バイナンスジャパン、USDCを「早期に提供したい」──ステーブルコイン規制の課題も指摘【IVC SUMMIT】

7月2日、リッツカールトン京都で開かれた「IVC SUMMIT 2025」にて、「Innovate or Suffocate? Japan’s Grand Experiment on Stablecoin with Regulation(イノベーションか停滞か?規制下における日本のステーブルコイン大実験)」と題したトークセッションが行われた。
登壇者は以下のとおり。
- 牛田遼介氏(金融庁総合政策局フィンテック参事官室チーフフィンテックオフィサー)
- 金森伽野氏(ソニー銀行DX事業企画部長)
- 岡部典孝氏(JPYC CEO)
- 千野剛司氏(Binance Japan General manager)
- 神本侑季(CoinDesk JAPAN CEO、モデレーター)
セッションの中で、Binance Japanの千野氏は、「なるべく早く日本のマーケットでもステーブルコインを扱いたい」と述べた。
特に、米Circleが発行するステーブルコイン「USDC」については、すでにSBI VCトレードが取り扱いを開始している状況を踏まえ、「我々もなるべく早く提供したい」とコメント。
また、同氏はBinance Japanの事業モデルについて、国内で独立した取引所を運営しているわけではないと説明。その役割は、日本の利用者とグローバル版取引所「Binance.com」とを結ぶ橋渡し役であり、世界最大級のプラットフォームへのアクセスを提供するものであるとした。
続けて千野氏は、現行のステーブルコイン規制が抱える課題について言及。日本の法制がステーブルコインを「決済手段」、つまり「為替行為に該当するんじゃないかという思想的なもの」を基に構築されていると指摘。その結果として課せられる第二種資金移動業の2つの規制に言及した。
一つは「1取引あたり100万円以下」という上限規制、もう一つは、決済が目的であるため資産を「取引所に預けられない」という滞留規制だ。

同氏は、これらのルールが「非常にいびつで世界のスタンダードからは乖離したものになっている」と指摘。「なんとかこれを突破いただけるとありがたい」と述べた。
こうした民間事業者からの「要望」に対し、金融庁の牛田氏は、規制当局の立場から見解を述べた。
同氏は、ステーブルコインやWeb3の分野は「民間と、政治家のポリシー(政策)メーカーと、我々みたいな役人が一体となって、うまく環境整備ができているかなり金融でも珍しい領域」とし、官民が連携している現状を評価。
現行の規制については、資金移動業と銀行では課せられる規制の重さが違うという背景を説明した上で、「いろんな要望をいただきつつ、日々制度を整えている」と述べた。さらに、銀行がパブリックチェーンでステーブルコインを発行する可能性なども含め「いろんな選択肢が考えられる」とセッションを締めくくった。
|文:栃山直樹
|画像:記者撮影