ)といったリテール(個人投資家)向けビットコイン関連サービスのトッププレイヤーが一堂に会し、制度化の波の中で “個人投資家と金融機関のこれから” を語り合うセッションだった。

以下に、その主要なトピックをまとめる。

規制と銀行の参入可能性

銀行がビットコインをカストディ(保管)できるようになったことで、資金提供や金利低下の実現可能性が高まっているという指摘があった。

ただし、現時点で多くの銀行は依然として慎重姿勢を保っており、技術の習熟・組織文化・顧客理解といった面での課題が立ちはだかっているという。

銀行とWeb3事業者の役割分担

今後、銀行は個人に直接、資金を貸し出すのではなく、レンディング事業者のホールセール・パートナー、いわば裏方としての動きが中心になるとの見通しが示された。

銀行はローンの貸し手ではなく、LTV(ローン対担保比率)の監視や資産管理などのサポートに徹することで、Web3との協調を目指す形だ。

カストディ(保管)戦略

ザポ・バンクのSeamus Rocca氏によると、認定カストディアンとの提携によるリスク分散や、1:1以上の担保準備により、万一の破綻時にもユーザー資産を保全できる体制を構築しているとのこと。

中にはニューヨーク州の信託免許(limited-purpose trust charter)を保有する企業もあり、法規制への対応を明確に打ち出す動きも進んでいる。

「BTCを売らずに使う」新しい金融体験

セッション後半では、各社が提案する革新的な金融サービスが紹介された。例えば、保有するビットコインを担保に商業用不動産に投資できるローン商品や、ビットコインを保有したまま、ドルで生活資金を受け取れる「ビットコイン年金(アニュイティ)」といった新しい仕組みが登場している。

さらに、ビットコイン報酬付きのクレジットカードや、ビットコイン担保型の住宅ローンなど、ビットコインを「売らずに、保有しながら使う」ための選択肢が広がりつつある。

いずれも共通しているのは、ビットコインを手放さずに、現実の経済活動や資産形成に活用できる点だ。今後、こうしたプロダクトは資産運用の多様化を支える中核的な存在になっていくだろう。

「Bitcoin 2025(BTC Vegas)」を通して、あらためて世界中がビットコインに注ぐ圧倒的な熱量を肌で感じることができた。

日本がこの波に乗り遅れることなく、ビットコインを活用した新たな事業やサービスが広がっていく未来を心から楽しみにしている。

〈他のステージも聴衆でいっぱいに〉
〈Nakamoto Stageへの案内板〉
〈展示も大掛かり〉

|文・撮影:安紗良
|編集:増田隆幸