ワールドコインの競合ヒューマニティ・プロトコル、11億ドル規模のメインネットを公開──プライバシー重視のWeb2からWeb3 IDへ
  • 評価額11億ドルのヒューマニティ・プロトコルは、ゼロ知識トランスポート・レイヤー・セキュリティ(zkTLS)を用いてWeb2の認証情報をWeb3サービスに接続するメインネットを稼働させた。
  • zkTLSを使えば、ユーザーはロイヤルティステータスや学歴などの認証情報を元の文書を公開せずに検証でき、生体認証データの収集を回避できる。
  • 「ヒューマンID」は当初、航空会社、ホテル、金融、教育の認証情報に対応しており、今後はオンチェーン発券、分散型ガバナンス、シビル攻撃耐性プラットフォームへの展開も計画している。

プライバシー重視のブロックチェーン身元情報ネットワークであり、サム・アルトマン(Sam Altman)氏のワールドコイン(Worldcoin)の有力な競合であるヒューマニティ・プロトコル(Humanity Protocol)がメインネットを立ち上げた。ゼロ知識トランスポート・レイヤー・セキュリティ(zkTLS)を使用して、従来のWeb2認証情報を分散型のWeb3サービスに接続するシステムを提供する。

香港を拠点とするスタートアップであるヒューマニティ・プロトコルは、ジャンプ・クリプト(Jump Crypto)やパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)が共同でリードした資金調達ラウンドで2000万ドル(約29億円、1ドル145円換算)を調達し、評価額は11億ドル(約1595億円)に到達していた。今回のメインネット立ち上げはこのわずか数カ月後に行われた。

ヒューマニティ・プロトコルのzkTLS技術により、ユーザーは求人情報や航空会社のロイヤルティステータスなどの検証可能な情報を閲覧したことを証明できる。その際、元の文書やページを開示する必要はない。

機密データはユーザーのブラウザから外部に漏れることがなく、ワールドコインの虹彩スキャンモデルを含む生体認証方式が抱えてきたプライバシーの懸念を回避している。

当初、ユーザーはマイレージアカウントやロイヤルティアカウントを「ヒューマンID(Human ID)」に直接紐づけることで、Web2とWeb3の両方のアプリケーションで利用できる、移植可能なレピュテーション(評判)レイヤーを構築できる。

このネットワークは、金融・教育・職業的な認証情報にも対応している。今後さらに新たな地域へのノードインフラ展開を行い、オンチェーン発券や分散型ガバナンスにも進出する予定だ。

創業者でありCEOのテレンス・クォック(Terence Kwok)氏は、「メインネットリリースによって、分散型IDを実用的なインフラへと変えることができる」とし、「zkTLSの稼働により、誰もが複数プラットフォームにわたって身元や実績を確認できる一方で、中央集権的な第三者が個人データを閲覧することはない」と述べた。

ヒューマニティ・プロトコルは、物理的な生体認証ではなく暗号証明を活用することで、ワールドコインなどの「プルーフ・オブ・ヒューマン(proof-of-human)」プロジェクトよりもプライバシーに配慮した代替手段であると自らを位置付けている。

このネットワークのアーキテクチャによって、開発者は機密性のあるユーザーデータを収集・保存せずに、シビル攻撃耐性のあるソーシャルプラットフォーム、レピュテーションベースのマーケットプレイス、AIによる「人間性チェック」を構築できる。

シビル攻撃は、個人または組織があるネットワーク内で多数の偽の身元を生成する際に発生する。エアドロップのような報酬やネットワーク運用への不均衡な支配を狙う場合によく利用される。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Getty Images+/Unsplash
|原文:Worldcoin Rival Humanity Protocol Debuts $1.1B Mainnet for Privacy-First Web2 to Web3 Identity