日本発L1「Japan Smart Chain」、初のテストネットと規制対応基盤のデモを公開

デジタルガレージ共同創業者の伊藤穰一氏と、後払いサービスPaidy創業者ラッセル・カマー氏が共同で立ち上げたAltX Researchは8月6日、web3アプリケーション開発に取り組むエンジニア向けに、開発中のレイヤー1ブロックチェーン「Japan Smart Chain(JSC)」のテストネット「Kaigan」を公開したと発表した。JSCのテストネット公開は初めてで、併せてモジュール式のトラスト&コンプライアンスレイヤー「Mizuhiki(ミズヒキ) スイート」のデモも披露された。

JSCは、2024年11月に伊藤氏とカマー氏によって開発が公表されたイーサリアムとの完全な互換性を備える日本発のブロックチェーン。「コンプライアンス重視」を掲げ、国内の法規制やビジネス要件に適合した安全性と信頼性の高いデジタル資産サービス基盤の構築を目指している。

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Mizuhikiスイートは、JSC上に構築されたID管理やコンプライアンス、リスク管理などの機能を備えたモジュール型ツール。企業がこのツールを活用することで、従来のように断片的なオフチェーンのプロセスに依存することなく、法令に準拠したデジタルサービスの立ち上げが可能になるという。

リリースによると、今回公開されたのは、主要コンポーネントである「Mizuhiki アイデンティティ」のハンズオンデモで、ステーブルコインやDeFi(分散型金融)といった規制対象のweb3サービスを、安全でコンプライアンスに準拠して提供できるようになるとしている。

「Kaigan」の利用は招待されたエンジニアとJSCビジョンパートナーに限定され、RPCエンドポイントやガス用のテストネットファウセット、テストネット用ブロックエクスプローラー、エンジニアが交流できるコミュニティフォーラムなどが提供されているという。

「Kaigan」という名称は、湯の沸き始めを意味する茶道の言葉「蟹眼」に由来。JSCが描くエコシステム発展の「最初の一歩」を象徴する存在だとしている。AltX Researchは、Kaiganを通じて新たなユースケースの創出や技術の実装が進むことを期待している。

カマー氏はリリースの中で、「Japan Smart Chainは、単に“新しいレイヤー1”というわけではありません。これは、日本、そしてその先の未来に向けて、新たなスタンダードを共に創造していくための招待状です。未来はモジュール型であり、コンプライアンスに準拠し、自在に組み合わせられるべきもの。さあ、一緒にその未来を築いていきましょう」とコメントした。

なお、JSCは今後数カ月以内にパブリック向けのテストネットを公開する予定で、それに伴い「Kaigan」は段階的に廃止され、次のバージョンへと置き換わる見通しだ。メインネットの提供開始は2026年が予定されている。

|文:橋本祐樹
|画像:リリースより